|更新日 2023.3.17|公開日 2017.07.10

1|担保物権の意味と効力

 担保物権とはどういう権利なのか、試験に必要な概略をおさえておきましょう。

 意 味

「担保」というのは、たとえば、お金を貸している債権者が、その債務者から「確実に弁済を受けられるようにする」ためのシステムをいいます。
 民法上、このシステムは2つあって担保物権保証制度です。「担保物権」はによる保証システム、「保証制度」は保証人などによる保証システムです。

 担保物権は、債権者が弁済が受けられないときに、債務者または第三者(物上保証人)が所有する特定の財産を競売して、その代金からほかの債権者よりも優先的に弁済を保証するシステムです。土地や建物など「特定の財産」で弁済を保証することから「物的担保」といわれます。

 ここで「第三者」というのは、債務者の親兄弟であったり知人・旧友であったりします。本来の債務者ではないのですが、債務者に頼まれて自分の土地や建物に担保物権をつけるのです。これらの第三者を物上保証人といいます。

 さて、民法上の担保物権は4種類ありますが、とくに「抵当権」が重要です。

・留置権
・先取特権(さきどりとっけん)
・質 権
・抵当権


 担保物権の効力

 担保物権には、債務者の債務の履行を促す効力、つまり「弁済を促す効力」がありますが、具体的には留置的効力と優先弁済的効力です。

 留置的効力
 担保となる目的物を「債権者」のもとに留置して、債務の弁済があるまでは返還しないようにして、間接的に債務の弁済を促す効力です。留置権、質権に認められています。

 たとえば、修理のために預かったパソコンの修理店(修理代金の債権者)は、修理代金の支払いを受けるまで、留置・保管している依頼主のパソコンを返さないことができます。依頼主(修理代金の債務者)としては、パソコンを返してもらうためには、修理代金を支払うほかありません。債権者はこうして債務の弁済を促すわけです。

 優先弁済的効力
 期日までに債務が弁済されないときに、債権者は、担保をつけた担保目的物を競売で換金して、担保をつけていないほかの一般債権者よりも優先的に債務の弁済を受けることができます。

 たとえば、抵当権者は、期日までに債務の弁済がないときには、抵当不動産を競売して、その「競売代金」から他の債権者よりも優先して弁済を受けることができるわけです。債務者としては、抵当不動産を競売されてその所有権を失いたくなければ、債務を弁済するよりほかはありません。
 なお、優先弁済的効力は、留置権にはありません。
担保物権の効力
 もともと債権者は、債務者の総財産から「債権額に応じて平等に」債権の満足を受けるのが原則(債権者平等の原則)なのですが、担保物権は、債権者が担保目的物を競売した代金のうちから、債権額を「一般債権者よりも先に取得する」ことができるため、債権者平等の原則の例外といえます。

2|担保物権の性質と用語

 担保物権は、債権を担保するという機能をもっていることから、次のような性質を有しています。

 担保物権の性質


① 付従性
② 随伴性(ずいはんせい)
③ 不可分性
④ 物上代位性



 付従性|債権なきところに存在せず
 担保物権は、債権を担保するために設定される権利であるため、そもそも債権が存在しなければ、これを担保する担保物権も存在することができません。したがって、債権が取消しや無効を理由に成立しないときは担保物権も成立せず、債権が弁済や時効などによって消滅すると、担保物権も当然に(自動的に)消滅します。

 このように「担保物権の成立や存在が債権に付従している」という意味で、これを付従性といいます。

 担保物権の付従性による消滅は、担保物権の本質に基づくものなので、担保物権の「登記を抹消しなくても」、その消滅を第三者に対抗することができます。「抹消されずに」登記簿に抵当権の記載があっても、実は消滅しているかもしれないのです。

 随伴性|ともに移転
 担保物権は、A年B月C日の金銭貸借契約で成立した特定の債権を担保することが目的であるため、その債権が譲渡されれば、これを担保する担保物権もともに移転します。これを随伴性といいます。

 不可分性
 担保物権は全部の弁済を受けるまで、目的物の全部について権利を行使できるという性質をもっています。

 たとえば、貸金債権 2,000万円のうち半額が弁済されたからといって、担保にしていた土地の半分について自動的に担保物権が消滅するということはありません。2,000万円全額の弁済がない限りは、債権者は全部を競売できます。もちろん弁済を受けられるのは競売代金全額ではなく、債権額の範囲内であることはいうまでもありません。

 これを不可分性といい、担保物権の効力を強めるためにすべての担保物権に認められています。

 物上代位性|他の価値物にも及ぶ
 重要な性質で、試験にもちょくちょく出題されています。

 担保物権は、目的物が有している交換価値(金銭に換算したときの価値)を支配する権利であって、「目的物自体」を留置・使用する権利ではありません。したがって、何かの原因でその交換価値が「ほかの価値物に代わった」場合には、その価値物に担保物権の効力が及びます。

 たとえば、目的不動産が売却・賃貸されたり、滅失・損傷したときに、債務者が受け取る売買代金賃貸料火災保険金損害賠償請求権について担保権を行使できるのです。
この性質を物上代位性といい、質権、先取特権、抵当権には認められていますが、留置権にはありません。

 用語の意味

 担保物権でよく出てくる用語の意味を理解しておきましょう。

被担保債権=担保物権がついた債権
(例)代金債権、貸金債権など
担保目的物=債権の担保とされた目的物
(例)宝石や時計などの動産
(例)土地や建物などの不動産
担保権設定者=担保目的物を提供した者
(例)債務者、物上保証人
担保権者=被担保債権を有する者
(例)債権者(抵当権者、質権者など)



 抵当権を例に図に書くと、大体こんなイメージです。
抵当権の設定関係図



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