公開日 2017.5.14|更新日 2018.5.27

1 民法は学習効率が悪い

宅建試験で出題される民法は、宅建業法や法令上の制限にくらべて、内容の点からも範囲の点からも、学習効率が最も悪い科目といえます。

なぜでしょうか?
まずは現状を把握しておきましょう。

1 出題数と合格点

宅建試験は、四肢択一式の筆記試験(2時間)50問出題されます。

50問の内訳はこうなっています。
① 権利関係  14問民法ほか)
② 宅建業法  20問(主に宅建業法)
③ 法令制限  8問(都市計画法ほか)
④ その他分野 8問(需給実務ほか)

①の権利関係は4科目で、その内訳は次のとおり。
民 法    10問
・借地借家法   2問
・建物区分所有法 1問
・不動産登記法  1問


さて、宅建試験は何点とれば合格できるのでしょうか

過去20年間の統計をみると、合格点は30~36点です。36点は3回だけという事実からみて、36点とれば合格はほぼ間違いないといえるでしょう。

直近の平成29年(2017年)の合格点は、35点でした。
詳細は RETIO(不動産適正取引推進機構)の発表をご覧ください。

では、民法は何点とればいいのでしょうか

たとえば、上記の②③④8割得点できた場合(これも結構ハードルは高く相当の努力を要しますが……)28点ですから、これだけでは合格できませんね。
9割得点できたとしても32点ですから、やはりこれだけでは不合格です。

②③④の合計36問で、たった4問の不正解なのに、ほかの科目でさらに得点しなければ合格できないのですから、思いのほか厳しい試験です。

②③④を全問正解すれば36点(税法2問を含む)で、①権利関係4科目が0点でも合格できます。しかし、ここは現実的に考えて、
「85%の正解率」で30点
「80%の正解率」で28点 でしょうか。

30点とれば、あと6点でほぼ合格です。

つまりは、民法10問中6点以上は確実に得点できるようにしなければなりません(これに不動産登記法や借地借家法などで1~2点加えれば、十分合格圏です)

民法はだれもが苦労する科目ですが、何とか6点以上得点したいものです。


効率の悪い民法こそが合否のカギをにぎっていると銘記しましょう。

2 範囲が広く、論点も多い

たとえば、試験範囲(条文数)と出題数をみると、宅建業法は条文数(施行令・規則含む)が約100条で、出題数は20問
民法は条文数約1000条で、出題数は10問
・100条  20問
・1000条  10問

宅建業法と比較すると、民法は効率のよくない科目だということは納得ですね。単純に数字だけみても、20倍も効率が悪いですね。
それに、宅建業法なんかは勉強したテーマがほとんど出題されますので、とくに的を絞り込む必要もありません。

民法は約1000条全部を勉強するわけではないのですが、それでも範囲は広すぎます。


さて、平成29年間で民法で出題された論点・テーマは、出題数により、AA~Eの6グループに分類できます。
*選択肢の1肢として出題されたものは算入していませんので、実際の出題数は少しだけ多くなります。

AAクラス|20~23問
[代理][抵当権]

Aクラス|15~19問
[意思表示|虚偽表示・錯誤・詐欺]
[連帯債務・保証債務・連帯保証]
[売買][不法行為]

Bクラス|10~14問
[時効][物権変動][所有権|共有]
[契約解除][賃貸借]
[法定相続分・遺産分割]

Cクラス|5~9問
[制限行為能力][所有権|相隣関係]
[担保物権|混合][根抵当権]
[債務不履行][債権譲渡][弁済]
[請負][条文問題]
[相続の承認・放棄][遺言・遺留分]

【Dクラス|3~4問】
[停止条件][同時履行の抗弁権]
[相殺][危険負担][贈与]
[使用貸借][委任]
[相続|総合][親族関係]

【Eクラス|1~2問】
[占有権][地役権][留置権]
[先取特権][質権]
[金銭債権][債権者代位権]
[善管注意義務][詐害行為取消権]
[代物弁済][買戻し][組合契約]
[不当利得][権利の取得・消滅]
[契約終了事由][債権の発生原因]
[所有権の移転・取得]
[民法の指導原理]


AA、A、Bクラスだけでも相当のボリュームです。Cクラスを加えると、民法1科目だけでかなりの時間・エネルギーを要します。
10問という出題数から考えると最も学習効率のよくない科目ですね。

何といってもAA、A、Bクラスは、いわば論点中の論点ですから、どうしても力を入れることになります。Cクラスも無視できませんね。
それぞれの内容も深く、受験校でも市販テキストでも当然に力を入れて解説しています。

このように出題テーマは、民法総則から相続編まで全範囲に及んでいます。
範囲がきわめて広く、論点が非常に多い科目なのです。

3 出題される論点は一部

これらの論点が毎年全部出題されるわけではなく、新出問題も含めて10問です。平成29年度の新出問題は、10問×4肢=40選択肢のうち、15肢(38%)もありました。

また、平成24年には代理が2問出たり、直近の平成29年では法定相続分関係が2問出たりと、偏って出題されることもあります。油断もスキもあったものではありません。安易な出題予想は禁物です。


さて、平成29年の出題は次のようになっていました。

AAクラス
[代理][抵当権]
Aクラス
[売買][連帯債務]
Bクラス
[所有権|共有][法定相続分]
Cクラス
[条文問題][請負]
・Dクラス
出題なし
・Eクラス
[所有権移転・取得][不動産質権]

やはり幅広く出題されていますね。
レベルをみると、AA~Bクラスで出題された問題は、どれも拍子抜けするような初歩的・基本的な問題でした。テキストだけでも普通に勉強していれば、らくらく5点は取れたでしょう。合格者の大半は、7点以上正解できたはずです。

一方で、A~Bクラスの[意思表示|虚偽表示・錯誤・詐欺][時効][物権変動][契約の解除][賃貸借][不法行為]は出題されませんでした
時効と強迫の初歩問題が[所有権|移転・取得]の1選択肢として出たくらいです。

このように、論点が毎年すべて出題されるわけではないのです。
一生懸命勉強したのに、出ないテーマも結構あるんです。物権変動(対抗要件)や抵当権、賃貸借を必死に勉強したのに1問も出なかったのですから、ガッカリですね。

2 85人が不合格になる試験

平成29年度(2017年)の合格発表によると、合格率は15.6%でした。
例年通りの合格率です。

つまり宅建試験は、100人受けて85人が不合格になる試験なのです。

この現実を真剣に受け止めて、気を引き締めなければなりません。
合格体験記には1ヵ月で合格したとか、民法は勉強せずにほかの科目で満点とって合格したとか、そんな記事をたまに見かけます。
本当かどうか首をかしげてしまいますが、何か特別な環境にあったのかもしれません。民法は大学で勉強していたとか、実務で宅建業法や法令上の制限には慣れていたとか。

惑わされてはいけません。
大半の合格者はそんな戦略はとっていないはずです。チョコチョコっと勉強して合格できるような国家試験ではないことは、受験者であればみんな知っています。

範囲が非常に広く論点も多いうえに、暗記はもちろんのこと思考力を必要とする科目です。6点以上といってもすぐにとれるものではないのですよ。
とにかく基本をマスターするだけでも、すごく時間がかかる科目なのです。

♣ あなたは15%の合格組?
まずは、テキストを1ページ1ページ、1行1行ていねいに学習するところからです。最初は時間がかかりますが、この地道な取り組みが合格への第一歩です。

初心者の人は早めに勉強を開始する必要があります。効率が悪い科目だからこそです。遅く始めて利益になることはありません。
これは一般論ですが、仕事に追われる初心者の人が、5月のゴールデンウィーク明けから民法を始めて、果たしてマスターできるでしょうか?
厳しいと思います。もちろん時間のある人なら十分間に合うでしょうが……。

人それぞれの環境がありますので一概には言えませんが、できれば3月~4月頃から始めることをお勧めします。

1回で合格する決意で取り組みましょう。もう1回勉強するのは、時間とエネルギーの浪費です。
ご健闘を祈ります。


(この項終わり)