|公開日 2017.11.15


【問 1】 代理に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 売買契約を締結する権限を与えられた代理人は、特段の事情がない限り、相手方からその売買契約を取り消す旨の意思表示を受領する権限を有する。

 委任による代理人は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復代理人を選任することができる。

 復代理人が委任事務を処理するに当たり金銭を受領し、これを代理人に引き渡したときは、特段の事情がない限り、代理人に対する受領物引渡義務は消滅するが、本人に対する受領物引渡義務は消滅しない。

 夫婦の一方は、個別に代理権の授権がなくとも、日常家事に関する事項について、他の一方を代理して法律行為をすることができる。


[解説&正解]

※[新出]とあるのは、今回の宅建試験ではじめて出題された問題です。

 正しい  [代理権の範囲]*99条2項/最判昭34.2.13
[新出] 判旨そのままの出題。
売買契約締結の代理人は、特段の事情がない限り、相手方からその売買契約の取消しの意思表示を受ける権限も有する。
代理は、本人のために意思表示をなし、また意思表示を受領して本人に直接に権利義務を取得させる制度であるから、相手方から取消しの意思表示を受ける権限を有するのは、当然なのである。

 正しい  [任意代理人の復任権]*104条
委任による代理人(任意代理人)は、本人の信任を受けて代理人となったのだから、原則として他人を復代理人として選任することはできない。
ただし例外的に、①本人の許諾を得たとき、または、②やむを得ない事由があるとき(急病など急迫な事情があって自ら代理行為ができないときなど)に限って復任権が認められている。
代理行為に支障を生じさせて本人の不利益にならないようにするためである。

 誤り   [復代理人の義務]*107条2項/最判昭51.4.9
[新出] 復代理人が委任事務の処理により金銭を受領したときは、特別の事情がないかぎり、本人に対してその引渡義務を負うほか、代理人に対してもその義務を負う。
この場合、代理人に金銭を引き渡したときは、代理人に対する受領物引渡義務は消滅し、それとともに、本人に対する受領物引渡義務も消滅する。
結局は、本人に金銭を引き渡すという同一の目的を有するものだからである。

 正しい  [夫婦における日常家事の代理権]*761条/最判昭44.12.18
夫婦は、食料購入・家賃支払など「日常家事に関する事項」については、「個別の代理権の授権」がなくとも、相互に他の一方を代理して法律行為をすることができる。
判例は、761条の「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う」との規定は、「実質的に、夫婦が相互に日常家事代理権を有する意味も含んでいる」と解している。

[正解] 3


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【問 2】 所有権の移転又は取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合、Bが甲土地の所有権を取得するのは、取得時効の完成時である。

 Aを売主、Bを買主としてCの所有する乙建物の売買契約が締結された場合、BがAの無権利について善意無過失であれば、AB間で売買契約が成立した時点で、Bは乙建物の所有権を取得する。

 Aを売主、Bを買主として、丙土地の売買契約が締結され、代金の完済までは丙土地の所有権は移転しないとの特約が付された場合であっても、当該売買契約締結の時点で丙土地の所有権はBに移転する。

 AがBに丁土地を売却したが、AがBの強迫を理由に売買契約を取り消した場合、丁土地の所有権はAに復帰し、初めからBに移転しなかったことになる。


[解説&正解]

 誤り   [時効の起算点]*144条
時効の効果は、その起算日にさかのぼる(遡及効)。したがって、Bが甲土地の所有権を取得するのは「取得時効の完成時」ではなく、起算日、つまり占有の開始時である。
時効は、一定期間継続した事実状態をそのまま権利として保護する制度だから、占有を開始した起算日に権利を取得するというのが当然の帰結といえる。

※ たとえば、20年間所有者として占有してきた土地を時効取得する者は、20年前の最初から所有者となるのであって、時効が完成した20年後に所有者となるのではない。

 誤り   [不動産の即時取得はあるか]*192条
動産については「取引行為によって、平穏・公然と動産の占有を始めた者が、善意無過失であるときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」という即時取得の規定はあるが、不動産についてはこのような保護規定はない。
売主Aが無権利者であることについて、買主Bが、たとえ「善意無過失」であったとしても、売買契約が成立した時点で、乙建物の「所有権を取得する」ことはありえない。
※ 他人の所有物であっても売買契約としては成立するため、売主Aはその所有権を買主Bに「移転すべき債務」が生じることになる。

 誤り   [所有権の移転時期]*176条
所有権の移転などの物権変動は、当事者の意思表示だけで効力を生じるが、別段の約定をすれば、その約定の時に効力を生じる。
「代金の完済までは丙土地の所有権は移転しない」との特約があれば、代金の完済時に所有権は移転するのであって、「契約締結の時点」で移転するのではない。

 正しい  [取消しの効果]*121条
取り消された行為は、はじめから無効であったものとみなされるので、強迫を理由に売買契約が取り消された場合、土地の所有権は「初めからBに移転しなかった」ことになる。

[正解] 4


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【問 3】 次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。

(判決文)
共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできないが、現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので、第三者の占有使用を承認しなかった共有者は右第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないと解するのが相当である。

 共有者は、他の共有者との協議に基づかないで当然に共有物を排他的に占有する権原を有するものではない。

 AとBが共有する建物につき、AB間で協議することなくAがCと使用貸借契約を締結した場合、Bは当然にはCに対して当該建物の明渡しを請求することはできない。

 DとEが共有する建物につき、DE間で協議することなくDがFと使用貸借契約を締結した場合、Fは、使用貸借契約を承認しなかったEに対して当該建物全体を排他的に占有する権原を主張することができる。

 GとHが共有する建物につき、Gがその持分を放棄した場合は、その持分はHに帰属する。


[解説&正解]

2時間の宅建試験の短い解答時間(1問につき2分と少々)で判決文を正確に理解するのは、やさしくはありません。ジックリ考え込んでいる余裕はありませんから、ほかの科目を片づけてから最後にやるべきですね。

本問は、最判昭和63年5月20日の判旨からの出題です。
ここで登場する第三者は、使用貸借に基づく使用借権者(債権者)であり、共有持分を譲り受けた共有者(所有権者)ではないことに注意してください。

 正しい  [共有物の使用]*249条
[新出] 共有は、持分割合によって制限された所有権であって、各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
しかし、他の共有者との協議によらずに「当然に共有物を排他的に占有する権原」までも有するものではないのである。
本肢は「共有者間の権利関係」に関する記述であり、第三者は関係ない。

 正しい  [占有者に対する明渡請求]
第三者(使用借権者)と一部共有者との権利関係(明渡し)の問題である。
判決文後半の趣旨によれば「共有物の占有使用を承認された第三者は、それを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので、占有使用を承認しなかった共有者は、第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできない」とあるので、本肢の記述は正しい。

 誤り   [排他的に占有する権原]
[新出] 同じく、第三者と一部共有者との権利関係の問題である。
判決文前半の趣旨によれば「協議に基づかないで一部共有者から共有物を占有使用することを承認された第三者は、承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできない」とあるので、当該建物全体を「排他的に占有する権原を主張することができる」とする本肢の記述は、明らかに誤りである。

 正しい  [持分放棄の効果]*255条
共有者の1人が、その共有持分を放棄したときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
※ 共有の本質は所有権であって、所有者が数人いるために、持分という割合で制約された状態にあるだけなので、放棄などにより持分という制約がなくなれば、いつでも完全な所有権に復帰する性質をもっている(共有の弾力性)

[正解] 3


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【問 4】 次の記述のうち、平成29年4月1日現在施行されている民法の条文に規定されているものはどれか。

 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、その合意があった時から1年を経過した時までは、時効は完成しない旨

 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる旨

 売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う旨

 賃借人の原状回復義務の対象となる損傷からは、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年劣化を除く旨


[解説&正解]

 [新出]
現行民法には規定されていない。
これは、改正民法151条1項1号により、現行民法が全文改正された規定である。

 [新出]
現行民法210条1項に規定されている。
「他人の土地に囲まれて公道に出られない土地の所有者は、公道に出るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行できる」ことを法的に認めた隣地通行権の規定である。
改正民法にもそのまま採用されている。

 [新出]
現行民法には規定されていない。
これは、改正民法560条により、現行民法が全文改正された規定である。

 [新出]
現行民法には規定されていない。
これは、改正民法621条により、現行民法が全文改正された規定である。

[正解] 2


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【問 5】 Aは、中古自動車を売却するため、Bに売買の媒介を依頼し、報酬として売買代金の3%を支払うことを約した。Bの媒介によりAは当該自動車をCに 100万円で売却した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Bが報酬を得て売買の媒介を行っているので、CはAから当該自動車の引渡しを受ける前に、100万円をAに支払わなければならない。

 当該自動車に隠れた瑕疵(かし)があった場合には、CはAに対しても、Bに対しても、瑕疵担保責任を追及することができる。

 売買契約が締結された際に、Cが解約手付として手付金 10万円をAに支払っている場合には、Aはいつでも 20万円を償還して売買契約を解除することができる。

 売買契約締結時には当該自動車がAの所有物ではなく、Aの父親の所有物であったとしても、AC間の売買契約は有効に成立する。


[解説&正解]

 誤り   [同時履行の抗弁権]*533条
Bの媒介により成立したAC間の契約は売買契約である。
売買のような双務契約では、公平の観点から、売主・買主双方は、原則として、相手方が債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができるという同時履行の抗弁権を有している。したがって、Aから「自動車の引渡しを受ける前に」Cが先に代金を支払う義務はない。
「Bが報酬を得て売買の媒介を行っている」かどうかは関係がない。

*533条(同時履行の抗弁)
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

 誤り   [瑕疵担保責任]*570条
隠れた瑕疵の責任は、売主が負わなければならない瑕疵担保責任であるから、買主Cは、売主Aに対してはその責任を追及できるが、売買契約の媒介をしただけのBにはその責任を追及することはできない。

 誤り   [解約手付と履行の着手]*557条/最判昭40.11.24
手付額10万円を受け取った売主Aは、倍額の20万円(実質的に 10万円の損失)を償還すれば契約を解除できるが、「いつでも」できるわけではなく、買主Cが履行の着手をする前にしなければならない。

解約手付の趣旨は、相手方が履行に着手する前であれば、手付額の損失を覚悟して契約を解除できるというものであって、「履行の着手」という制限をおいたのは、すでに履行に着手した相手方に損害を与えないようにするためである。

※557条(手付)
1 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。

 正しい  [他人の権利の売買]*560条、555条/最判昭25.10.26
売買は、売主がある財産権を買主に移転することを約し、買主が代金を支払うことを約するという双方の合意で効力を生じるから、当該自動車がAの父親の所有物であったとしてもAC間の売買契約は有効に成立する。
Aは、契約上、その所有権を取得してCに移転する債務を負うこととなり、移転できなければ債務不履行責任を負うことになるのである。

[正解] 4


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【問 6】 Aが死亡し、相続人がBとCの2名であった場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 ①BがAの配偶者でCがAの子である場合と、②BとCがいずれもAの子である場合とでは、Bの法定相続分は①の方が大きい。

 Aの死亡後、いずれもAの子であるBとCとの間の遺産分割協議が成立しないうちにBが死亡したときは、Bに配偶者Dと子Eがいる場合であっても、Aの遺産分割についてはEが代襲相続人として分割協議を行う。

 遺産分割協議が成立するまでの間に遺産である不動産から賃料債権が生じていて、BとCがその相続分に応じて当該賃料債権を分割単独債権として確定的に取得している場合、遺産分割協議で当該不動産をBが取得することになっても、Cが既に取得した賃料債権につき清算する必要はない。

 Bが自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に対して、相続によって得た財産の限度においてのみAの債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続を承認する限定承認をする旨を申述すれば、Cも限定承認をする旨を申述したとみなされる。


[解説&正解]

 誤り   [法定相続分]*900条
相続人の法定相続分は900条各号に定められている。
① 配偶者と子が相続人のとき、その相続分は、それぞれ1/2 だから、配偶者B1/2、子C1/2 である。
② 子B・Cだけが相続人のとき、その相続分は均等だから、B1/2、C1/2 となり、①②は同じである。
したがって「①の方が大きい」との記述は誤り。

 誤り   [代襲相続に該当する事由]*887条2項
[新出] 代襲相続は、被相続人Aの子Bが、①相続の開始以前に死亡したとき、または、②相続欠格事由該当するか廃除によって、その相続権を失ったときに生じる。
本肢の場合、どれにも該当せず代襲相続が問題となることはない。
Eは「代襲相続人として」ではなく、Bの相続人として遺産分割協議を行うのである。

 正しい  [遺産分割の効力]*909条/最判平17.9.8
[新出] 遺産分割協議で遺産である不動産をBが取得することになっても、Cが既に取得した賃料債権について清算する必要はない。
判例は「遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じるものであるが、遺産である賃貸不動産の使用管理により生じる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人が相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものであるから、後にされた遺産分割の影響を受けない」としている。

 誤り   [共同相続人の限定承認]*923条
相続人が数人あるときは、共同相続人の全員の共同でなければ限定承認をすることはできない。1人1人について限定承認を認めれば、清算手続が非常に複雑になるからである。
Bが家庭裁判所に限定承認を申述したからといって、Cも限定承認を申述したとみなされることはない。

[正解] 3


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【問 7】 請負契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 請負契約が請負人の責めに帰すべき事由によって中途で終了し、請負人が施工済みの部分に相当する報酬に限ってその支払を請求することができる場合、注文者が請負人に請求できるのは、注文者が残工事の施工に要した費用のうち、請負人の未施工部分に相当する請負代金額を超える額に限られる。

 請負契約が注文者の責めに帰すべき事由によって中途で終了した場合、請負人は、残債務を免れるとともに、注文者に請負代金全額を請求できるが、自己の債務を免れたことによる利益を注文者に償還しなければならない。

 請負契約の目的物に瑕疵(かし)がある場合、注文者は、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けていなくとも、特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。

 請負人が瑕疵担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることはできない。


[解説&正解]

 正しい  [注文者の残工事費用の賠償範囲]*632条/最判昭60.5.17
[新出] 判例によれば、請負の中途終了が、請負人の責めに帰すべき事由によるものであり、請負人が債務不履行責任を負う場合であっても、施工済み部分に相当する報酬に限ってその支払いを請求することができるときには、注文者は、残工事の施工に要した費用の全額を請求することはできず、請負人の未施工部分の報酬に相当する金額を超えるときに限り、その超過額の賠償請求をすることができるにすぎないとしている。
要するに、当初の請負代金額より余分にかかった費用だけ請求できるということである。

 正しい  [危険負担]*536条2項/最判昭52.2.22
[新出] 注文者の責めに帰すべき事由によりその完成が不能となった場合には、請負人は自己の残債務を免れるが、536条2項(危険負担)により、注文者に請負代金全額を請求することができる。
ただし、自己の残債務を免れたことによる利益(必要とした労力や費用の分)は、注文者に償還しなければならない。

※536条2項
債権者(注文者)の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者(請負人)は、反対給付(請負代金)を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者(注文者)に償還しなければならない。

 誤り   [損害賠償と同時履行]*634条2項後段/最判平9.2.14
[新出] 瑕疵修補に基づく注文者の損害賠償請求権と請負人の報酬債権とは、同時履行の関係にあるから、当事者の一方は、相手方から債務の履行を受けるまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。
判例によると、注文者は、請負人から瑕疵修補に代わる損害賠償を受けるまでは、瑕疵の程度や当事者の交渉態度等により信義則に反しない限り、報酬全額の支払いを拒むことができるとしている。

※634条2項
注文者は、瑕疵の修補に代えて、またはその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第533条の規定(同時履行)を準用する。

 正しい  [担保責任を負わない旨の特約の効力]*640条
「瑕疵担保責任を負わない旨の特約」も有効であるが、このような特約があっても、請負人が「知りながら告げなかった事実」については、担保責任を負わなければならない。詐欺にも等しい不法があるからである。

[正解] 3


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【問 8】 A、B、Cの3人がDに対して 900万円の連帯債務を負っている場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、A、B、Cの負担部分は等しいものとする。

 DがAに対して履行の請求をした場合、B及びCがそのことを知らなければ、B及びCについては、その効力が生じない。

 Aが、Dに対する債務と、Dに対して有する 200万円の債権を対当額で相殺する旨の意思表示をDにした場合、B及びCのDに対する連帯債務も 200万円が消滅する。

 Bのために時効が完成した場合、A及びCのDに対する連帯債務も時効によって全部消滅する。

 CがDに対して 100万円を弁済した場合は、Cの負担部分の範囲内であるから、Cは、A及びBに対して求償することはできない。


[解説&正解]

連帯債務に関する初歩的な問題。テキストをていねいに読み込んでいれば、それだけで正解できる問題です。


 誤り   [1人に対する請求の効力]*434条
連帯債務者の1人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対してもその効力を生じる(絶対的効力)。Dが、Aに対して請求すれば、その効力はB・Cにも及ぶ。Aによる請求を知っているかどうかは関係がない。

 正しい  [1人による相殺の効力]*436条1項
[新出] 連帯債務者の1人が債権者に対する反対債権で相殺すれば、その効果は他の債務者にも及ぶ(絶対的効力)。相殺は意思表示でなされるものの、実質的には弁済と同じだからである。
Aが 200万円の反対債権で相殺(弁済)すれば、BとCの連帯債務も 200万円が消滅するのは当然である。

 誤り   [1人についての時効完成の効力]*439条
連帯債務者の1人について時効が完成したときは、その者の負担部分について、他の債務者も債務を免れる(絶対的効力)
Bの債務が時効消滅すれば、A・Cの債務も、Bの負担部分 300万円について債務を免れる(消滅する)のであって、「全部消滅する」のではない。

 誤り   [連帯債務者の求償権]*442条/大判大6.5.3
[新出] 連帯債務者の1人が弁済したり、その財産によって連帯債務を消滅させたときは、他の債務者に対し、各人の負担部分について求償することができるが、判例は、1人による一部弁済が「その負担部分を超えないとき」も、負担部分の割合に応じて他の債務者に求償することができるとしている。
弁済者Cの求償権を確保するためである。

[正解] 2


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【問 9】 1億 2,000万円の財産を有するAが死亡した。Aには、配偶者はなく、子B、C、Dがおり、Bには子Eが、Cには子Fがいる。Bは相続を放棄した。また、Cは生前のAを強迫して遺言作成を妨害したため、相続人となることができない。この場合における法定相続分に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

 Dが 4,000万円、Eが 4,000万円、Fが 4,000万円となる。

 Dが 1億2,000万円となる。

 Dが 6,000万円、Fが 6,000万円となる。

 Dが 6,000万円、Eが 6,000万円となる。



[解説&正解]

相続放棄と相続欠格がからんだ相続人と法定相続分の問題です。
初歩的な基本問題ですが、ケアレスミスをしないためにも必ず関係図を書くようにしてください。

相続関係図

*887条2項、891条3号、939条

まず、相続人を確定しなければならないが、問題となるのは、Bの相続放棄とCの相続欠格である。

相続放棄をした者は、はじめから相続人とならなかったものとみなされるから、Bには相続権そのものがなく、したがってまた、その子Eが相続人となることもなく、代襲相続も認められていない。
また、被相続人Aを「強迫して遺言作成を妨害した」Cは、相続欠格事由に該当するため相続人となることはできない。ただしこの場合は、『その者の子がこれを代襲して相続人となる』とされているので、子Fが相続人となる(相続分はCと同じ)
以上より、相続人はDとFの2人で、法定相続分はそれぞれ 6,000万円となるから、3が正しい。

[正解] 3


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【問 10】 ①不動産質権と②抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

 ①では、被担保債権の利息のうち、満期となった最後の2年分についてのみ担保されるが、②では、設定行為に別段の定めがない限り、被担保債権の利息は担保されない。

 ①は、10年を超える存続期間を定めたときであっても、その期間は10年となるのに対し、②は、存続期間に関する制限はない。

 ①は、目的物の引渡しが効力の発生要件であるのに対し、②は、目的物の引渡しは効力の発生要件ではない。

 ①も②も不動産に関する物権であり、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。


[解説&正解]

不動産質権に関しては[新出]もありますが、どれも基本中の基本問題で、抵当権に関しても信じられないくらいの初歩的な基本問題ばかり。
テキストをていねいに読んでいれば、難しい過去問練習をしていない人でも正解できるはずの問題です。


 誤り   [被担保債権の範囲]*358条、*375条1項
記述の内容が逆である。
①不動産質権者は、設定行為に別段の定めがない限り「債権の利息を請求することができない」。つまり、利息は担保されない。目的物の使用収益権が質権者に認められているからである。
②抵当権が担保する利息については、原則として、満期のきた最後の2年分についてだけ抵当権の効力が及ぶ。
抵当権は、抵当権設定者の使用収益を認める権利だから、抵当権設定後も、後順位抵当権者などの利害関係者が現れる可能性があるために、その利益も保護する必要があるからである。

 正しい  [存続期間]*360条
①不動産質権の存続期間には制限があり、10年を超えることができない。設定行為でこれより長い期間を定めても、10年に短縮される。
所有者以外の者に目的不動産を長期間占有させることは、不動産の効用をそこなうからである。
②抵当権は、抵当目的物を債務者や物上保証人のもとに置いて使用収益させるため、とくに存続期間は制限されていない。使用収益の利益を債務の弁済にあてることができるからである。

 正しい  [効力発生要件]*344条、369条1項
①不動産質権の設定については、344条に「質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる」と定められている。つまり、目的物の引渡しが効力の発生要件である。
②抵当権は、抵当目的物の占有を移転する必要のない性質の権利だから、目的物の引渡しがなくても、設定契約によって効力を生じる。

 正しい  [対抗要件]*177条
①不動産質権も、②抵当権も、177条にあるように、登記が第三者に対する対抗要件とされている。


[正解] 1



(この項終わり)