|公開日 2023.05.01

【問 1】 Aを注文者、Bを請負人とする請負契約(以下「本件契約」という。)が締結された場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 本件契約の目的物たる建物に重大な瑕疵があるためこれを建て替えざるを得ない場合は、AはBに対して当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。

 本件契約が、事務所の用に供するコンクリート造の建物の建築を目的とする場合、Bの瑕疵担保責任の存続期間を20年と定めることができる。

 本件契約の目的が建物の増築である場合、Aの失火により当該建物が焼失し増築できなくなったときは、Bは本件契約に基づく未履行部分の仕事完成債務を免れる。

 Bが仕事を完成しない間は、AはいつでもBに対して損害を賠償して本件契約を解除することができる。(令和1年問8)

解説&正解
【1】[費用相当額の損害賠償]
 判例は、建物に「重大な瑕疵」があるため建て替えざるを得ない場合には、注文者Aは、建替えに要する費用相当額を損害として賠償請求ができるとしている(最判平14.9.24)。本肢は正しい。

【2】[担保責任の期間制限]*637条1項
 請負人が負うべき契約不適合責任の期間は、注文者が不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知して行うものとされている。
 建物の材質(木造・コンクリート造等)にかかわらず、不適合責任の「存続期間を20年と定める」ことはできない。本肢は誤り。

【3】[危険負担]*536条2項
 本肢は、危険負担の問題。注文者A(債権者)の失火により「建物が焼失し増築できなくなった」、つまりAの責めに帰すべき事由により履行不能となったときは、請負人B(債務者)は「未履行部分の仕事完成債務を免れる」こととなる。本肢は正しい。

【4】[注文者による契約解除]*641条
 請負人が「仕事を完成しない間」であれば、注文者はいつでも、理由を必要とすることなく、「損害を賠償して」契約を解除することができる。本肢は正しい。
 請負は、注文者の利益のために、請負人が仕事を完成させる契約なので、注文者にとって必要がなくなった仕事を続行させるのは無意味であり、また請負人としても、損害さえ賠償してもらえるならば不利益はないからである。

[正解] 2



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