|公開日 2017.6.16
|更新日 2019.5.03

【平成12年 問2】の問題です。

【問 題】 Aは、BのCに対する金銭債務を担保するため、A所有の土地に抵当権を設定し、物上保証人となった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

 Aは、この金銭債務の消滅時効を援用することができる。

 Aが、Cに対し、この金銭債務が存在することを時効期間の経過前に承認した場合、当該債務の消滅時効の中断の効力が生じる。

 Bが、Cに対し、この金銭債務が存在することを時効期間の経過前に承認した場合、Aは、当該債務の消滅時効の中断の効力を否定することができない。

 CからAに対する不動産競売の申立てがされた場合、競売開始決定の正本がBに送達された時に、この金銭債務の消滅時効の中断の効力が生じる。


 解説&正解 

本問は、単純な時効中断の問題ではなく、物上保証人がからんでいるので、その分少しだけ難しくなっています。物上保証人は物権・債権を通じて出てきますので、ここで正確に理解しておきましょう。

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 選択肢1 
(Aは、BのCに対する金銭債務を担保するため、A所有の土地に抵当権を設定し、物上保証人となった。)この場合、Aは、この金銭債務の消滅時効を援用することができる。


 解 説 
物上保証人Aは、Bの金銭債務の消滅時効を援用することができます。
本問を図示するとこうなります。

消滅時効,物上保証人

時効を援用することができる援用権者は、時効により直接利益を受ける者(およびその承継人)です。
物上保証人Aは、Cの金銭債権の消滅時効が完成すれば抵当権の実行を免れることになるため、時効により直接利益を受ける者といえますので、本肢は正しい記述です。

 物上保証人 
物上保証人というのは、他人の債務のために自分の財産の上に抵当権などの物的担保を負担する者をいいます。
債務が弁済されないときは抵当権が実行されて、自分の財産が競売されるという点で責任は負うのですが、自分で債務を負担するものではありません。これを「債務なき責任」といいます。
債務者ではないため、債権者は物上保証人に対して訴えを起こしたり、その一般財産に対して執行することはできず、この点で普通の保証人とは異なります。

[論点] 時効の援用権者|物上保証人
[判例] 最判昭42.10.27
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 選択肢2 
(Aは、BのCに対する金銭債務を担保するため、A所有の土地に抵当権を設定し、物上保証人となった。)この場合、Aが、Cに対し、この金銭債務が存在することを時効期間の経過前に承認した場合、当該債務の消滅時効の中断の効力が生じる。


 解 説 
物上保証人Aが、Bの金銭債務を承認しても、時効中断の効力は生じません。
判例は、債務を負担しない物上保証人が債務を承認しても、時効中断事由としての『承認』にはならないとしています。
本肢は誤った記述です。

[論点] 物上保証人の債務承認
[判例] 最判昭62.9.3
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 選択肢3 
(Aは、BのCに対する金銭債務を担保するため、A所有の土地に抵当権を設定し、物上保証人となった。)この場合、Bが、Cに対し、この金銭債務が存在することを時効期間の経過前に承認した場合、Aは、当該債務の消滅時効の中断の効力を否定することができない。


 解 説 
主たる債務者Bが債務を承認すれば、消滅時効は中断しますが、この効果は物上保証人Aにも及びます。
Aは消滅時効の中断を認めなければらず、中断の効力を否定することはできません。

連帯債務のところで学習しますが、主たる債務者に対する履行の請求『その他の事由』による時効の中断は、その保証人に対しても効力を生じます。
『その他の事由』には、債務者による債務承認(債務の存在を認めること)も含んでいるのです。
本肢は正しい記述です。

[論点] 主たる債務者の債務承認
[判例] 最判平7.3.10
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 選択肢4 
(Aは、BのCに対する金銭債務を担保するため、A所有の土地に抵当権を設定し、物上保証人となった。)この場合、CからAに対する不動産競売の申立てがされた場合、競売開始決定の正本がBに送達された時に、この金銭債務の消滅時効の中断の効力が生じる。


 解 説 
ここは難しいですね。
わからなくても「消去法」で得点しちゃいましょう。

判例は、物上保証人Aに対して不動産競売の申立てがなされた場合、Bの金銭債務の時効中断の効力は、民法155条が時効の利益を受ける者に対する通知を要求した趣旨から考えて、「競売開始決定の正本が(時効利益を受ける)Bに送達された時」に生じると解しています。

物上保証人に対する「不動産競売の申立て」がなされた時でもなく、「競売開始決定による差押え」の効力が生じた時でもなく、また債権者が競売の申立てをした時にさかのぼって中断の効力が生じるのでもありません。
本肢は正しい記述です。

[論点] 物上保証人に対する競売申立
[判例] 最判平8.7.12


以上より、正解は[2]

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 読むだけ! 重要条文 

 時効の中断事由|147条 
時効は、次に掲げる事由によって中断する。
 一 請 求
 二 差押え、仮差押えまたは仮処分
 三 承 認

 通 知|155条 
差押え、仮差押えおよび仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。

 主たる債務者に生じた事由の効力|457条 
1 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。


(この項終わり)