|公開日 2022.04.07

33年間の出題傾向|33年間で11問の出題。やや頻出テーマといえます。多くは、売買・賃貸借や債務不履行に関連して出題されています。平成22年(2010)の判決文問題(難問)以後、9年間出題されていませんでしたが、令和2年(2020)に、同じく判決文問題(基本)として出題されました。
ほかのテーマとも関連が深いので、必ずマスターする必要があります。
ここをおさえよう! 得点のカギ1 解除の趣旨
2 催告解除の要件
3 無催告解除の要件
4 解除の効果と第三者
れいちゃん01

ここの得点ポイントは?

たくちゃん02

やはり、解除できる要件とその効果だね。売買契約や債務不履行と関連付けて理解しようね。
契約の解除が理解できれば、民法の力も相当ついてくるよ。

1|解除の意味と趣旨

家を売ったところ、とっくに期限が過ぎているのに、何度催促しても「買主」が代金を払わない。困った「売主」としては、代金の支払いを請求するとともに、履行遅滞を理由に損害賠償を請求したり、あるいは裁判所に訴えて履行を強制することもできます。

しかしこれらの場合には、売主も家の引渡しを履行しなければなりません。
ただ今後も、このような買主とやっていくのは相当やっかいです。
売主としては、「不誠実な買主」との契約を解消して、むしろ新たに誠実な買主を探したほうがいいのではないでしょうか。

意 味

契約の解除というのは、一方の当事者の意思表示によって、すでに成立している契約の効力を消滅させ、「契約ははじめから存在しなかった」と同じ状態に戻すことをいいます。

趣 旨

契約が有効に成立すると、当事者は互いに「契約に拘束」されます。
しかし、履行されない契約にいつまでも拘束されるのは相当ではないといえます。

当事者の一方がその債務を履行しないときに、相手方を救済するための手段として、一方的に契約解消を認めれば、契約の効力を消滅させて、自己の債務を免れることができます。解除の趣旨は、まさにこの点にあります。

2|催告を必要とする解除

契約の解除ができるのは、債務不履行があった場合(法定解除)や、当事者が契約で定めた場合(約定解除)のほかに、事後的に契約を解消する場合(合意解除)があります。
試験で重要なのは、債務不履行(履行遅滞、履行不能、不完全履行)を理由とする「法定解除」です。まずは、催告を必要とする解除をみておきましょう。

 催告による解除

原 則

相手方が履行遅滞にある場合の解除です。
相手方が履行遅滞にあっても、直ちに解除することはできず、必ず催告が必要です。
相手方に対して「相当の期間」を定めて履行を「催告」し、その期間内に履行がないときに、契約を解除することができます。

解除する前に、催告を必要としたのは、履行遅滞の場合は、履行は可能なので、相手方にもう1度履行の機会を与えるのが適切であり、また、いったん有効に成立した契約なので、なるべく存続させるべきだと考えられたからです。

注意すべきは、単に相手方の履行が遅滞しているというだけでは、「履行遅滞」にあるとはいえないことです。

ここで、同時履行の抗弁権が思い浮かびましたか。
売買のような双務契約の場合には、双方に同時履行の抗弁権がありますから、相手方が履行期に履行しないからといって、必ずしも「履行遅滞」にあるわけではありませんでしたね。
相手方には同時履行の抗弁権があるからこそ「履行遅滞」とはならないのですから、「履行遅滞」にするには、この抗弁権を消滅させることが必要でした。

そのためには、自ら履行の提供をして、相手方を「履行遅滞」にして、それから催告して、それでも履行がないときに解除できるわけです。履行の提供をしないで、「催告」するだけで解除することはできません(最判昭29.7.27)

軽微な不履行は解除できない
ただし、相当の期間を定めて履行の催告をして、その期間内に履行がないときでも、催告期間が経過した時における債務不履行が「契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」は、解除することはできません(541条ただし書)

たとえば、土地・建物の売買であれば、その契約や不動産取引に通用している社会通念などから判断して、契約目的の達成に「必須的でない付随的義務の不履行」や「僅少部分の不履行」にすぎない場合には、解除はできず、損害賠償で満足すべきとされます。

解除の意思表示は撤回できない
いったんなされた解除の意思表示は、撤回することができません。
相手方の立場を不安定にするからです。

ステップアップ

 不相当に短い催告期間
催告期間が不相当に短いときは、その催告は有効でしょうか。それとも、改めて相当の期間を定めて「再度の催告」をすべきでしょうか。
判例は、催告期間が「不相当に短いとき」であっても、その催告は有効であり、催告の時から起算して客観的に相当期間を経過すれば、改めて催告しなくても解除できるとしています(最判昭44.4.15)
相手方はすでに履行遅滞にあるので、催告した以上、再度の催告は不要なのです。

 解除権に条件をつけられるか
解除の意思表示に条件をつけることは、相手方の立場を不安定にするため、原則として許されません。
しかし、たとえば「1週間以内に履行がないときは、改めて解除の意思表示をしなくても、契約は解除されたものとする」というような条件であれば、すでに履行遅滞にある相手方をとくに不利益にするものではないので有効とされます。

要注意

債務者の帰責事由は不要
契約の解除は、解除される債務者に帰責事由(故意・過失等)がなくてもすることができます。
解除制度は、損害賠償制度とは異なり、債務不履行をした債務者の責任追及ではなく、債権者を契約の拘束から解放する制度です。

債務者に帰責事由がない場合であっても、履行されない契約に債権者がいつまでも拘束されるのは相当ではないからです。

3|催告を必要としない解除

次の①~⑥の場合は、債権者は催告をしないで「直ちに」解除することができます。
催告しても履行の見込みがないからです。履行期前でも解除できます。

 契約の全部解除
 債務の全部が履行不能であるとき(全部履行不能)
売主の不注意により、あるいは自然災害等により、売買の目的物が滅失した場合のように、債務全部の履行が不可能な場合です。

 債務者が全部の履行拒絶の意思を明確に表示したとき(明確な履行拒絶)
「履行を拒絶する趣旨の言葉を発した」だけでは不十分で、「履行を拒絶する意思を明確に表示した」ことが必要です。

 残存部分のみでは契約目的を達成できないとき(目的不達成)
一部の履行不能、または一部の明確な履行拒絶の場合であって、残存部分のみでは契約目的を達成できない場合です。

 催告しても履行の見込みがないことが明らかなとき(明らかに見込みなし)
債務の履行がなく、催告をしても契約目的を達するのに足りる履行の見込みがないことが明らかである場合です。

 契約の一部解除
 債務の一部が履行不能のとき(一部履行不能)

 債務者が債務の一部の履行拒絶の意思を明確に表示した(明確な一部履行拒絶)

 債権者に帰責事由がある場合
債務不履行が債務者ではなく、債権者の帰責事由によるものであるときは、債権者は、契約を解除することができません。(543条)

たとえば、「売主」が建物を引き渡す債務を負っている場合に、建物の滅失について、引渡債権者である「買主に帰責事由がある」ときは、買主は契約を解除できません。
解除は、債権者を契約の拘束力から解放する「救済手段」ですが、帰責事由のある債権者救済を認める必要はないからです。

4|解除の効果

契約が解除されるとどのような効果が生じるのか、①当事者間の効果と、②第三者との関係に分けて確認しておきましょう。

 当事者間の効果

1 原状回復義務
契約が解除されると、債権・債務ははじめにさかのぼって消滅し「契約を結ばなかった状態」に戻ります(解除の遡及効)。
したがって、当事者は、相手方を原状に復させる原状回復義務を負うこととなります。互いに、相手方を「契約がなかった状態に戻す」わけです。

まだ履行されていない「未履行債務」は履行する必要はなくなり、すでに履行された「履行済み債務」であれば、目的物を互いに返還することとなります。なお、金銭を返還する場合は、受領時からの利息をつけなければなりません。
「解除した時」からの利息ではありません。

2 使用利益の償還義務
当事者は「解除されるまで」に受けていた使用上の利益も償還する必要があります。

判例は、売買により買主に移転した所有権は、解除によって当然に遡及的に売主に復帰するので、原状回復義務の内容として、買主は「解除されるまでの間」に目的物を使用したことによる利益も売主に償還すべき義務を負う、としています(最判昭51.2.13)

3 損害賠償義務
解除によって契約が消滅しても、すでに生じた損害は消滅しないので、これを賠償させる必要があります。

結局、買主が解除すると、売主に対して、①代金返還請求、②受領時からの利息支払請求、③損害賠償請求の各請求をすることになります。

4 原状回復義務と同時履行
双方の原状回復義務は、売買のような双務契約では同時履行の関係に立ちます。
売主の代金返還債務と、買主の目的物返還債務は、同時に履行する必要があります。

パトモス先生講義中

契約を解除したら、目的物の返還義務のほかに、使用利益の償還義務、損害賠償義務も生じるよ。

 第三者との関係

第三者に対しては、解除前解除後に分けて考える必要があります。

1 解除前の第三者
この場合は、第三者保護の問題です(545条1項)
契約が解除されると、債権・債務ははじめにさかのぼって消滅し、当事者は「契約を結ばなかった状態」に戻ります。つまり、はじめから権利移転がなかったこととなるため解除がある前に「すでに権利を取得」していた第三者も、はじめからその権利を取得しなかったこととなります。つまり「権利を失う」こととなるわけです。

しかし、他人の債務不履行によって第三者が「権利を失う」のは行きすぎとして、民法は「第三者の権利を害することはできない」と定め、解除の遡及効を制限して第三者の利益を保護しています。
ただし、保護されるためには「登記」「引渡し」などの対抗要件が必要です(最判昭33.6.14)保護に値する第三者とされるためには「権利者としてなすべきことを全部終えていなければならない」のです。

要注意

第三者の善意・悪意は問題とならない
錯誤や詐欺・強迫などのような「契約成立時」の瑕疵を理由とする「取消し」とは違って、解除は、「有効に成立した契約後」の事情による契約の解消なので、第三者の善意・悪意は問題になりません。

第三者が、前主(債務者)の不履行状態を知っていた悪意だったとしても、不履行は解消されることも十分にあり、それだけで悪意の第三者に責任を問う理由にはならないのです。
新民法も改正前民法と同様に、「第三者の権利を害することはできない」としているだけで、第三者の善意・悪意過失の有無について、一切言及していません。

2 解除後の第三者
契約が解除された後に取引関係に立った第三者とは、177条の対抗問題となります。

AB間の売買契約で、売主AがBの債務不履行を理由に契約を解除した後に、第三者が現れた場合には、
① 解除によるB→Aの所有権復帰
② 解除後のB→第三者への所有権移転とは、二重譲渡と同様に対抗関係となり、その優劣は対抗要件(登記)で決まります。

Aが解除しても、その所有権復帰の登記をしないうちに、解除後に取引関係に立った第三者が先に登記を備えてしまえば、Aは第三者に所有権を対抗できません。
177条(物権変動の対抗問題)の原則どおり、先に登記をした者が権利を取得します。

5|その他の注意点

1 解除権の不可分性
当事者の一方が数人あるときは、契約の解除は、その全員から、または全員に対してのみ、することが必要です。
たとえば、夫婦が契約当事者として建物を賃借している場合、夫婦の一方のみに対して、賃貸人が解除の意思表示をしても、効果は生じません。
一部の者にだけ解除の効果を認めると、法律関係が複雑になるからです。

2 解除権の消滅
 催告権による消滅  
解除権が生じたというだけでは、当然に解除の効果が生じるものではなく、実際に解除するかどうかは、解除権者の意思に委ねられています。
そのため、相手方の地位は不安定となり、これを解消するため「解除するかどうか」の催告権が相手方に認められています。

したがって、解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は解除権者に対し、「相当の期間」を定めて解除するかどうかを確答するよう催告することができ、期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は消滅し、もはや契約を解除することはできません。
 時効消滅  
解除権は、解除権行使が可能であることを知った時から5年で時効消滅します(166条1項1号)

ポイントまとめ

 催告による解除
(原則)当事者の一方が債務を履行しない場合、相手方は相当期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときは契約を解除できる。
(例外)催告期間の経過時における債務の不履行が軽微であるときは、解除できない。
 催告不要の解除
①~④の場合、債権者は催告することなく直ちに解除できる。
① 全部の履行が不能のとき
② 債務者が全部の履行を拒絶する明確な意思表示があるとき
③ 残存部分のみでは契約目的を達成できないとき
④ 契約目的の達成に足りる履行の見込みがないことが明らかなとき
 契約解除に、債務者の帰責事由は不要。
…………………………
 債権者に帰責事由があれば、債権者は、契約解除できない。
 契約が解除されると、当事者双方は、互いに原状回復義務を負う。双方の義務は同時履行の関係にある。
 原状回復義務には、使用利益の償還義務も含まれる。
 契約を解除しても、解除前に対抗要件を備えた第三者の権利を害することはできない。
 解除前の第三者は解除の遡及効の問題、解除後の第三者は対抗問題である。
 解除権の行使に期間の定めがないときは、相手方は解除権者に対し、相当の期間を定めて催告をし、期間内に解除の通知を受けないときは、相手方の解除権は消滅する。

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