|公開日 2023.05.01

【問 1】 AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物につき、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 Bが死亡した場合、①では契約は終了しないが、②では契約が終了する。

 Bは、①では、甲建物のAの負担に属する必要費を支出したときは、Aに対しその償還を請求することができるが、②では、甲建物の通常の必要費を負担しなければならない。

 AB間の契約は、①では諾成契約であり、②では要物契約である。

 AはBに対して、甲建物の品質が契約の内容に適合しないものであるときは、①では担保責任を負う場合があるが、②では担保責任を負わない。 (平成27年問3)

解説&正解
【1】[借主の死亡]*597条3項
 借主が死亡した場合、契約は終了するのか。
 ①賃貸借では契約は終了せずに、借主の賃借権は相続人に承継される。
 ②使用貸借では、借主が死亡すれば当然に終了する。双方の特別な人間関係は死亡によって終了するからである。本肢は正しい。

【2】[必要費の償還請求]*608条1項
 借主Bが必要費を支出した場合、①賃貸借では、賃貸人Aに対し、直ちにその償還を請求することができる。
 ②使用貸借では、貸主Aに対し、必要費の償還を請求することはできない。使用貸借は、借賃を払うというような有償契約ではないので、借主が「通常の必要費を負担しなければならない」とされるのである。本肢は正しい。

【3】[契約の性質]*593条/601条
 ①賃貸借は、賃貸人が賃借人に賃貸物の使用収益をさせることを約し、賃借人がこれに賃料を支払い、契約終了時に賃借物を返還することを約することによって、つまり当事者の合意だけで成立する諾成契約である。賃借物の引渡しは契約の成立要件ではない。記述は正しい。
 ②使用貸借も、貸主が借用物を引き渡すことを約し、借主が借用物を無償で使用収益して契約終了時に返還することを約することによって成立する諾成契約である。借用物の引渡しを要件とする「要物契約」ではないので、誤り。
 以上より、本肢は誤り。

【4】[担保責任]*559条/596条
 ①賃貸借は有償契約だから、有償契約の典型である売買の規定が準用され、甲建物の種類・品質について契約不適合があるときは、担保責任を負うことがある。
 ②使用貸借は無償契約だから、贈与の規定が準用され、契約不適合があっても、甲建物が特定したときの状態で引き渡せばよく、原則として担保責任を負うことはない。
 本肢は正しい。

[正解] 3



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