|公開日 2023.05.01

【問 1】 Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された場合におけるBのAに対する代金債務(以下「本件代金債務」という。)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Bが、本件代金債務につき受領権限のないCに対して弁済した場合、Cに受領権限がないことを知らないことにつきBに過失があれば、Cが受領した代金をAに引き渡したとしても、Bの弁済は有効にならない。

 Bが、Aの代理人と称するDに対して本件代金債務を弁済した場合、Dに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。

 Bが、Aの相続人と称するEに対して本件代金債務を弁済した場合、Eに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。

 Bは、本件代金債務の履行期が過ぎた場合であっても、特段の事情がない限り、甲建物の引渡しに係る履行の提供を受けていないことを理由として、Aに対して代金の支払を拒むことができる。 (令和1年問7)

解説&正解
【1】[受領権者以外の者への弁済]*479条
 受領権限のない者に対する弁済でも、弁済者が善意かつ無過失のときに限って、弁済としての効力を有するから、弁済者Bが、Cに受領権限がないことにつき善意であっても、「過失があれば」弁済としての効力は有しない。
 ただし、このような場合でも、債権者Aが利益を受けた限度においてのみ弁済の効力を有するとされるので、Cが、受領代金を債権者「Aに引き渡した」のであれば、Bの弁済はその限度で有効となる。本肢は誤り。

【2】[外観を有する者への弁済]*478条
 弁済者Bが、「Aの代理人と称する」詐称代理人(受領権者の外観を有する者)Dに弁済した場合、Dに受領権限がないことにつき「善意かつ無過失」であれば、その弁済は有効となる(最判昭37.8.21)。本肢は正しい。

【3】[外観を有する者への弁済]*478条
 「Aの相続人と称する」詐称相続人(受領権者の外観を有する者)Eに対する弁済も[選択肢2]と同じである。
 Bが「善意かつ無過失」であれば、その弁済は有効となる。本肢は正しい。

【4】[同時履行の抗弁権]*533条
 売買のような双務契約では、公平の観点から、売主・買主はともに、相手方が「債務の履行を提供するまで」は「自己の債務の履行を拒むことができる」という同時履行の抗弁権を有している。
 したがって、Bは、代金債務の履行期が過ぎた場合であっても、特段の事情(先に代金を支払うという約定など)がない限り、Aによる「甲建物の引渡しに係る履行の提供を受けていない」ことを理由に、代金の支払を拒むことができる。本肢は正しい。

[正解] 1



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