|更新日 2020.12.20
|公開日 2017.06.07

32年間の出題傾向過去に「1問」として出題されたことは1度もありません。意思表示の総合問題の「1選択肢」として出題されたことが、わずかに3肢です。
ほとんど出題されないテーマですが、一読の価値はあります。時間のない人はスルーでもかまいませんよ。
得点のカギ次の3点を理解することが得点のカギです。
1 心裡留保の効力
2 無効とされる要件
3 第三者との関係
れいちゃん02

心裡留保(しんりりゅうほ)って、むつかしそうね。

たくちゃん01

内容は、意外と簡単だよ。試験にはほとんど出ないけれど……。

1|心裡留保って何?

 心裡留保の意味

「心裡留保」という用語は条文には存在しません。心裡留保を定めた93条1項には、こう書いてあります。

「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない」
これが心裡留保の意味です。何のことか、サッパリわかりませんね。
用語からは難しそうな印象を受けますが、内容はいたって簡単です。

|心裡留保の意味|
心裡留保というのは、表意者自身が「この意思表示は、自分の真意でない」と知りながらする意思表示をいいます。
要するに「ウソと知りながら意思表示をする」ことです。

「自分の真意と違う表示をする」、つまり「真意を心の裡(うち)に留保する」という意味です。

たとえば、売る気もないのに、20万円もする新品の富士通パソコンを5万円で売ってあげる、と言ったとします。
「売るよ」という意思表示を受けた相手方が、「これは安い、じゃあ買うよ」と約束をしたのに、あとになって「いや実は5万円で売るつもりで言ったんじゃない、あれはうそだから、君が承諾しても契約は成立しないからね」

はたしてこういう主張が許されるのかどうか、これが心裡留保の問題です。
富士通PCでも紛糾するのに、不動産取引となると事態は深刻ですよね。

|心裡留保の構造|

心裡留保

宅建試験では「心裡留保」という用語は使われずに、条文本体の表記にあわせて「売る意思がないのに売買契約をした」とか、「自分の真意ではないと認識しながら売却の意思表示を行った」というように出題されています。
こうした記述があれば、ズバリ「心裡留保」ですからね。

2|心裡留保による契約の効力

 原 則

|原則は有効|
表意者が「自分の真意ではないと知りながら」行った意思表示は有効とされます。
つまり「表示したとおりの効果」が生じるのです。

心裡留保では、表示に対応する意思が存在しないので、意思表示としては無効のはずです。
しかし、民法がこれを有効としているのは、表示を信頼して取引した相手方を保護して取引の安全を図ったからなのです。

表意者も「意思と表示の不一致」を認識しているので表示どおりの効果を与えても、表意者が害されることはないのです。

心裡留保による「売ろう」という意思表示は有効ですから、これに対して「買う」と承諾して結んだ売買契約は有効となるわけです。
「冗談だから、あの話はなかったことにしよう」とは言えません。
学者は、これを「嘘つきを保護する必要なし」といいます。まっ、自業自得ということですね。

※ 「表示」を信頼した「相手方や第三者を保護して取引の安全を図る」という考え方は、民法では非常に重要な理論です。
今後、いろいろな場面で登場してきます。

 例 外

|例外的に無効とされる|
心裡留保による意思表示は「原則有効」ですが、例外があります。
相手方が「その意思表示が表意者の真意ではないことを知り、または知ることができたとき」は、その意思表示は無効とされます。

1|相手方が悪意のとき
相手方が、表意者の「真意ではないことを知っているとき」は、無効です。
真意ではないことを知っている相手方を保護する必要はないからです。
なお、「真意ではない」ことを知っていればよく「真意を知る」必要はありません。

2|相手方に過失があるとき
取引で一般人がする程度の注意をすれば「知ることができた」のに、それを怠ったために知ることができなかったときは、過失ありとされ、意思表示は無効です。
不注意な相手方は保護する必要がないというわけです。

結局、心裡留保は「相手方が善意・無過失のときに限り」有効となります。

自分自身

表示が、表意者の真意でないことを、相手方が知っていたり、知らなくても過失があるときは、心裡留保は無効だよ。

3|善意の第三者との関係

|善意の第三者が登場したとき|
相手方Bが悪意または善意・有過失のときは、心裡留保は無効ですが、このあと善意の第三者が登場した場合、表意者Aはその無効を善意の第三者に対抗できるでしょうか。
心裡留保の第三者
この場合、Aは、AB間の契約が心裡留保により無効であることを「善意の第三者に対抗することはできない」とされます。
善意の第三者を保護して取引の安全を図るためですね。
なお、第三者は「善意」であればよく、「無過失」であることを要しません。

ウソの意思表示をしたAに同情の余地はなく、善意の第三者は過失があっても保護すべきとされたのですね。ここはシッカリおさえておきましょう。

|善意・悪意|
非常に重要な用語で、至るところに登場します。日常用語でいう善良な心とか道徳心のことではありません。
善意は「事情を知らなかったこと」、悪意は「事情を知っていたこと」をいいます。

|過失|
そして「知らなかったけれども、それは不注意だった。もう少し注意すれば知ることができた」という場合を「善意だが過失があった=善意・有過失」といいます。
また「知らなかったけれども、不注意はなかった。相当の注意をしても知ることはできなかった」という場合を「善意だが過失はなかった=善意・無過失」といいます。

民法は、こうした「主観的な事情」に応じて、異なった扱いをします。
善意または善意・無過失は保護して、悪意または有過失は保護しないというのが、民法の基本的な態度です。

ポイントまとめ

|当事者間|
 原則 心裡留保による意思表示は有効である。
 例外 相手方が悪意のとき、または有過失のときは、無効
|第三者関係|
心裡留保が無効であっても、その無効は善意の第三者には対抗できない

宅建民法講座|総則