|公開日 2022.04.12

ここをおさえよう! 得点のカギ1 危険の移転
2 買主の代金支払拒絶

1|滅失・損傷に関する危険の移転

意 味

「危険の移転」というのは、目的物の引渡しがあった以後に、当事者双方の責めに帰することができない事由(土石流などの自然災害等)によって滅失・損傷した場合、買主は、売主に対し、権利主張(追完請求・代金減額請求・損害賠償・契約解除)ができるのか、あるいは、売主は、買主に代金全額の支払いを求めることができるのか、という問題です。

いいかえれば、引渡し後の危険(損失)はだれが負うのかという問題です。

原 則

土地・建物の滅失・損傷に関する危険は、その引渡しによって「売主から買主に移転」します。これが原則です。

つまり、買主に土地・建物が引き渡された後に、双方の責めに帰することができない事由によって滅失・損傷した場合は、買主は、滅失・損傷を理由として、上記の諸権利を行使することはできず、また、代金の支払いを拒むこともできません(567条1項)

買主が引渡しを受けた以上、土地・建物は買主の支配下に入っており、その後の損失は買主が甘受すべきだからです。

「引渡しまで」は、売主(債務者)が負担していた滅失・損傷の危険(危険負担)は、「引渡し」によって買主(債権者)に移転するわけです。

考えてみれば、当然な気もしますよね。
「引渡しを受けて」もう住んでいるわけですから、自然災害で倒壊したからといって、残りの代金は支払わなくていいというのは、あまりに不公平ですね。

例 外

ただし「引渡し後」の滅失・損傷が、売主の責めに帰すべき事由による場合には、買主は上記の諸権利を行使することができます。

履行の提供があったときも同じ
「引渡し」を終えていなくても、履行の提供をしていれば、同様の扱いがなされます。

売主が「履行を提供」をしたにもかかわらず、買主が受領を拒んでいる受領遅滞の場合に、「履行の提供」以後に、「当事者双方の責めに帰することができない事由」により滅失・損傷した危険は、買主がそのリスクを負い、履行の追完請求、代金の減額請求等の諸権利を行使することはできず、また、代金の支払いを拒むことはできません。

パトモス先生講義中

買主の受領遅滞以後に、当事者双方に帰責事由がなく目的物が滅失等した場合は、買主は諸権利を行使できないよ。

2|抵当権との関係

1 抵当権がある場合の費用償還請求
買い受けた不動産に「契約の内容に適合しない」抵当権や質権等があった場合に、買主が費用を支出してその不動産の所有権を保存(抵当権消滅請求または第三者弁済など)したときは、売主にその費用の償還を請求することができます。

2 抵当権登記がある場合の代金支払拒絶
買い受けた不動産に「契約の内容に適合しない」抵当権の登記があるとき(先取特権・不動産質権も同じ)は、買主は「抵当権消滅請求の手続が終わる」まで、代金の支払いを拒むことができます。

この場合、買主がいつまでも抵当権消滅請求をしないで支払いを拒むことも考えられるため、この手続きが遅れないよう、売主は、買主に対し「遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨」を請求することができます。

3|そのほかの論点

1 代金支払拒絶──権利を主張する者
建物を購入した買主が代金を支払う前に、第三者が現れて「建物の所有者は私だから、返してほしい」と主張してきたというように、目的物について、権利を主張する者があるなどにより、買主が買い受けた権利の全部または一部を取得することができず、または失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部または一部の支払いを拒むことができます。

2 担保責任を負わない旨の特約

原 則

契約不適合を理由とする担保責任に関する民法の規定は任意規定なので、これと異なる合意、たとえば「売主は、担保責任を負わない旨」の特約も、原則として有効です。

例 外

しかし、以下のような例外があります。

 売主は、契約不適合を知りながら告げなかった事実については、特約があっても、契約不適合責任を免れることはできません。
 売主は、自ら第三者のために権利を設定・譲渡した場合に、これによって契約不適合を生じたときは、特約があっても、契約不適合責任を免れることはできません。

ポイントまとめ

 土地・建物の引渡し後に「当事者双方の責めに帰することができない事由」によって滅失・損傷したときは、買主は、売主に対して契約不適合責任の追及をすることはできず、代金全額の支払いを拒むことができない。
 「引渡し」を終えていなくても、履行の提供があった場合も同様である。
 買い受けた不動産に、契約不適合の抵当権登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、代金支払いを拒むことができる。
 買い受けた不動産に、契約不適合の抵当権等があった場合に、買主の費用でその所有権を保存したときは、売主に費用償還請求ができる。
 担保責任を負わない旨の特約も有効だが、売主は、知りながら告げなかった事実については、責任を免れることができない。

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