|公開日 2023.05.01

【問 1】 A、B及びCが、持分を各3分の1とする甲土地を共有している場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 共有者の協議に基づかないでAから甲土地の占有使用を承認されたDは、Aの持分に基づくものと認められる限度で甲土地を占有使用することができる。

 A、B及びCが甲土地について、Eと賃貸借契約を締結している場合、AとBが合意すれば、Cの合意はなくとも、賃貸借契約を解除することができる。

 A、B及びCは、5年を超えない期間内は甲土地を分割しない旨の契約を締結することができる。

 Aがその持分を放棄した場合には、その持分は所有者のない不動産として、国庫に帰属する。(平成19年問4)

解説&正解
【1】[共有物の使用]*249条
 共有者の1人1人は共有物の全部について、それぞれの持分に応じた使用をすることができる。また、「共有者の協議に基づかないで」単独で自由に自己の持分を処分(売却、賃貸など)することもできる
 したがって、共有者の協議によらないで、Aから「甲土地の占有使用を承認された」Dは、Aの持分の限度で甲土地を占有使用することができるのである(A自身がその持分に基づいて占有使用できるように)。本肢は正しい。

【2】[管理行為]*252条/最判昭39.2.25
 賃貸借契約の解除は、共有物の管理行為にあたるから、各共有者の持分価格の過半数で行うことができる。「各3分の1」の持分を有するAとBが合意すれば、持分価格の過半数(2/3)となるので、「Cの合意はなくとも」賃貸借契約を解除することができる。本肢は正しい。

【3】[分割請求の自由と不分割期間]
 共有は、法律関係が複雑になるため早く解消されるのが望ましいので、各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。
 ただし「5年を超えない期間内」であれば、分割をしない旨の不分割契約をすることができる(256条)。本肢は正しい。

【4】[持分の放棄]*255条
 共有者の1人が「その持分を放棄した」とき(または死亡して相続人がないとき)は、その持分は、他の共有者に帰属する。「国庫に帰属する」のではない。Aが持分を放棄すれば、甲土地は、BとCの共有となり、その共有持分は各2分の1となる。本肢は誤り。

[正解] 4



【問 2】 次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。
(判決文)
 共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできないが、現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので、第三者の占有使用を承認しなかった共有者は右第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないと解するのが相当である。

 共有者は、他の共有者との協議に基づかないで当然に共有物を排他的に占有する権原を有するものではない。

 AとBが共有する建物につき、AB間で協議することなくAがCと使用貸借契約を締結した場合、Bは当然にはCに対して当該建物の明渡しを請求することはできない。

 DとEが共有する建物につき、DE間で協議することなくDがFと使用貸借契約を締結した場合、Fは、使用貸借契約を承認しなかったEに対して当該建物全体を排他的に占有する権原を主張することができる。

 GとHが共有する建物につき、Gがその持分を放棄した場合は、その持分はHに帰属する。(平成29年問3)

解説&正解
【1】[共有の内容]
 記述のとおり。判決文は冒頭で「共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできないが……」と述べている。本肢は正しい。

【2】[承認のない占有者に対する明渡請求]   
 AがCと使用貸借契約を締結した場合には、判決文は、Cは共有者Aの「持分に基づくものと認められる限度で共有物(建物)を占有使用する権原を有するので」、協議のなかった(占有使用を承認しなかった)Bは、Cに対して「当然には共有物(建物)の明渡しを請求することはできない」と述べている。本肢は正しい。

【3】[他の共有者に対する占有権限の主張]
 判決文は、使用貸借契約を締結したFは、「使用貸借契約を承認しなかった共有者Eに対して、建物全体を排他的に占有する権原を主張することができる」とまでは述べていない。本肢は誤り。

【4】[持分の放棄]*255条
 本肢は判決文とは無関係。共有者の1人が、その持分を放棄したときは、その持分は、他の共有者に帰属するから、Gが「その持分を放棄」すれば、その持分はHに帰属することになる。本肢は正しい。

[正解] 3



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