|公開日 2017.6.27
|更新日 2019.5.11

【平成11年 問9】の問題です。

【問 題】 Aの被用者Bが、Aの事業の執行につきCとの間の取引において不法行為をし、CからAに対し損害賠償の請求がされた場合のAの使用者責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Bの行為が、Bの職務行為そのものには属しない場合でも、その行為の外形から判断して、Bの職務の範囲内に属すると認められるとき、Aは、Cに対して使用者責任を負うことがある。

 Bが職務権限なくその行為を行っていることをCが知らなかった場合で、そのことにつきCに重大な過失があるとき、Aは、Cに対して使用者責任を負わない。

 Aが、Bの行為につきCに使用者責任を負う場合は、CのBに対する損害賠償請求権が消滅時効にかかったときでも、そのことによってAのCに対する損害賠償の義務が消滅することはない。

 AがBの行為につきCに対して使用者責任を負う場合で、AがCに損害賠償金を支払ったときでも、Bに故意又は重大な過失があったときでなければ、Aは、Bに対して求償権を行使することができない。


 解説&正解 

715条が定めた使用者責任は、使用者が被用者の活動によって利益をあげる関係にあることに着目して、利益の存するところに損失をも帰せしめるという見地から、使用者の事業活動中に被用者(従業員)が第三者に損害を加えた場合には、使用者も被用者と同じ内容の賠償責任を負うべきとする趣旨です。
なお、使用者と被用者は被害者に対し連帯して不法行為責任を負いますが、その債務は不真正連帯債務と解されています(判例)
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 選択肢1 
(Aの被用者Bが、Aの事業の執行につきCとの間の取引において不法行為をし、CからAに対し損害賠償の請求がされた場合において)Bの行為が、Bの職務行為そのものには属しない場合でも、その行為の外形から判断して、Bの職務の範囲内に属すると認められるとき、Aは、Cに対して使用者責任を負うことがある。


 解 説 
被用者の行為が「職務行為そのものには属しない」場合でも、「行為の外形」から判断して、その職務の範囲内に属すると認められるときは、使用者は、Cに対して使用者責任を負わなければなりません。

715条1項は「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定していますが、「事業の執行について」というのは、被用者の職務行為そのものには属さなくても、行為の外形から判断して、広く被用者の職務の範囲内に属すると認められる場合を含む、とするのが確立した判例です外形理論
本肢は正しい記述です。

[論点] 事業執行の範囲|外形理論
[判例] 最判昭39.2.4
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 選択肢2 
(Aの被用者Bが、Aの事業の執行につきCとの間の取引において不法行為をし、CからAに対し損害賠償の請求がされた場合において)Bが職務権限なくその行為を行っていることをCが知らなかった場合で、そのことにつきCに重大な過失があるとき、Aは、Cに対して使用者責任を負わない。


 解 説 
被用者Bに職務権限がないことを、相手方Cが「重大な過失」によって知らなかったときは、使用者Aは使用者責任を負いません。
悪意があったり、重過失があるような相手方を保護する必要はないからです。
本肢は正しい記述です。

※ 判例は次のように判示しています。
行為の外形からみて事業の範囲内と認められる場合でも、その行為が被用者の職務権限内において適法に行なわれたものでなく、かつ、相手方がこの事情を知りながら悪意があるとき)、または重大な過失によりこの事情を知らないで(善意だが重過失がある)、当該取引をしたときは、その行為に基づく損害は、715条にいう『被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害』とはいえない」としています。
悪意、重過失は除くということです。

[論点] 悪意・重過失がある被害者
[判例] 最判昭42.11.2
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 選択肢3 
(Aの被用者Bが、Aの事業の執行につきCとの間の取引において不法行為をし、CからAに対し損害賠償の請求がされた場合において)Aが、Bの行為につきCに使用者責任を負う場合は、CのBに対する損害賠償請求権が消滅時効にかかったときでも、そのことによってAのCに対する損害賠償の義務が消滅することはない。


 解 説 
被用者Bの損害賠償債務が消滅時効にかかったときでも、使用者Aの損害賠償債務はその影響を受けず、時効消滅しません。

被害者に対する使用者・被用者双方の債務は、不真正連帯債務と解されており、したがって弁済に相当する事由を除いて、Bについての時効・相殺などは、一方の債務者Aに影響を及ぼすことはありません(不真正連帯債務の相対的効力
本肢は正しい記述です。

[論点] 不真正連帯債務の性質
[判例] 大判昭12.6.30
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 選択肢4 
(Aの被用者Bが、Aの事業の執行につきCとの間の取引において不法行為をし、CからAに対し損害賠償の請求がされた場合において)AがBの行為につきCに対して使用者責任を負う場合で、AがCに損害賠償金を支払ったときでも、Bに故意又は重大な過失があったときでなければ、Aは、Bに対して求償権を行使することができない。


 解 説 
被用者Bに「故意又は重大な過失」がなくても、過失(軽過失)があれば、使用者Aは、Bに求償することができます。
使用者責任は、被用者の不法行為の成立を基礎としているので、被用者に故意または過失(軽過失)があればよく、重過失である必要はありません。
本肢は誤った記述です。

[論点]
 使用者の求償権|被用者の故意・過失


以上より、正解は[4]

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 読むだけ! 重要条文 

 使用者等の責任|715条 
1 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。(2 略)
3 第1項の規定は、使用者または監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。


(この項終わり)