|公開日 2017.06.15
|更新日 2018.10.23


【平成10年 問2】の問題です。
これとほぼ同じ問題が、平成27年の問4に出題されています。
これをみると、テーマによっては過去問も10年間では不十分で、かなり前にさかのぼって練習したほうが万全といえますね。

【問 題】 所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Bの父が15年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有し、Bが相続によりその占有を承継した場合でも、B自身がその後5年間占有しただけでは、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。

 Bが2年間自己占有し、引き続き18年間Cに賃貸していた場合には、Bに所有の意思があっても、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。

 DがBの取得時効完成前にAから甲土地を買い受けた場合には、Dの登記がBの取得時効完成の前であると後であるとを問わず、Bは、登記がなくても、時効による甲土地の所有権の取得をDに対抗することができる。

 取得時効による所有権の取得は、原始取得であるが、甲土地が農地である場合には、Bは、農地法に基づく許可を受けたときに限り、時効によって甲土地の所有権を取得することができる。


[解説&正解]

【選択肢1】
(所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効について)、Bの父が15年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有し、Bが相続によりその占有を承継した場合でも、B自身がその後5年間占有しただけでは、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。

(解 説)
占有は、売買や贈与だけでなく「相続」によっても承継されますが、承継する場合には、承継人は、その選択に従い、
① 自己の占有に前占有者の占有をあわせて主張してもいいし、または──、
自ら新しく占有を取得していることから、
② 自己の占有だけを主張することもできます。

したがって相続人Bは、父の15年間の占有と、自身の5年間の占有をあわせて、20年間で所有権を時効取得することができます。
本肢は誤った記述です。

※ 前占有者の占有をあわせて主張する場合には、前占有者の瑕疵(悪意または過失)も承継しますから、父が悪意であれば、Bは悪意の承継人として20年が必要となるのです。

[テーマ] 相続と占有の承継
[条 文] 187条
[判 例] 最判昭37.5.18

………………………………………

【選択肢2】
(所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効について)、Bが2年間自己占有し、引き続き18年間Cに賃貸していた場合には、Bに所有の意思があっても、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができない。

(解 説)
自主占有、他主占有、自己占有、代理占有など、占有の諸形態の理解を問う問題です。

所有権を取得するための占有は、「所有の意思」をもってする占有、つまり自主占有であることを要しますが、Bに「所有の意思」があれば、①自分が直接に所持する自己占有でも、②賃貸して賃借人に所持させる代理占有でも、自主占有であることに変わりはありません。
代理占有させていても、自主占有は継続しているのです。

したがって、Bは2年間の自己占有と、賃借人Cに賃貸して占有させた18年間の代理占有をあわせて、20年間で甲土地の所有権を時効取得することができます。
本肢は誤った記述です。

[テーマ] 自主占有──自己占有と代理占有
[条 文] 181条

………………………………………

【選択肢3】
(所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効について)、DがBの取得時効完成前にAから甲土地を買い受けた場合には、Dの登記がBの取得時効完成の前であると後であるとを問わず、Bは、登記がなくても、時効による甲土地の所有権の取得をDに対抗することができる。

(解 説)
よく出題される論点です。

取得時効と登記

Bの②取得時効完成前に、甲土地が①A→Dに譲渡された場合、占有者Bと新所有者Dは物権変動の当事者と同視されるので、Bは、時効が完成すれば、登記がなくても(あたかもAに主張できたように)、所有権の時効取得をDに対抗することができます。

当事者Dに登記があろうとなかろうと、つまり、Dの登記が、Bの時効完成の前であろうと後であろうと、Bの時効取得が妨げられることはありません。
したがって、正しい記述です。

※ そもそも物権変動の当事者間では、登記は権利の取得・変動の要件とはなりません。
登記が問題となるのは第三者との対抗関係においてです。

[テーマ] 取得時効と登記──時効完成前
[判 例] 最判昭42.7.21

………………………………………

【選択肢4】
(所有の意思をもって、平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効について)、取得時効による所有権の取得は、原始取得であるが、甲土地が農地である場合には、Bは、農地法に基づく許可を受けたときに限り、時効によって甲土地の所有権を取得することができる。

(解 説)
甲土地が農地であっても、Bは、農地法の許可を受けなくても、甲土地の所有権を時効取得することができます。

農地法3条の許可を必要とするのは、農地等について新たに所有権を移転したり、使用収益権を設定・移転する行為、つまり承継取得に限られます。

しかし、時効による所有権取得は原始取得であって、前主から所有権を移転・承継する行為、つまり承継取得ではないので、農地法の許可に左右されることはあり得ません。
本肢は誤った記述です。

[テーマ] 所有権の取得時効は原始取得
[判 例] 最判昭50.9.25

以上より、正解は[3]

………………………………………

[しっかり読んでおこう重要条文]

*162条(所有権の取得時効)
1 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

*181条(代理占有)
占有権は、代理人によって取得することができる。

*187条(占有の承継)
1 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、または自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する

[もう1歩前進!──時効完成後の登記]

【選択肢3】に関連して、Bの取得時効完成後に、A→Dへの譲渡があった場合は、A→Bの時効取得と二重譲渡の関係に立つため、B・Dのどちらか先に対抗要件(登記)を備えた者が、所有権を確定的に取得します。

時効取得者Bと時効完成後の第三者Dとの権利関係は、対抗要件(登記)の先後によって決定されるので(177条)、Bが取得時効により所有権を取得しても、その登記をしなければ、時効完成後に登記を備えた第三者には所有権を対抗できないのです。

時効完成前と完成後では、異なることに十分注意してください。


(この項終わり)