|公開日 2022.2.17

33年間の出題傾向不思議なことに、平成1年(1989)から平成14年(2002)の14年間、権利能力と意思能力に関する問題はまったく出題されていません。
ようやく平成15年(2003)から、未成年者・成年被後見人など「制限行為能力者」の問題の中で、「1選択肢」として出題されています。
ここをおさえよう! 得点のカギ1 意思能力の意味
2 意思無能力の効果
3 意思能力と行為能力との関係
れいちゃん01

意思能力ってどんな意味?
行為能力とどう違うの?

たくちゃん04

意思能力って、判断能力ってことなんだけど。
意思能力と行為能力との関連は正確に理解しておこうね。

1|現代は契約社会

今日、私たちが生きていくためには、さまざまな「契約」をしていかなければなりません。会社で働いて給料をもらったり(雇用契約)、通勤のために電車を利用したり(運送契約)、住むためにマンションを借りたり(賃貸借契約)、スーパーで食料品・衣料品を買ったり(売買契約)などなど、実にいろんな「契約」をしていく必要があります。

私たちの社会は、ありとあらゆる「契約」によって運営されており、現代はまさに「契約社会」なのです。私たちは「契約」をしないでは生きていけないのです。

2|意思能力の意味

権利能力だけでは不十分
前回学んだ「権利能力」は、だれでも権利者となり義務の負担者となれるという「権利・義務の帰属主体」を認めるだけであって、これだけでは生きていくことはできません。
生きていくための衣・食・住は、各人それぞれが「具体的な契約によって形成していく」という社会システムになっているのです。

 私的自治の原則

「契約社会」を支える基本理念は、「私的自治の原則」「契約自由の原則」です。
これは要するに「だれでも自由に契約を結ぶことができるよ」ということです。

「人はだれでも、自らの自由意思によって法律関係を形成することができる」わけですが、反面「自らの自由意思で形成した法律関係に拘束される」ことも意味しています。

「自らを拘束する」ことが法律上正当化されるためには、その意思決定が「正常に」なされる必要があります。
たとえば、だまされたり、強迫されたりして結んだ契約が「取り消すことができる」とされているのは、意思決定が「正常になされていない」からなのです。

「私的自治の原則」の下では、正常ではない意思決定に拘束されることは許されません

Topics

私的自治の原則は、①権利能力平等の原則や、②所有権絶対の原則とともに、民法を支配する指導原理です。

 契約には相応の能力が必要

意思能力の意味

意思能力というのは「契約の法的な意味や結果を判断する能力」をいいます。
たとえば、物を買うと自分のものになって自由に使うことができるけれども、その代わりに代金を支払う義務が生じる。
あるいは、自分の物を売ったら代金がもらえるけれども、その代わりに物の自由な使用ができなくなる、といったことなどを判断できる能力ですね。
一般には7歳から10歳程度の物事に対する理解力とされています。

民法は「意思能力」を「事理を弁識する能力」(7条、11条、15条)といっています。
試験では「意思能力」も「事理を弁識する能力」も混在して使用されています。

 意思無能力者の意思表示は無効

意思無能力の効果

自分の行為の「意味・結果を判断する意思能力」を有しない意思無能力者がした意思表示は、無効です。
たとえば、高度の認知症高齢者が別荘の売買契約書にハンコを押しても、この売買契約に何の効力もありません。
これは、意思無能力者による意思表示は、判断能力が欠けているために「正常でない意思決定」であり、したがってその法律行為(契約)に拘束されることは正当でないとして、意思無能力者保護のために確立された法理です。

これは「自明の理」とされていて条文にはありませんでしたが、新民法で「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」と明文化されました(3条の2)。

意思無能力者のした契約は、わざわざ取消しをしなくても、はじめから無効です。法律行為(おもに契約)の時に「意思能力」がなかったことを証明すれば、契約の無効を主張することができるのです。

パトモス先生講義中

契約の当事者が「意思表示をした時」に意思能力を有しなかったときは、その契約は無効だからね。

無効の意味

無効というのは、契約が成立しているようにみえても「何の効果も生じない」ということです。法律上の拘束力・強制力はまったくありません。
たとえば、売買契約が無効であるというときは、「売買代金の支払い請求」も「目的物の引渡し請求」も一切生じることはないのです。

 意思能力と行為能力の関係

意思能力は契約時に判断される
「意思能力」と次回から解説する「行為能力」は、判断能力に問題のある者を保護するという点では同じですが、その仕組みは異なっています。

「意思能力」があったかどうかは、「意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」とあるように、「1つ1つの契約ごと」に判断されます。あらかじめ「画一的に定めるものではない」のです。
したがって、意思能力は、たとえ「行為能力者」であっても、その都度、判断されます。

一方、「行為能力」があるかどうかは、未成年者・知的障害者・高齢者など、年齢や判断能力の程度に応じて、法律および裁判所の審判手続によって「制限行為能力者」として「画一的に定められる」ものです。

3|制限行為能力制度の登場

人の意思能力・判断能力にはいろいろな発達レベルがあります。
意思能力が十分には発達していない幼少者、事故や病気で意思能力が減退したり喪失した知的障害者、認知症の高齢者など「もともと意思能力が不十分な人たち」がいるわけですね。

こうした人たちは、判断能力が不十分なことにつけ込まれて、不利な契約を結ばされて財産を失う危険が多く、保護する必要があります。
もちろん、「意思表示の時に意思能力が不十分であった」ことを証明して契約を無効にできますが、契約をするたびに、いちいちそれを証明しなければならないというのでは、あまりにもわずらわしく日常生活を営んでいくこと困難です。

そこで民法は「もともと意思能力が不十分な人たちには、1人で行為をさせない」で、保護者をつけてその能力不足を補い、不利な契約の危険から保護することにしたのです。

このように「自分1人で契約することが制限されている人たち」を、法律行為をする能力が制限されているという意味で「制限行為能力者」といい、4つのタイプがあります。
一方、こうした制限のない、1人で法律行為ができる人を「行為能力者」といいます。

① 未成年者
=意思能力の発達途上にある者
② 成年被後見人
=意思能力を欠く常況にある者
③ 被保佐人
=意思能力が著しく不十分である者
④ 被補助人
=意思能力が不十分である者

次回から、それぞれの制限行為能力者の行為能力はどんなものか、みていくことにしましょう。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 意思無能力者のした契約は、はじめから無効
取消しの意思表示をすることによって無効となるのではない。
「取り消せば、当該契約を無効にできる」という記述は誤りです。

ポイントまとめ

 意思能力があるかどうかは、契約ごとに判断される。
 意思能力を欠いた者の契約は、無効である。
 意思能力がもともと不十分な者は、審判手続を経て「制限行為能力者」として保護される。
 制限行為能力者には、①未成年者、②成年被後見人、③被保佐人、④被補助人の4タイプがある。

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