|公開日 2022.5.14

ここをおさえよう! 得点のカギ1 2つの居住権の成立要件
2 2つの居住権の性質・内容
3 2つの居住権の違い
れいちゃん01

今回、新設されたテーマですね。
どんな狙いがあるの?

たくちゃん02

残された配偶者の居住場所を確保するという点だね。
新民法で明文化されたテーマで、早速、令和3年(2021)に出題されたんだ。

1|居住権の趣旨

残された配偶者の居住確保
「配偶者居住権」および「配偶者短期居住権」は、配偶者の居住確保のための権利です。改正相続法によって新設されました。
高齢化社会が進展してきたことに伴い、配偶者の一方が死亡したときに、残された配偶者(以下、配偶者)もまた「高齢」であることが多く、とくに住み慣れた住居に居住する権利を保護する必要性がより高まっています。

改正前民法では、配偶者が「遺産分割により居住建物を取得」すると、他の財産の取得分が少なくなり生活の不安があったのですが、居住権が新設されたことにより、配偶者は自宅での居住を継続しながら、預貯金などその他の財産も取得できるようになったわけです。
配偶者の居住権は「高齢化社会に対応した新しい権利」です。

配偶者の居住の権利

・配偶者居住権(=長期の居住権)
・配偶者短期居住権

2|配偶者居住権

意 味

配偶者居住権は、配偶者が「相続開始時に被相続人の所有建物」に居住していた場合、一定の要件の下に、終身または一定期間、引き続き無償でその居住建物に居住できる権利です。

1 配偶者居住権の取得要件

取得要件

配偶者居住権を取得するには、次の要件が必要です。
 被相続人所有の建物であること 
 配偶者が「相続開始の時に居住していた」こと 
「被相続人による遺贈」または「共同相続人間の遺産分割」によること 

以下、ポイントを確認しておきましょう。

 被相続人所有の建物
被相続人所有の建物というのは、
 被相続人が所有していた建物、または、
 被相続人が配偶者と共有していた建物、をいいます。

第三者との「共有建物」は含まない
被相続人が第三者と共有していた建物には、配偶者居住権は成立しません。第三者の共有持分(所有権)保護のためです。

賃貸借も含まない
被相続人が、居住建物を賃借または使用貸借していた場合も「被相続人所有の建物」にはあたらず、配偶者居住権は成立しません。

 配偶者が相続開始時に居住していたこと
配偶者が、上記建物に「相続開始の時に居住していた」ことが必要です。必ずしも「無償で」居住していることは要件ではありません。
配偶者には「内縁の配偶者」や「事実上の夫婦」は含まれません。

 取得原因
配偶者居住権の取得原因は、次のとおりです。
 被相続人の遺贈による取得
被相続人による遺贈によって、配偶者居住権が設定された場合です。この場合には、特別受益の「持戻し免除」の意思表示がされたものと推定されます。

 遺産分割協議による取得
共同相続人の間で「遺産分割協議」が成立し、配偶者が配偶者居住権を取得するものとされた場合です。協議が成立しない場合には、家庭裁判所の「遺産分割審判」で配偶者居住権の取得が定められます。

 死因贈与による取得
死因贈与(契約であるため配偶者の同意を要する)によって、配偶者居住権が取得されます。

パトモス先生講義中

配偶者居住権の取得原因は、遺贈死因贈与遺産分割協議(または遺産分割審判)だよ。

2 配偶者居住権の性質・内容

配偶者居住権は、配偶者個人の居住を保護する権利なので、次の性質・内容が導かれます。

譲渡できない
配偶者居住権は、譲渡することができません。他のすべての相続人の承諾を得ても、譲渡できないのです。

相続できない
配偶者居住権は、配偶者の死亡によって当然に消滅します。
配偶者居住権は「配偶者その人」の居住の権利を保護するために政策的に設けられた権利なので、配偶者が死亡すればその必要がなくなるからです。配偶者の「相続人」が相続することはありません。

存続期間
原則として「配偶者の終身の間」存続します。配偶者が死亡するまで、居住することができます。

ただし、「遺産分割協議」「遺言」、または家庭裁判所の「遺産分割審判」で別段の定めをしたときは、それより「短い期間」を定めることができます。
たとえば、遺産分割協議で存続期間を20年と定めた場合には、20年の「期間が満了した時」に配偶者居住権は消滅します。延長や更新はできません。

配偶者居住権の対抗要件
居住建物の所有者は、配偶者居住権を取得した配偶者に対し、配偶者居住権の「設定の登記を備えさせる義務」を負います。
配偶者は、配偶者居住権の登記がなければ、居住建物の所有権を譲り受けた譲受人や、居住建物を差し押さえた債権者等の「第三者に対抗する」ことができません。

使用収益の範囲
配偶者は「居住していた建物の全部」について使用収益することができます。従前に居住の用に供していなかった部分についても、居住の用に供することができます。

配偶者居住権の取得には「居住していた」ことが必要ですが、「建物全体」を居住の用に供していたことまでは要件とされず、「一部」しか使用していない場合でも、配偶者居住権は「建物全体」について行使できます。

用法遵守・善管注意義務
配偶者は、従前の用法に従い(用法遵守義務)、善良な管理者としての注意(善管注意義務)をもって、居住建物の使用収益をしなければなりません。

費用の負担
配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担します。
その他の費用(必要費および有益費)を支出したときは、建物所有者に償還請求できます。

 配偶者居住権の消滅事由

主な消滅事由は、次のとおりです。

 配偶者の死亡
 存続期間の満了
 配偶者居住権の消滅請求
これは「建物所有者」による配偶者居住権の消滅請求があった場合です。
配偶者が、用法遵守義務・善管注意義務に違反した場合や、無断で増・改築したり、無断で第三者に使用収益させた場合には、建物所有者は、相当の期間を定めて是正の催告をし、是正されないときは、配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができます。
 居住建物の滅失・使用収益の不能

3|配偶者短期居住権

意 味

配偶者短期居住権(短期居住権)は、被相続人の所有建物に、配偶者が相続開始時に、無償で居住していた場合、その居住建物の「所有権」を取得した居住建物取得者に対して、一定期間、その居住建物を無償で使用できる権利をいいます。

趣 旨

相続が開始しても、居住建物の権利関係がすぐに確定するものではありません。にもかかわらず、被相続人の所有建物に居住していた配偶者が、直ちにその居住建物から退去しなければならないとすると、精神的・肉体的に大きな負担となります。
遺産分割等により「居住建物の権利関係が確定するまでの一定期間」は、配偶者の居住継続を確保する必要があります。

そこで、新民法は「被相続人の意思」にかかわらず、配偶者の短期的な居住を保護するようにしたのです。

 短期居住権の取得要件

取得要件

短期居住権は、「相続関係者の意思表示とは関係なく」法律上当然に取得されます。
配偶者居住権のように、被相続人による遺贈や死因贈与、あるいは遺産分割などの法律行為によって取得されるのではなく、相続関係者の意思表示とは関係なく取得されます。

短期居住権の取得要件は、次のとおりです。
 被相続人所有の建物であること
 配偶者が相続開始時に無償で居住していたこと

主なポイントを確認しておきましょう。

1 被相続人所有の建物
「所有の建物」というのは、被相続人が①所有していたり、②配偶者と共有していた場合です。配偶者居住権とは異なり、③第三者との共有建物でも短期居住権を取得できます。

2 配偶者
短期居住権を取得できるのは、法律婚の配偶者のみです。
内縁や事実婚の配偶者は取得できません。

3 無償での居住
配偶者が相続開始時に無償で居住していたこと。相続開始時に「被相続人と同居」している必要はありません。

居住は、現に建物の全部または一部を生活の本拠としていることが必要です。

 短期居住権の性質・内容

法律上当然に成立する
相続開始の時に無償で居住していれば、法律上、当然に成立します。

債権である
短期居住権は「物権」ではありません。居住建物の所有権を取得した「居住建物取得者」に対する債権(法定の建物利用権)です。

譲渡・相続できない
短期居住権は、配偶者自身の居住を保護する権利なので、譲渡・相続はできません。

収益権限はない
居住建物の使用は認められますが、収益権限はありません。

無償で全部使用できる
ただし、配偶者が「居住建物の一部」の使用にとどまっていれば、居住権もその部分に限られます。

用法遵守・善管注意義務
配偶者居住権の義務と同じです。

第三者対抗力がない
短期居住権は、居住建物の所有者に対する債権であって、第三者対抗要件は認められていません。
居住建物の取得者は、その建物を第三者に譲渡するなどして配偶者による居住建物の使用を妨げてはならないのですが、取得者がこの義務に違反して第三者に譲渡した場合でも、原則として配偶者は、居住建物の新所有者に短期居住権を対抗することはできません。

無断転貸の禁止
配偶者が、居住建物を第三者に使用させるためには、居住建物取得者の承諾を得なければならず、無断転貸は禁止されます。

 存続期間

居住できる期間は、次のとおりです。

遺産分割をする場合
またはの「いずれか遅い日」まで存続します。
 遺産分割により居住建物の帰属が確定した日
 相続開始の時から6か月を経過した日
相続開始後すぐに遺産分割が成立し、建物の相続人が確定しても、直ちに出ていく必要はなく、相続開始から6か月間は住むことができます。

遺産分割以外の場合
配偶者以外の者が、遺贈・死因贈与により居住建物の所有権を取得したときや、配偶者が相続放棄をしたときなどです。この場合、建物取得者はいつでも短期居住権の消滅の申入れをすることができ、申入れの日から6か月を経過する日まで短期居住権が存続します。

 短期居住権の消滅事由

短期居住権は、以下の事由により消滅します。配偶者居住権と共通している事由もありますが、主なものをみておきましょう。

 配偶者の死亡
 期間満了
 配偶者居住権の取得
短期居住権を有していた配偶者が、配偶者居住権を取得した場合は、短期居住権による保護は不要となるため、短期居住権は消滅します。
 短期居住権の消滅請求
配偶者が、用法遵守義務・善管注意義務に違反した場合や、無断で第三者に使用収益させた場合には、居住建物取得者は、配偶者に対する意思表示によって短期居住権を消滅させることができます。

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