|公開日 2017.06.25
|更新日 2018.10.26


【平成28年 問8】の問題です。

【問 題】 AがBに甲建物を月額10万円で賃貸し、BがAの承諾を得て甲建物をCに適法に月額15万円で転貸している場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 Aは、Bの賃料の不払いを理由に甲建物の賃貸借契約を解除するには、Cに対して、賃料支払の催告をして甲建物の賃料を支払う機会を与えなければならない。

 BがAに対して甲建物の賃料を支払期日になっても支払わない場合、AはCに対して、賃料10万円をAに直接支払うよう請求することができる。

 AがBの債務不履行を理由に甲建物の賃貸借契約を解除した場合、CのBに対する賃料の不払いがなくても、AはCに対して、甲建物の明渡しを求めることができる。

 AがBとの間で甲建物の賃貸借契約を合意解除した場合、AはCに対して、Bとの合意解除に基づいて、当然には甲建物の明渡しを求めることができない。


[解説&正解]
本問と同じような問題が、【平成10年問6】【平成16年問13】【平成23年問7】に出題されていて、適法な転貸借はかなり出尽くした感があります。

【選択肢1】
(AがBに甲建物を月額10万円で賃貸し、BがAの承諾を得て甲建物をCに適法に月額15万円で転貸している場合において)Aは、Bの賃料の不払いを理由に甲建物の賃貸借契約を解除するには、Cに対して、賃料支払の催告をして甲建物の賃料を支払う機会を与えなければならない。

(解 説)
判例によると、適法な転貸借がある場合、賃貸人が賃料延滞を理由として賃貸借契約を解除するには、賃借人に対して「賃料支払の催告」をすれば足りるのであって、転借人に対して延滞賃料の支払機会を「与えなければならない」ものではないとしています。
本肢は誤った記述です。

[テーマ] 債務不履行による解除と転借人
[判 例] 最判昭37.3.29

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【選択肢2】
(AがBに甲建物を月額10万円で賃貸し、BがAの承諾を得て甲建物をCに適法に月額15万円で転貸している場合において)BがAに対して甲建物の賃料を支払期日になっても支払わない場合、AはCに対して、賃料10万円をAに直接支払うよう請求することができる。

(解 説)
適法な転貸借がある場合には、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負います。
したがって、賃借人Bが甲建物の賃料を支払期日になっても支払わない場合には、賃貸人Aは転借人Cに対して、賃料10万円をAに直接支払うよう請求することができます。
本肢は正しい記述です。

※ 適法な転貸借があると、転借人は転借物の使用収益権をもって賃貸人に対抗できる代わりに、賃借人(転貸人)に対してだけでなく、賃貸人に対しても直接義務を負うことになります。

[テーマ] 適法な転貸借の効果
[条 文] 613条1項

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【選択肢3】
(AがBに甲建物を月額10万円で賃貸し、BがAの承諾を得て甲建物をCに適法に月額15万円で転貸している場合において)AがBの債務不履行を理由に甲建物の賃貸借契約を解除した場合、CのBに対する賃料の不払いがなくても、AはCに対して、甲建物の明渡しを求めることができる。

(解 説)
適法な転貸借がある場合でも、賃借人Bの「債務不履行」によりAB間の賃貸借が解除されれば、その結果、賃借人Bは、転貸人としての債務が履行不能となるため、BC間の転貸借は、AB間の賃貸借の終了と同時に終了します。

転借人Cは転借権を賃貸人Aに対抗できず、建物を返還しなければなりません。
本肢は正しい記述です。

[テーマ] 債務不履行解除と転貸借の終了
[条 文] 最判昭36.12.21

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【選択肢4】
(AがBに甲建物を月額10万円で賃貸し、BがAの承諾を得て甲建物をCに適法に月額15万円で転貸している場合において)AがBとの間で甲建物の賃貸借契約を合意解除した場合、AはCに対して、Bとの合意解除に基づいて、当然には甲建物の明渡しを求めることができない。

(解 説)
判例は、適法な転貸借がある場合、賃貸人と賃借人が賃貸借を「合意解除」しても、転借人に不信な行為があるなど特別の事情がある場合を除いて、転貸借は当然には終了しないとしています。
AはCに対して、Bとの合意解除に基づいて、当然には甲建物の明渡しを求めることはできないのです。
本肢は正しい記述です。

[テーマ] 合意解除と転貸借の終了
[判 例] 最判昭38.2.21

以上より、正解は[1]

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[しっかり読んでおこう重要条文]

*613条(適法な転貸借の効果)
1 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
2 前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
(※ 適法な転貸借がある場合には、賃貸借関係はそのまま存続し、従来どおり賃貸人は賃借人に対してその権利を行使できます。)


(この項終わり)