|公開日 2022.5.03

33年間の出題傾向|33年間で19問の出題、頻出テーマです。
内訳は、一般原則2問、転貸借8問、敷金5問、総合4問となっています。
判決文問題は3問で、転貸借(平27年|2015)、通常損耗(平30年|2018)、そして直近の令和3年(2021)は、敷金でした。
賃貸借は、基本から応用まで、広い範囲から出題されおり、また、売買と同じように多くの改正がありました。
ここをおさえよう! 得点のカギ1 賃貸人の義務
2 賃借人の義務
れいちゃん01

賃貸借はどんなのが出るの?

たくちゃん02

転貸借や敷金が多いね。
でも賃借人の義務などの基本項目も無視してはダメだよ。
難しい選択肢が多くあっても、その中の1選択肢(基本項目)を知っていたおかげで正解できた、なんてことも珍しくないからね。

1|賃貸借の意味・性質・存続期間

意 味

賃貸借(契約)というのは、賃料を払って家や土地を借りる契約をいいます。
家賃を払ってマンションや事務所を借りる土地代を払って店舗運営のために土地を借りるというように、他人の土地・建物を借りて使用収益し、その対価として賃料(地代や家賃)を支払い、契約が終われば賃借物を返還するという契約です。
賃貸マンションに入居している人は、イメージしやすいのではないでしょうか。

性 質

当事者の合意で成立する「諾成契約」ですが、賃料(対価)を支払って借りる、つまり有償契約という点が、無償(無料・ただ)で借りる「使用貸借」と根本的に違います。

借地借家法との関係
建物の賃貸借をしたり、「建物の所有目的」で土地の賃貸借をする場合には、借地借家法が民法に優先して適用されます。
これは、土地・建物の賃貸借の場合、弱い立場に立たされる(家賃の値上げが嫌なら出て行ってくれ、みたいに生活や経済活動の基盤を失うおそれがある)借主の保護としては、民法では不十分なので(民法は、貸主・借主を「対等の立場」にあるものと想定して契約自由の原則に委ねている)、借地借家法により、借主が不当に不利にならないよう特別に規定して借主をより強く保護しているわけです。

ただ、借主保護とは関係のない事項については、依然として民法の規定が適用されます。

  • 民法で定める賃貸借 ← 原則規定
  • 借地借家法の賃貸借 ← 借主保護のための特別規定
存続期間

賃貸借の存続期間は、50年を超えることができません。
契約でこれより長い期間を定めても、50年とされます。
存続期間は更新できますが、更新の時から、やはり50年を超えることはできません。
最長で50年ですから相当長いですね。改正前は「20年」でしたからね。

この背景には、太陽光パネル設置のための土地賃借権などに配慮して、存続期間の長期化が図られたり、建物では耐震・防火などの建築技術が発達して耐用年数が飛躍的に伸びたという事情があるのです。

2|賃貸人の義務

賃貸人の主な義務は、3つあります。
 使用収益させる義務
 修繕義務
 費用償還義務
以下、確認しておきましょう。

 使用収益させる義務

賃貸人は、賃借人に対して賃借物を使用収益させる義務を負います。これこそが、賃貸人の「基本的な義務」です。
この義務に基づいて、賃貸人は賃借物を「引き渡すべき義務」を負い、使用収益に必要な「修繕義務」を負い、また第三者が賃借物の使用収益を妨害するときは、その「妨害を排除すべき義務」を負う、などの義務が生じます。

 修繕義務

賃貸人の修繕義務
賃貸人は、賃借人に賃借物を使用収益させる義務があるので、使用収益に障害が生じれば必要な修繕をする義務を負います。
したがって、たとえば、建物が老朽化してきたため、賃貸人が保存に必要な修繕をする場合には、修繕工事のため使用収益に支障が生じても、賃借人は修繕行為を拒むことはできません。
ただし、修繕が「賃借人の責めに帰すべき事由」によって必要となったとき、たとえば不注意で窓ガラスを壊したようなときは、賃貸人に修繕義務は生じません。賃借人に帰責事由(故意・過失・信義則違反)があるのに、賃貸人に修繕義務を課すのは公平ではないからです。

賃貸人が修繕義務を履行しない場合は、その程度に応じて、賃借人は賃料支払いを拒むことができますが、全額の支払拒絶はできません。

なお、賃貸人が、賃借人の意思に反して「保存行為」をしようとする場合に、賃借人は、このために賃借の目的を達することができなくなるときは、契約解除ができます。

賃借人の修繕権限
賃借物の「所有権」は賃貸人にあり、その修繕は、所有権に影響を及ぼすため、賃借人が無断で修繕することはできません。
しかし、次の場合には、賃借人も修繕できるようになりました(607条の2)

賃貸人が修繕しないとき
「修繕が必要である旨」を、賃借人が賃貸人に通知し、または賃貸人がその旨を知ったのに、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
この通知は「賃借物が修繕を要するときは……、賃借人は、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない」(615条)という賃借人の通知義務のことです。

急迫の事情があるとき
賃貸人の修繕をまっていたのでは、賃借物の損傷が拡大して使用収益できなくなるおそれがあるからです。台風が過ぎて「雨漏り」がひどくなったときなどですね。

パトモス先生講義中

賃借人も修繕できることが明文化されたよ。

 費用償還義務

賃貸人は、賃借人が支出した必要費・有益費などの費用を償還しなければなりません。

必要費は直ちに
賃借人が支出した修繕費(故障したトイレの修理費など)のように、そもそも「賃貸人が負担すべき」必要費を賃借人が支出したときは、賃貸人に対し「賃貸借の終了前」でも、直ちに費用全額の償還を請求することができます。

有益費は賃貸借終了時に
借家の前の通路をコンクリート舗装するように、賃借人が、賃借物を改良するなどの有益費を支出したときは、賃貸借終了の時に、賃借物の価格の増加が現存する場合に限り、賃貸人は、その費用か増加額のどちらかを償還しなければなりません。

この場合、賃貸人の請求があれば、裁判所は、償還について相当の期限を猶予することができます。

期間制限
賃借人が有する必要費・有益費などの費用償還請求権は、賃借物の返還時から1年以内に行使しなければなりません。

3|賃借人の義務

賃借人の主な義務は、次のとおりです。
 賃料支払義務
 用法義務・保管義務
 原状回復義務
 付属物収去義務
以下、確認しておきましょう。

 賃料支払義務

賃借人は、使用収益の対価として賃料を支払わなければなりません。賃料支払義務は、賃借人の「義務の核心」をなすものです。支払時期は、特約がなければ、後払いです。

 一部滅失による賃料減額と解除

一部滅失による賃料の当然減額
「賃借物の一部」が、滅失その他の事由により使用収益できなくなった場合に、それが「賃借人の責めに帰することができない事由」(台風などによる損傷)によるものであるときは、賃料は「使用収益ができなくなった部分の割合に応じて」当然に減額されます。

賃料は、使用収益の対価として日々発生しているので、一部が使用できなくなっ場合には、賃料も当然にその部分の割合に応じて発生しないと考えられるからです。

一部滅失による契約解除
同様に、「賃借物の一部」が滅失その他の事由により使用収益できなくなった場合、残存部分だけでは「賃借目的を達成できない」ときは、賃借人は契約を解除することができます。目的を達成できない以上、賃借人に「帰責事由があるかどうか」に関係なく解除が認められます。

パトモス先生講義中

一部滅失による減額は、賃借人に帰責事由があれば認められないけれど、契約解除は、帰責事由があってもできるからね。

 用法義務・保管義務ほか

用法遵守義務
賃借人は、契約や賃借物の性質によって定まった用法に従って、賃借物を使用収益しなければなりません。

善管注意義務
また、「賃借物を返還するまで」善良な管理者の注意をもって賃借物を保管する義務を負います。

無断譲渡等をしない義務
賃貸借は、相互の信頼関係を基礎とする契約なので無断で賃借物を転貸したり、賃借権を譲渡することは、原則として許されません。詳細は[賃貸借2/転貸借]にて記述。

 原状回復義務

賃貸借が終了すれば、賃借人は賃借物を返還しなければならず、また、賃借物に損傷が生じた場合には、原状回復義務が生じます。

原 則

賃借物を受け取った後に、これに生じた損傷がある場合には、賃借人は「賃貸借終了時の賃借物の返還」に際して、その損傷を原状に復する義務を負います。

例 外

ただし、次の場合にはこの義務はありません。

通常損耗や経年変化による損傷
これらは、原状回復の対象外です。
通常損耗というのは、「社会通念上」通常の使用収益により生じる賃借物の劣化・価値の減少をいいます。「通常損耗」や「経年変化による損傷」は、賃貸借の本質上当然に予定されており、通常は賃料に含まれているので、賃借人に原状回復義務を負わせることはできません。

したがって、賃借人に「通常損耗についての原状回復義務」を負担させるには、その旨の特約(通常損耗補修特約)明確に合意されていることが必要です(最判平17.12.16)。  

損傷が賃借人の帰責事由でない場合
損傷が「賃借人の責めに帰することができない事由」によるものであるときは、たとえば、隣家の大樹が折れて賃借建物の屋根を損傷したなどの場合には、原状回復義務はありません。

 付属物の収去義務

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに「付属させた物」を収去する義務を負います。
収去義務は「原状回復義務の一態様」ですが、損傷に関する原状回復義務と違い、帰責事由がなくても、賃貸人の収去請求に応じなければなりません。

4|賃借人による妨害停止請求等

賃借権は債権であるため、もともと排他性はありません。
しかし判例は、賃借人の賃借権を保護するため対抗要件を備えた「不動産賃借権」(債権)については物権的効力を有するものとして、これを認めており(最判昭30.4.5)、新民法もこれを明文化しました(605条の4)

不動産の賃借人が対抗要件を備えた場合には、次の権利が認められています。

妨害停止請求権
第三者が、賃借不動産の占有を妨害しているときは、第三者に対して、賃借権に基づき直接に妨害停止を請求することができます(最判昭28.12.18)。ただし「妨害予防請求権」までは認められていません。

不動産返還請求権
第三者が、賃借不動産を不法に占有しているときは、第三者に対して、その返還を請求することができます。

ポイントまとめ

 賃貸借の存続期間は50年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めても50年とされ、更新しても、更新の時から50年を超えられない。
 賃貸人が保存に必要な行為をするときは、賃借人はこれを拒否できない。
 修繕の必要が、賃借人の帰責事由によるときは、賃貸人に修繕義務はない。
 賃貸人が必要な修繕をしないとき、または急迫の事情があるときは、賃借人に修繕権限が認められる。
 賃借人が必要費を支出したときは、賃貸借の終了前でも直ちにその償還を請求できる。
…………………………
 「賃借物の一部」が賃借人の帰責事由によらずに滅失した場合には、賃料は「使用収益できなくなった部分の割合に応じて」当然に減額され、また残存部分だけでは賃借目的を達成できないときは、契約解除ができる。
 賃借人は、賃借物をその用法に従って使用収益しなければならず(用法遵守義務)、また賃借物返還までは善管注意義務をもって保管しなければならない。
 賃貸借が終了すれば、賃借人は原則として、賃借物の受領後に生じた損傷について原状回復義務を負う。
 通常損耗や経年変化による損傷、および賃借人に帰責事由がない損傷については、原状回復義務はない。
10 第三者が、賃借不動産の占有を妨害したり、不法占有しているときは、対抗要件を備えた賃借人は、妨害停止および返還請求ができる。

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