|公開日 2017.6.27
|更新日 2019.5.10

【平成12年 問8】の問題です。

【問 題】 Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

 Aの不法行為に関し、Bにも過失があった場合でも、Aから過失相殺の主張がなければ、裁判所は、賠償額の算定に当たって、賠償金額を減額することができない。

 不法行為がAの過失とCの過失による共同不法行為であった場合、Aの過失がCより軽微なときでも、Bは、Aに対して損害の全額について賠償を請求することができる。

 Bが、不法行為による損害と加害者を知った時から1年間、損害賠償請求権を行使しなければ、当該請求権は消滅時効により消滅する。

 Aの損害賠償債務は、BからAへ履行の請求があった時から履行遅滞となり、Bは、その時以後の遅延損害金を請求することができる。


 解説&正解 

 選択肢1 
(Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した。)このとき、Aの不法行為に関し、Bにも過失があった場合でも、Aから過失相殺の主張がなければ、裁判所は、賠償額の算定に当たって、賠償金額を減額することができない。


 解 説 
722条は「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる(2項)と定めています。

つまり、被害者Bにも過失があった場合には、加害者Aから「過失相殺の主張」がなくても、裁判所はこれを考慮して自由裁量、職権により賠償額を定めることができるため、「賠償金額を減額する」こともできるのです。
本肢は誤った記述です。

[論点] 過失相殺の主張がないとき
[判例] 最判昭34.11.26
………………………………………

 選択肢2 
(Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合において)不法行為がAの過失とCの過失による共同不法行為であった場合、Aの過失がCより軽微なときでも、Bは、Aに対して損害の全額について賠償を請求することができる。


 解 説 
共同不法行為の場合には、各不法行為者の過失の軽重に関係なく、各人が連帯して全損害を賠償する責任を負うので、被害者Bは、Cより過失の軽微なAに対しても、損害全額について賠償請求することができます。
本肢は正しい記述です。

[論点] 共同不法行為責任の性質
………………………………………

 選択肢3 
(Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合において)Bが、不法行為による損害と加害者を知った時から1年間、損害賠償請求権を行使しなければ、当該請求権は消滅時効により消滅する。


 解 説 
不法行為による損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が、損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは時効消滅します。
「1年間」との記述は誤りです。

※ 不法行為の時から20年を経過したときも、同様です。

[論点]
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効
………………………………………

 選択肢4 
(Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合に)Aの損害賠償債務は、BからAへ履行の請求があった時から履行遅滞となり、Bは、その時以後の遅延損害金を請求することができる。


 解 説 
不法行為に基づく損害賠償債務は、損害発生と同時に、つまり不法行為と同時に当然に履行遅滞となります。
「履行の請求」があった時から履行遅滞となるのではありません。これは、被害者の利益を考慮してのことです。
そのため被害者は、不法行為の成立時以後の遅延損害金も請求できることになります。
本肢は誤った記述です。

[論点] 不法行為債務の履行期限
[判例] 最判昭37.9.4


以上より、正解は[2]

………………………………………

 読むだけ! 重要条文 

 共同不法行為者の責任|719条1項 
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

 過失相殺|722条2項 
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる

 損害賠償請求権の期間制限|724条 
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者(またはその法定代理人)が、損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。


(この項終わり)