|公開日 2017.6.12
|更新日 2019.5.02

【平成23年 問1】の問題です。

【問 題】 A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Bは、甲土地は将来地価が高騰すると勝手に思い込んで売買契約を締結したところ、実際には高騰しなかった場合、動機の錯誤を理由に本件売買契約を取り消すことができる。

 Bは、第三者であるCから甲土地がリゾート開発される地域内になるとだまされて売買契約を締結した場合、AがCによる詐欺の事実を知っていたとしても、Bは本件売買契約を詐欺を理由に取り消すことはできない。

 AがBにだまされたとして詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消した後、Bが甲土地をAに返還せずにDに転売してDが所有権移転登記を備えても、AはDから甲土地を取り戻すことができる。

 BがEに甲土地を転売した後に、AがBの強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合には、EがBによる強迫につき知らなかったときであっても、AはEから甲土地を取り戻すことができる。


 解説&正解 

錯誤や詐欺、強迫など意思表示のいろいろな欠陥パターンについて総合的に問う出題です。それぞれについて正確に理解していないと正解できないようになっています。

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 選択肢1 
(A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合において)、Bは、甲土地は将来地価が高騰すると勝手に思い込んで売買契約を締結したところ、実際には高騰しなかった場合、動機の錯誤を理由に本件売買契約を取り消すことができる。


 解 説 
「将来地価が高騰する」という動機で売買契約を締結したところ、実際には「高騰しなかった」という場合には、動機に錯誤があったことになりますが、この動機が相手方に表示されなかったときは、法律行為の要素の錯誤になることはないため、錯誤を理由として売買契約の無効を主張することはできません。
本肢は誤った記述です。

[論点] 動機の錯誤は錯誤になるか
[判例] 最判昭29.11.26
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 選択肢2 
(A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合において)、Bは、第三者であるCから甲土地がリゾート開発される地域内になるとだまされて売買契約を締結した場合、AがCによる詐欺の事実を知っていたとしても、Bは本件売買契約を詐欺を理由に取り消すことはできない。


 解 説 
本肢が第三者による詐欺だということが見抜けないと正解できません。
わかりやすいように図を書いてみましょう。

第三者の詐欺

Bが、第三者Cにだまされて売買契約を締結した場合には、Bの意思表示はCにだまされたものであるという事実を、契約の相手方であるAが「知っていた」ときに限って、Bは詐欺を理由に売買契約を取り消すことができます。

契約の相手方Aが詐欺の事実を知っていた場合には、A・Cが通謀していると考えられ、あたかもAが詐欺をしているのと同視できるからです。
本肢は誤った記述です。

[論点] 第三者詐欺と相手方の悪意
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 選択肢3 
(A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合において)、AがBにだまされたとして詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消した後、Bが甲土地をAに返還せずにDに転売してDが所有権移転登記を備えても、AはDから甲土地を取り戻すことができる。


 解 説 
わかりやすいように図を書いてみましょう。
Aが、Bの詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消した後の権利関係であることに注意してください。

詐欺による取消し

詐欺を理由に売買契約が取り消された場合、その取消し後、Bから土地所有権を取得したDは、96条3項の第三者には該当しません。
本肢が96条3項の問題ではなく、177条の対抗問題だということを見抜くのがポイント。

さて、「取消し後」の権利関係については、

  • 取消しによるB→Aの所有権復帰
  • 取消後のB→Dへの所有権移転とは
二重譲渡と同様の対抗関係が成立し、177条により先に登記(対抗要件)を備えた方が優先します。
Dが先に所有権移転登記を備えた以上、AはDから甲土地を取り戻すことはできません。
本肢は誤った記述です。

[論点] 取消後の第三者との法律関係
[判例] 大判昭17.9.30
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 選択肢4 
(A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された場合において)、BがEに甲土地を転売した後に、AがBの強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合には、EがBによる強迫につき知らなかったときであっても、AはEから甲土地を取り戻すことができる。


 解 説 
これも図を書いてみましょうか。
[選択肢3]との違いに注意してください。

強迫による取消

AがBの強迫を理由に契約を取り消した場合、その取消しは、善意の第三者Eにも対抗することができます。つまりEがBの強迫を知らなかったときであっても、AはEから甲土地を取り戻すことができるのです。

詐欺の場合には、だまされた本人にも不注意な点があり、そのため不利益をこうむってもやむをえないと考えられるのですが、強迫の場合は、強迫された本人に責められるべき理由はないため、たとえ第三者が事情を知らない善意であっても、本人を保護しているのです。
本肢は正しい記述です。

[論点] 強迫と善意の第三者


以上より、正解は[4]

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 読むだけ! 重要条文 

 詐欺、強迫|96条 
1 詐欺または強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。


(この項終わり)