|公開日 2023.05.01

【問 1】 令和3年7月1日になされた遺言に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 自筆証書によって遺言をする場合、遺言者は、その全文、日付及び氏名を自書して押印しなければならないが、これに添付する相続財産の目録については、遺言者が毎葉に署名押印すれば、自書でないものも認められる。

 公正証書遺言の作成には、証人2人以上の立会いが必要であるが、推定相続人は、未成年者でなくとも、証人となることができない。

 船舶が遭難した場合、当該船舶中にいて死亡の危急に迫った者は、証人2人以上の立会いがあれば、口頭で遺言をすることができる。

 遺贈義務者が、遺贈の義務を履行するため、受遺者に対し、相当の期間を定めて遺贈の承認をすべき旨の催告をした場合、受遺者がその期間内に意思表示をしないときは、遺贈を放棄したものとみなされる。(令和3年12月問7)

解説&正解
【1】[自筆証書遺言の書式]*968条1項
 自筆証書遺言は、遺言者が、①全文、②日付、③氏名を自書(署名)し、これに、④押印することによって成立する。
 「添付する相続財産の目録」については、毎葉に署名押印すればよく、自書でなくても(ワープロなどでも)よい。本肢は正しい。

【2】[証人の欠格事由]*974条
 記述のとおり。公正証書遺言の作成には、証人2人以上の立会いが必要だが、推定相続人は、未成年者でなくても、遺言の証人となることはできない。推定相続人が、遺言作成の証人となることは利益相反行為となるからである。本肢は正しい。

【3】[船舶遭難者の遺言]*979条
 船舶が遭難した場合に、その船舶中にいて「死亡の危急に迫った者」は、証人2人以上の立会いがあれば「口頭で遺言をすることができる」。本肢は正しい。

【4】[遺贈の承認・放棄の催告]*987条
 遺贈義務者は、その義務を履行するため、受遺者に対し、相当の期間を定めて遺贈の承認または放棄をすべき旨の催告ができる。
 「受遺者がその期間内に意思表示をしない」ときは、遺贈を承認したものとみなされる。「放棄」ではない。本肢は誤り。

[正解] 4



【問 2】 婚姻中の夫婦AB間には嫡出子CとDがいて、Dは既に婚姻しており嫡出子Eがいたところ、Dは平成25年10月1日に死亡した。他方、Aには離婚歴があり、前の配偶者との間の嫡出子Fがいる。Aが平成25年10月2日に死亡した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aが死亡した場合の法定相続分は、Bが2分の1、Cが5分の1、Eが5分の1、Fが10分の1である。

 Aが生前、A所有の全財産のうち甲土地についてCに相続させる旨の遺言をしていた場合には、特段の事情がない限り、遺産分割の方法が指定されたものとして、Cは甲土地の所有権を取得するのが原則である。

 Aが生前、A所有の全財産についてDに相続させる旨の遺言をしていた場合には、特段の事情がない限り、Eは代襲相続により、Aの全財産について相続するのが原則である。

 Aが生前、A所有の全財産のうち甲土地についてFに遺贈する旨の意思表示をしていたとしても、Fは相続人であるので、当該遺贈は無効である。(平成25年問10)

解説&正解
【1】[相続人と法定相続分]*900条
 Aが死亡した場合、法定相続人は、配偶者B、子C・E(Dの代襲相続)、Fである。
 各自の相続分は、Bが1/2、子が1/2。Dを代襲相続するEの相続分は、Dと同じ。Fは嫡出子だから、子の1/2は、C・E・Fで等分することになる。
 つまり、C:E:F=1:1:1なので、結局、相続分はC・E・F=1/2×1/3=1/6となる。本肢は誤り。

【2】[遺産分割の方法]*最判平3.4.19
 判例は、特定の遺産を「特定の相続人に相続させる」旨の遺言は、特段の事情のない限り、特定遺産をその相続人に単独で相続させる「遺産分割の方法が指定されたもの」と解している。したがって、Cは、被相続人の死亡時に直ちに甲土地の所有権を取得できることとなる。本肢は正しい。

【3】[遺言と代襲相続]*最判平23.2.22
 特定の相続人に遺産を「相続させる旨の遺言」をしていた場合には、代襲者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき「特段の事情のない限り」、代襲相続は生じない。
 遺言者は、通常、遺言時における特定の推定相続人にその遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解されるから、原則として、EがDを代襲相続することはない。本肢は誤り。

【4】[相続人に対する遺贈]
 遺贈の対象者としてとくに制限は設けられていない。相続人でもそれ以外の者でも、また個人でも法人でもかまわない。相続人Fに対する遺贈も有効である。本肢は誤り。

[正解] 2



【問 3】 相続に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 被相続人の生前においては、相続人は、家庭裁判所の許可を受けることにより、遺留分を放棄することができる。

 家庭裁判所への相続放棄の申述は、被相続人の生前には行うことができない。

 相続人が遺留分の放棄について家庭裁判所の許可を受けると、当該相続人は、被相続人の遺産を相続する権利を失う。

 相続人が被相続人の兄弟姉妹である場合、当該相続人には遺留分がない。
(令和4年問2)

解説&正解
【1】[遺留分放棄の形式]*1049条1項
 相続の開始前(被相続人の生前)における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生じる。本肢は正しい。

【2】[相続放棄の形式]*915条1項/938条
 相続人は、相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に、単純承認・限定承認・放棄のいずれかをしなければならない。
 したがって、「家庭裁判所への相続放棄の申述は、被相続人の生前には行うことができない」のである。本肢は正しい。

【3】[遺留分の放棄]
 遺留分の放棄は、相続の放棄ではないので、遺留分を放棄したからといって、相続権を失うわけではない。本肢は誤り。

【4】[遺留分権利者の範囲]*1042条1項
 遺留分権利者となることができるのは、兄弟姉妹以外の相続人、つまり、配偶者・子・直系尊属だけである。本肢は正しい。

[正解] 3



宅建民法 厳選過去問|テーマ一覧