【1】[危険負担と利益償還義務]*536条2項
委任者A(債権者)の「責めに帰すべき事由によって
履行の途中で委任が終了」した場合は、
危険負担の問題であって、Aは、反対給付(報酬支払義務)の履行を拒むことができず、受任者B(債務者)は
報酬全額を請求することができる。
ただし、Bは「自己の債務を免れたことによって得た
利益」は、Aに償還しなければならない。本肢は正しい。
※ 債務者の利益償還義務は、たとえば債務者が、危険負担により「建物の引渡債務を免れた」ことによって「建物の管理費用を免れる」などの
利得を得た場合には、この
利得を買主に償還しなければならないとするもので、これは
債務者が二重の利益を受けることとなるからである。
【2】[受任者の善管注意義務]*644条
委任は対価の関係ではなく、相互の信頼関係を基礎としているから、受任者Bは、報酬の有無に関係なく、委任の本旨に従い善良な管理者の注意(善管注意義務)をもって、委任事務を処理する義務を負う。
これより軽い「自己の財産に対するのと同一の注意」では足りない。本肢は誤り。
【3】[受任者の割合的報酬]*648条3項1号
受任者B(債務者)の「責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了」した場合でも、Bは、委任者Aに対して報酬を請求することができる。本肢は誤り。
※ たとえば、介護業者(受任者)は、自己都合によって委任(準委任)が「履行の途中で終了」しても、既にした履行の割合に応じた報酬を請求することができる。
【4】[委任終了後の処分]*654条
受任者Bの死亡により委任が終了した場合でも、急迫の事情があるときは、「Bの相続人」や法定代理人は、委任者(またはその相続人や法定代理人)が委任事務を処理することができる状態になるまで、必要な処分をしなければならない。委任者側に不測の損害が生じないようにするためである。
「急迫の事情の有無にかかわらず、……委任事務を処理しなければならない」は誤り。
[正解] 1