|公開日 2017.6.18
|更新日 2019.5.08

【平成14年 問6】の問題です。

【問 題】 Aは、Bに対する貸付金債権の担保のために、当該貸付金債権額にほぼ見合う評価額を有するB所有の更地である甲土地に抵当権を設定し、その旨の登記をした。その後、Bはこの土地上に乙建物を築造し、自己所有とした。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

 Aは、Bに対し、乙建物の築造行為は、甲土地に対するAの抵当権を侵害する行為であるとして、乙建物の収去を求めることができる。

 Bが、甲土地及び乙建物の双方につき、Cのために抵当権を設定して、その旨の登記をした後(甲土地についてはAの後順位)、Aの抵当権が実行されるとき、乙建物のために法定地上権が成立する。

 Bが、乙建物築造後、甲土地についてのみ、Dのために抵当権を設定して、その旨の登記をした場合(甲土地についてはAの後順位)、Aの抵当権及び被担保債権が存続している状態で、Dの抵当権が実行されるとき、乙建物のために法定地上権が成立する。

 Aは、乙建物に抵当権を設定していなくても、甲土地とともに乙建物を競売することができるが、優先弁済権は甲土地の代金についてのみ行使できる。


 解説&正解 

更地に抵当権が設定された後に、乙建物が建てられたという点がポイント。
基本的な論点ですからここでシッカリ理解しておきましょう。

 選択肢1 
(Aは、Bに対する貸付金債権の担保のために、当該貸付金債権額にほぼ見合う評価額を有するB所有の更地である甲土地に抵当権を設定し、その旨の登記をした。その後、Bはこの土地上に乙建物を築造し、自己所有とした。)この場合、Aは、Bに対し、乙建物の築造行為は、甲土地に対するAの抵当権を侵害する行為であるとして、乙建物の収去を求めることができる。


 解 説 
抵当地上における建物の築造行為は土地の抵当権侵害とはいえず、建物の収去を求めることはできません。
そもそも抵当権は、抵当物が有する交換価値(金銭に換算した価格)を把握するだけで、抵当物自体は抵当権設定者(債務者や物上保証人)のもとに置いて、自由にその使用・収益を認める権利です。

更地に建物が建つと土地価格が下がることもありますが、反面、大きな収益を生むリゾートホテルなどが建つと土地価格は上昇しますので、築造行為が直ちに侵害行為になるとはいえません。
本肢は誤った記述です。

[論点] 建物築造と土地抵当権の侵害
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 選択肢2 
(Aは、Bに対する貸付金債権の担保のために、当該貸付金債権額にほぼ見合う評価額を有するB所有の更地である甲土地に抵当権を設定し、その旨の登記をした。その後、Bはこの土地上に乙建物を築造し、自己所有とした。)この場合、Bが、甲土地及び乙建物の双方につき、Cのために抵当権を設定して、その旨の登記をした後(甲土地についてはAの後順位)、Aの抵当権が実行されるとき、乙建物のために法定地上権が成立する。


 解 説 
抵当権者Aの抵当権が実行されても、乙建物のために法定地上権は成立しません。
建物のために法定地上権が成立するには、抵当権設定当時に建物が存在していることが絶対に必要で、これは判例の一貫した態度。
この時すでに存在していた建物を保護することこそが、法定地上権の趣旨なのです。

抵当権者は、土地に抵当権を設定する時に「建物のない土地」(更地)として担保価値を評価しており、後になって建物のために法定地上権を認め土地使用を制限することは、土地の交換価値を下落させ、抵当権者の利益を著しく害することになるのです。
本肢は誤った記述です。

※ 判例(最判昭51.2.27)は、抵当権者が建物築造を事前に承認していても、法定地上権は成立しないとしています。

[論点] 建物の存在時期
[判例] 最判昭36.2.10
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 選択肢3 
(Aは、Bに対する貸付金債権の担保のために、当該貸付金債権額にほぼ見合う評価額を有するB所有の更地である甲土地に抵当権を設定し、その旨の登記をした。その後、Bはこの土地上に乙建物を築造し、自己所有とした。)この場合において、Bが、乙建物築造後、甲土地についてのみ、Dのために抵当権を設定して、その旨の登記をした場合(甲土地についてはAの後順位)、Aの抵当権及び被担保債権が存続している状態で、Dの抵当権が実行されるとき、乙建物のために法定地上権が成立する。


 解 説 
長文で分かりにくい選択肢ですね。本試験ではジックリ読んでいる時間はありませんから、早く解くというスキルも必要です。

「更地」にAの一番抵当権を設定した後に、Dの後順位抵当権設定前に乙建物が築造され、その後、Dの抵当権が実行されても、乙建物のために法定地上権は成立しません。

抵当権が実行されると、抵当不動産上のすべての抵当権(一番抵当権、後順位抵当権)一括して清算されるのですが、このとき建物のために法定地上権が成立するかどうかは、一番抵当権設定時が基準とされます。

一番抵当権設定時に建物が存在していない以上、一番抵当権者は「建物のない土地」つまり法定地上権による制約がない土地として担保価値を高く評価しているので、その後存在した建物のために法定地上権を認めると、この担保価値を著しく害することになってしまいます。
本肢は誤った記述です。

[論点] 建物の存在時期
[判例] 大判昭11.12.15
………………………………………

 選択肢4 
(Aは、Bに対する貸付金債権の担保のために、当該貸付金債権額にほぼ見合う評価額を有するB所有の更地である甲土地に抵当権を設定し、その旨の登記をした。その後、Bはこの土地上に乙建物を築造し、自己所有とした。)この場合、Aは、乙建物に抵当権を設定していなくても、甲土地とともに乙建物を競売することができるが、優先弁済権は甲土地の代金についてのみ行使できる。


 解 説 
甲地に抵当権を設定した後に、債務者Bが乙建物を建てた場合、抵当権者Aは、乙建物に抵当権を設定していなくても、甲地と乙建物を一括競売することができます。
これは無用に建物を取り壊す不経済を回避するための制度です。

ただし、抵当権は甲地だけに設定されていますので、乙建物の売却代金から優先弁済を受けることはできません。
本肢は正しい記述です。

[論点] 抵当地と建物の一括競売


以上より、正解は[4]

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 読むだけ! 重要条文 

 抵当権の内容|369条 
1 抵当権者は、債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

 法定地上権|388条 
土地およびその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地または建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす(以下略)

 抵当地上の建物の競売|389条 
1 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。


(この項終わり)