|公開日 2017.05.14
|更新日 2018.10.22


宅建民法の正しい勉強法
民法の勉強がはじめての人、苦手な民法が原因で毎年合格できない人、そもそもどんな勉強をしたらいいか分からない人、独学で奮闘している人、地方で頑張っている人……。
そういったみなさんが、民法の正しい勉強法・コツを身につけて「安定して高得点できる勉強法」をご紹介します。民法の勉強法を真剣にお考えの方は、じっくりとお読みください。

多くの方が活用しています

 |著作権についてのご注意

1 何を勉強するの?

宅建民法の試験問題は、ほとんどが「民法の規定及び判例によれば、正しい(誤っている)ものはどれか」というように出題されます。
「民法の規定」によれば……、つまり「民法の条文」によれば……、ときいているわけです(判例はしばらく置くとして)
ですから、宅建民法の問題は「条文」を知らなければ正解のしようがないのです。

1 テキストは条文の解説書

民法で勉強するのは、実は「条文」なのです。「条文」と言うと、多くの方から敬遠されてしまうのですが、実際のところ、民法を勉強するというのは、条文を勉強するということにほかなりません。条文を抜きにして民法の勉強は絶対にありえないのです。

大学や図書館、大型書店(ジュンク堂や三省堂など)に山のように陳列されている『民法の専門書』は、『判例集』『注解書』『民法研究書』『コンメンタール(遂条解説書)』など数多くの種類がありますが、何といっても大半は『条文の解説書』です。

2020年4月から施行される「改正民法」に関する本が、多くの出版社から続々刊行されていますが、これも『改正条文の解説書』にほかなりません。

そして、みなさんが使っている宅建民法用の『テキスト』も、要するに『条文の解説書』なのです。みなさんは『テキスト』を読んで民法を勉強しているわけですが、多くの方はそれと知らずに、実際は「条文を勉強している」のです。

2 条文の趣旨を勉強

条文の勉強というのは、条文が規定されるに至った「制度趣旨やその理由を勉強する」ということです。条文は制度趣旨や理由があって定められているのですから、これらを理解しないことには、本当に条文を(つまりは民法を)理解することはできません。

宅建用の『テキスト』は、こうした制度趣旨や立法理由を初学者向けにわかりやすく解説しているのです。

念のために言っておきますが、「条文を勉強する」ということは、決して「条文を暗記する」ということではありません。
「条文暗記」を推奨するような『テキスト』など1冊もないはずです。

2 4つのポイント

さて「何を勉強するの?」ということですが、『テキスト』を読むときには、必ず次の4つのポイントを理解するようにしてください。民法理解に欠かせないもっとも基本的なポイントです。

1 意 義
2 原則と例外
3 要件と効果
4 本人と第三者との関係

もちろんこれだけに限られるわけではありません。ほかにも「成立要件」「性質」「場合分け」「効力」「種類」など、民法で勉強することは数多くあります。

1 意 義

民法理解の第1歩は、何といっても「意味を理解する」ことです。
たとえば、「権利能力とは何か」「虚偽表示とは何か」「抵当権とは?」「物上保証人とは?」「保証債務とは?」「付従性とは?」「遡及効とは?」「瑕疵担保責任とは?」「使用者責任とは?」などなど……。

まず、こういった民法用語を絶対に理解しなければなりません。『テキスト』には必ず説明してありますから、これらの用語は真っ先にマーカーを引いて覚えます。

これに関連して相違(相異)に注意します。「債務者と物上保証人の違い」「連帯債務と不真正連帯債務の違い」「弁済と弁済の提供の違い」「相続放棄と遺留分放棄の違い」などなど……、こうした点も理解しなければなりません。

宅建試験では「用語の意味」自体を問う問題は出題されません。受験者はこうした用語は当然に理解しているもの、という前提で出題されるのです。

民法用語の「意味を理解する」ことが、民法マスターの第1歩です。

2 原則と例外

どんな法律も「原則と例外」で構成されています。民法も基本的には「原則と例外」で成り立っています。「原則と例外」はきわめて重要です。
そのため、標準的な『テキスト』は必ず「原則と例外」を解説していますから、「原則は何か」「例外は何か」、これらを絶対に理解するようにしてください。

具体的に説明しましょう。
たとえば未成年者の行為能力について、『テキスト』は大体次のように解説しています。

「未成年者が法律行為(契約)をするには、原則としてその法定代理人の同意を得なければならず、同意を得ないでした法律行為は、取り消すことができる。ただし、単に権利を得、または義務を免れる行為については、法定代理人の同意は不要で、未成年者が単独ですることができる(5条)

これは、未成年者が売買契約や賃貸借契約をするときには、「原則として」自分1人ではできず、必ず親などの法定代理人の同意が必要であること。ただし「例外として」、単に権利を得たり義務を免れる行為については、法定代理人の同意は不要で、未成年者が1人ですることができる、といっているのです。

多くの『テキスト』は、このように「原則」と「例外」をハッキリ書いてありますので、すぐにわかります。「原則」があれば「例外」があるわけで、ここでは「ただし……」以下が例外事項です(「ただし」とあったら「例外」という意味です)

こうして「原則と例外」を理解することもまた、民法マスターの第1歩です

「原則と例外」は、民法に限らず、宅建業法や都市計画法、建築基準法など試験科目になっているすべての法律の至るところに出てきますので、共通のポイントなのです。

3 要件と効果

どんな法律も「要件と効果」で構成されています。民法も基本的には「要件と効果」で成り立っています。「要件と効果」もまた、きわめて重要です。
そのため『テキスト』には、必ず「要件」についての解説があり、その「効果」についての解説があります。
「要件」は何か、その「効果」は何か、しっかり理解しなければなりません。

テーマによっては「意義と効果」という場合もありますが、意義・要件をあまり厳密に区別する必要はありません。

さて、「原則と例外」「要件と効果」は、大体こういう構成になっています。

[原則]=(要件)+(効果)
[例外]=(要件)+(効果)

常にこの図式で記述されているわけではありませんが、だいたいこ~んな感じです。

さて、「要件と効果」はどのように記述されているでしょうか。先ほどの未成年者の行為能力をみてみましょう。

「未成年者が法律行為(契約)をするには、原則としてその法定代理人の同意を得なければならず、同意を得ないでした法律行為は、取り消すことができる。ただし、単に権利を得、または義務を免れる行為については、法定代理人の同意は不要で、未成年者が単独ですることができる(5条)

未成年者が売買契約などの法律行為をする場合は、原則として法定代理人の同意が必要とされており、同意がないときは、取り消すことができるという趣旨でしたね。

ここでは、「同意がない」という「要件」があれば、「取り消すことができる」という「効果」が生じるとされているのです。
例外の場合でも、「単に権利を得る行為、または義務を免れる行為」であれば、これを「要件」として、「同意はいらない」という「効果」が生じるのです。

「原則」の場合では、どういう「要件」のときに、どんな「効果」が生じ、また「例外」の場合には、どういう「要件」のときに、どんな「効果」が生じるのか。

「要件と効果」を理解することも、民法マスターの第1歩なのです

4 権利関係|本人と第三者

民法では、「第三者」は非常に重要です。
民法の存在理由は、要するに「紛争解決の標準マニュアル」という点にあるのですが(民法の基礎|はじめに 参照)、法律関係とか契約では「本人と第三者の権利関係」がしばしば問題となり、そして、本人と第三者は常に対立するのです。

たとえば、相手にだまされて契約した詐欺の場合について、『テキスト』はおおむね次のように記述しています。

「詐欺による意思表示は取り消すことができる。これは、だまされた本人を保護するためである。しかし、この取消しは善意の第三者には対抗することができない(96条)

だまされて契約をしたときは、だまされた「本人」はその契約を取り消すことができるけれども、「善意の第三者」に対しては、契約を取り消したことを主張できない(取り消したんだから、もともとの権利は自分にあるとは言えない)というわけです。

民法では、こうした「善意の第三者」に対する関係をキチンと理解する必要があります。権利をめぐって「本人」と「第三者」が対立したときに、「本人」を保護すべきなのか、「第三者」を保護すべきなのか。民法はどのように考えているのか。この点が要注意なのです。

ちなみに「第三者」を保護すべきだという場合でも、保護されるための「要件」は、必ずしも一様ではありません。過失(=不注意)がある場合には保護されないとか、過失があってもいいとか、重過失はダメだとか、登記がなければ保護されないとか、登記がなくても保護されるとか、いろいろです。

単なる「第三者」なのか、「善意の第三者」なのか、「善意・無過失の第三者」なのか。どういう「要件」を備えた第三者が保護されるのか、どういう第三者だと保護されないのか。

「本人と第三者との関係」を理解することも、民法マスターの第1歩なのです。

以上をまとめてみましょう────
「意 義」
どんな意味なのか、違いは何か
「原則と例外」
原則は何か、その例外は何か
「要件と効果」
それぞれの要件とその効果は何か
「第三者関係」
本人と第三者の関係はどうなっている?

この4つのポイントを忘れないでください。民法で「安定して高得点する」最小限のポイントです。これを意識して読むのと、ただ単に覚えようとして読むのとでは、理解力の深さに格段の差が出てくるのです。

民法でよく出てくる「対抗することができない」「主張することができない」というのは、この点で裁判しても「100%勝ち目はない」「絶対に負ける」ということです。

3 宅建民法が得意科目になる唯一の勉強法

本当に、そんな勉強法があるのでしょうか?

いままで述べてきたのは「何を勉強するのか」という、いわば「勉強の対象」なのですが、肝心なのは、その「対象」について「どう勉強するのか」、つまりは「勉強法」なのです。
「原則・例外」「要件・効果」「第三者との関係」などをただ覚えていく勉強では十分ではありません。

1 暗記では歯が立たない事例問題

宅建民法の試験問題は、ほとんどが「事例問題」です。
たとえば「AはBから建物を賃借し、Bの承諾を得て、当該建物をCに転貸している。この場合……」というように、具体的な事例で出題されます。

事例問題は、「原則・例外」「要件・効果」などを使って正解を導くわけですが、暗記そのままではなかなか正解できません。
暗記が必要な部分もたくさんありますが、暗記一辺倒で乗り切れる科目ではないのです。

♣ 民法が苦手な本当の理由
多くの受験者が民法で苦労するのは、「宅建業法」や「法令上の制限」と同じように勉強をしているからです。これらは暗記中心の科目ですから、要は覚えればいいだけのこと。『テキスト』と『過去問』の往復学習を繰り返しやれば十分合格点はとれます。しかも短期間で。

しかし、民法は違います。暗記に重点を置いた勉強をいくら繰り返しても、合格に必要な基礎力・応用力は絶対につきません。
民法という法律は、各条文に「相応の理由があって」論理的に組み立てられていますから、そこを理解しないと民法を本当には理解できず、したがって得意科目にもなれないのです。

ただ、そうは言っても、宅建民法は、司法試験や国家公務員上級試験などと比べて、高度な論理性が要求される科目ではないために、「論理的」な勉強といっても難しく考えることはありません。

2 弁護士が教えてくれた民法攻略法

♥ とっておきのアドバイス
民法が得意科目になる唯一の正しい勉強法は、「ので、から説」を使って勉強することです。議論の余地はありません。

この民法攻略法は、先輩の弁護士から教わったものです。私がかつて公務員試験で民法の勉強に行き詰まっていて、どうしたら民法に強くなれるのか、民法の正しい勉強法は何だろうかと思い悩んでいたころ、弁護士として活躍していた先輩に相談したのです。

「ので、から説で勉強すればいいんだよ」

「ので、から説?」
はじめて聞く勉強法でした。先輩のアドバイスを信じて、私はこの攻略法を、民法だけでなく、行政法・憲法など法律科目全般に活用して、東京都職員採用上級職試験に合格したのです。最終的には民間企業に決めたのですが(パソコンやスマホなどが発明されていなかった大昔の話です……。今こうして、宅建受験者のみなさんにこの勉強法を公開しようとは夢にも思いませんでした)。

3「ので、から説」って何?

「ので、から説」は、法的思考力・論理的思考力を身につける唯一・最適の方法です。簡単な勉強法ですから、あなたも今日から使えます。

ので、から説」というのは、「~~ので、……である」「~~だから、……である」「~~のために、……である」などの記述から「趣旨・理由」を理解していく勉強法をいいます。

どういうことかと言えば、『テキスト』を読むときに、次のような記述に注意するのです。

~~ので、……である」
~~だから、……である」
~~のため、……である」
~~。したがって……である」
~~である以上、……である」
~~。そこで、……である」
「……である。なぜなら~~

こうした記述の「~~(ニョロニョロ)」の部分こそが、まさに「趣旨・理由」を説明した最も重要な個所で、ここをじっくり読み込んで理解していきます。

「趣旨・理由」についての説明は、必ず「~ので」「~だから」「~のため」などと記述されるのです。

「~~のため」「~~。そこで」「~~。したがって」などいろいろな記述タイプがありますが、これらを総称してので、から説と呼んでいます。

4 『テキスト』をどう読む?

宅建用の『テキスト』から「ので、から説」を確認してみましょうね。
『U-CAN の宅建士速習レッスン 2018年版」から、代理における「自己契約・双方代理」についての記述です(pp.257-258)。

「8. 自己契約・双方代理の禁止
自己契約とは、代理人が契約の相手方になってしまうことをいいます。このような行為を認めると、代理人は自分に有利な契約を結んでしまい、本人に不利益を与えるおそれがあります。そこで、自己契約は、原則として禁止されています
代理人が、契約当事者双方の代理人になることを双方代理といいます。これもどちらか一方の本人の利益が害されるおそれがあるので、自己契約同様、原則として禁止されています。(中略)
ただし、本人(双方代理の場合は、双方の本人)があらかじめ許諾した場合は、自己契約・双方代理が許されます。不利益を受けるおそれのある本人が許諾しているのですから、禁止する理由はありません。
また、単なる債務の履行も例外的に許されます。たとえば、すでに売買契約が締結されており、その履行として所有権移転登記をする場合などです。行為の内容からして、本人に不利益が生じるおそれがないからです。」

さて、この記述でどこに注意すべきでしょうか。

まず、自己契約の「意義」、双方代理の「意義」を覚えなければなりませんね。ただ宅建試験では「意義」は1字1句正確に暗記しなくても、おおよそでかまいません。

そして次に、「原則」は自己契約も双方代理も禁止されること。「例外」として、①本人が許諾した場合と、②単なる債務の履行は許されること。赤字太字(ゴシック)の個所ですね。これらも絶対に押さえなければなりません。しかし、ココで終わっては不十分です。

さらに、原則禁止される「理由」、例外的に許される「理由」、これらを押さえる必要があります。「ので、から」の下線を引いた記述です。

自己契約とは、代理人が契約の相手方になってしまうことをいいます。このような行為を認めると、代理人は自分に有利な契約を結んでしまい、本人に不利益を与えるおそれがあります。そこで自己契約は、原則として禁止されています
代理人が、契約当事者双方の代理人になることを双方代理といいます。これもどちらか一方の本人の利益が害されるおそれがあるので、自己契約同様、原則として禁止されています。(中略)
ただし、本人(双方代理の場合は、双方の本人)があらかじめ許諾した場合は、自己契約・双方代理が許されます。不利益を受けるおそれのある本人が許諾しているのですから、禁止する理由はありません。
また、単なる債務の履行も例外的に許されます。たとえば、すでに売買契約が締結されており、その履行として所有権移転登記をする場合などです。行為の内容からして、本人に不利益が生じるおそれがないからです。」

(多くの『テキスト』は何気なく「ので、から」を記述していますが、受験者のためには下線を引く・文字色を変えるなどして、もっと強調すべきだと思いますね。)

おわかりでしょうか?
「原則・例外」について、「ので、から」でていねいに説明してありますね。
「原則」が定められた「理由」、「例外」が定められた「理由」について、「だからこういう原則があるんだ」「だからこういう例外が認められたんだ」と理解できればいいのです。

難しく考えることはありません。
要するに、「ので、から」に注意しながら読んでいく、というだけのことです。「ココが重要だろう」と当て推量で『テキスト』を読んでいては、永遠に民法をマスターすることはできません。

「ので、から説」───簡単です。
「ので、から説」───驚くほど効果的です。
「ので、から説」───民法が得意になる唯一の勉強法です。

民法が得意科目になる唯一の正しい勉強法

キーワードは「ので、から」

5 『テキスト』に注意!

ただ『テキスト』によっては、この理由づけがあまりなされておらず、結論だけを記述しているものがあります。『テキスト』は解説書であって『要点ブック』ではありませんから、重要なポイントについては、必ず理由・根拠が記述されていなくてはなりません。

これは『過去問題集』についても同じです。○×と結論だけが書いてあって、肝心の根拠や理由をほとんど記述していないものがあるのです。
こうした暗記式の残念な『テキスト』『過去問題集』は使わないように、くれぐれも注意が必要です。

6 最高裁判所も「ので、から説」を使っている───効果は実証済み

「ので、から説」が法律の現場でどのように使われているか、論より証拠、最高裁判所の判例を少しばかり確認してみましょう。

判決文は読みづらいものです。
しかし、ここでは「ので、から説」で判旨が理論構成されていることを確認するだけですから、ザーッと目を通すだけで十分です。

下線部分が「ので、から説」で趣旨・理由を説明している記述、赤字部分が結論を示している記述です。

♠ 最判昭40.9.10
論点[要素の錯誤による意思表示の無効を第三者が主張できるか]
(判決要旨)
民法95条の律意は、瑕疵ある意思表示をした当事者を保護しようとするにあるから、表意者自身において、その意思表示に何らの瑕疵も認めず、錯誤を理由として意思表示の無効を主張する意思がないにもかかわらず、第三者において錯誤に基づく意思表示の無効を主張することは、原則として許されないと解すべきである。

♠ 最判昭40.11.24
論点[解約手付が授受された売買契約の履行に着手した当事者からの解除]
(判決要旨)
解約手付の交付があった場合には、特別の規定がなければ、当事者双方は、履行のあるまでは自由に契約を解除する権利を有しているものと解すべきである。
しかるに、当事者の一方が既に履行に着手したときは、その当事者は、履行の着手に必要な費用を支出しただけでなく、契約の履行に多くの期待を寄せていたわけであるから、もしかような段階において、相手方から契約が解除されたならば、履行に着手した当事者は不測の損害をこうむることとなる。したがって、かような履行に着手した当事者が不測の損害をこうむることを防止するためとくに民法557条1項の規定が設けられたものと解するのが相当である。

♠最判昭48.7.19
論点[譲渡禁止特約と重大な過失のある第三者]
(判決要旨)
ところで、民法466条2項は債権の譲渡を禁止する特約は善意の第三者に対抗することができない旨規定し、その文言上は第三者の過失の有無を問わないかのようであるが、重大な過失は悪意と同様に取り扱うべきものであるから、譲渡禁止の特約の存在を知らずに債権を譲り受けた場合であつても、これにつき譲受人に重大な過失があるときは、悪意の譲受人と同様、譲渡によつてその債権を取得しえないものと解するのを相当とする。

♠ 最判平5.1.21
論点[無権代理人が本人を共同相続した場合における無権代理行為の効力]
(判決要旨)
無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属するところ、無権代理行為の追認は、本人に対して効力を生じていなかった法律行為を本人に対する関係において有効なものにするという効果を生じさせるものであるから共同相続人全員が共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効となるものではないと解すべきである。

♠ 最判平16.4.20
論点[共同相続人の1人がその相続分を超えて債権を行使した場合、他の共同相続人は不法行為に基づく損害賠償請求ができるか]
(判決要旨)
共同相続人の1人が、相続財産中の可分債権につき、法律上の権限なく自己の債権となった分以外の債権を行使した場合には、当該権利行使は、当該債権を取得した他の共同相続人の財産に対する侵害となるから、その侵害を受けた共同相続人は、その侵害をした共同相続人に対して不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができるものというべきである。

以上、ほんの一例にすぎませんが、「ので、から説」で理由づけがされていることがお分かりでしょう。

「ので、から説」──法曹界で日常的に使われている最も信頼できる方法です。

平成20年から30年までの11年間、判決文問題が1問出題されていますので、ついでながら判決文問題もみておきましょう。30年に出題されたばかりの賃貸借に関する問題です(選択肢は省略)

【平成30年 問8】
「次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。
(判決文)
賃借人は、賃貸借契約が終了した場合には、賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ、賃貸借契約は、賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり、賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ、建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると、建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、(中略)その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。」

「ので、から説」に慣れてくれば、こうした判決文問題を読み解くことも難しくはないはずです。

おまけ ── 図を書く

テキストを読むとき、問題練習をするときに、「A、B、C」が登場する事例が出てきたら、必ず用紙に「A→B→C」と関係図を書く習慣をつけるようにしてください。
事実関係を正確に理解して、正解するためです。

頭ん中だけでイメージしてテキストを読んだりしていては、正解できません。
賃貸人A、賃借人B、転借人C、Aの債権者Dなどとオールキャストが登場すると、図を書かないことには完全にお手上げです。

本試験の2時間という「限られた時間」では、簡単な事例問題であっても、最初に問題を解く際も、後から見直し作業をする際も、図がないと、ちょっとしたパニックにおそわれます。

本試験のときは、問題用紙の余白(常にタップリあるわけではありません)に書いて解くことになりますので、小さなスペースでも書けるように、今から慣れておきましょう。

A、B、Cの立場や権利の流れなどが一目してわかりさえすればいいのですから、自分流の図でかまいません。


1回で合格する決意で取り組みましょう。
もう1回勉強するのは、時間とエネルギーの浪費です。
ご健闘を祈ります。


(この項終わり)