|更新日 2020.12.20
|公開日 2017.07.01

32年間の出題傾向制限行為能力者全体で8問出題。そのうち、成年被後見人は単独で出題されたのが1問です。
ほとんどが、被保佐人・被補助人などと一緒に「制限行為能力者」の総合問題で選択肢として出題されています。直近では平成28年(2016)に出題されました。
得点のカギ次の3点を理解することが得点のカギです。
1 制限行為能力者の行為の効力
2 単独でできる行為
3 単独ではできない行為
れいちゃん04

ここでのポイントは?

たくちゃん04

成年被後見人や被保佐人などの行為能力の内容を正確に理解することだね。基本的な問題が多いから正解率も高く、ミスると致命傷だよ。

1|成年被後見人の能力

1|意 味
成年被後見人というのは、精神上の障害により事理を弁識する能力(=意思能力)を「欠く常況にある」者で、家庭裁判所で後見開始の審判を受けた者をいいます。

2|保護者と権限
保護者として成年後見人がつけられます。
成年後見人は、法定代理人として代理権を有しており、成年被後見人の財産上の行為は、原則として法定代理人が代理して行います。

 原則と例外

1|原 則
成年被後見人のした法律行為は、原則として取り消すことができます。
契約のときに意思能力があったかどうかは問題ではなく、成年被後見人という理由だけで取り消すことができるのです。

また、成年後見人の「同意があっても」取り消すことができます。
成年被後見人は日常的に判断能力を欠く状態にあるため、同意を与えて「単独で法律行為をさせる」ことは本人保護にはならないのです。

取消しは、成年被後見人が「単独で」することができます。
同意がない取消しだからといって「取り消すことのできる取消し」とはなりません。

2|例 外
ただし、日用品の購入など「日常生活に関する行為」については、例外的に成年被後見人が単独ですることができます。

食料品や衣料品等の購入、公共料金の支払いのような日常生活に関する行為は、できるだけ本人の残存能力と自主性を尊重すべきだからとされているのです(ノーマライゼーションの理念)

以下、注意点をみておきましょう。

(1)遺言などの「一身専属的な行為」や婚姻・認知などの「身分行為」は、できるだけ本人の意思を尊重すべきですから、一時的に能力が回復したときには、単独ですることができます。
成年後見人が代理して行うことはできません。

(2)「成年被後見人が居住している建物または敷地」について、成年後見人が、成年被後見人に代わって、売却賃貸、賃貸借の解除、抵当権の設定などをするには、家庭裁判所の許可が必要です。
成年後見人が勝手なことをして、成年被後見人の居住の利益を侵害することがないようにするためです。

(3)成年被後見人が、意思無能力の状態で行為をした場合は、
① 成年被後見人であることを理由に「取り消す」ことができるし、または、
② 意思無能力を理由に「無効」を主張することもできます。
これは、制限行為能力者全般にあてはまります。

2|被保佐人の能力

1|意 味
被保佐人は、精神上の障害により事理を弁識する能力が「著しく不十分」な者で、保佐開始の審判を受けた者をいいます。

2|保護者と権限
被保佐人には、保護者として保佐人がつけられます。
保佐人は、被保佐人の行為に同意を与える同意権を有します。
また、家庭裁判所の審判により「特定の法律行為」について、たとえば甲土地の売却とか購入について、保佐人に代理権を付与することもできます。

 原則と例外

1|原 則
被保佐人が重要な法律行為をするには、保佐人の同意(または同意に代わる家庭裁判所の許可を得なければなりません。
同意(またはこれに代わる許可)を得ないでした行為は取り消すことができます。

保佐人の同意が必要な行為は10種類ありますが、主なものは次のとおり。過去、試験に出たのは「不動産(土地)の売却」と「贈与の拒絶」だけです。

① 不動産の取引行為
土地・建物の売買。ただし、利息や賃料などの受領には、同意は不要です。
② 相続の承認や放棄、遺産分割
③ 贈与の申込みの拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申込み承諾、負担付遺贈の承認
④ 短期賃貸借(土地5年、建物3年)超える賃貸借
⑤ 被保佐人が、以上の行為を制限行為能力者の法定代理人として行うこと

2|例 外
成年被後見人と同じく、日用品の購入など「日常生活に関する行為」については、単独ですることができます。

以下の点も注意しておきましょう。

(1)債務の承認をするには、保佐人の同意は必要ありません。被保佐人が単独ですることができます。
債務の承認は、すでに存在する相手方の権利を認めるにすぎず、あらたに債務を負って不利益を受けるわけではないからです(大判大7.10.9)

(2)ただし、時効完成後の債務の承認は借財と同視できるため、同意が必要です(大判大8.5.12)

3|被補助人の能力

1|意 味
被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が「不十分」な者で、補助開始の審判を受けた者をいいます。
「軽度」の痴呆・知的障害・精神障害等により判断能力の不十分な人が該当します。

「本人以外」の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意が必要で、補助を受けるかどうかは本人の意思に任されています。この点は、後見や保佐と大きく違います。

2|保護者と権限
保護者として補助人がつけられます。
成年後見人は「代理権」を、保佐人は「同意権」を当然に有しますが、補助人の場合には当然に有する権利はありません。

補助開始の審判の際に、補助人に代理権を与えるのか、同意権を与えるのか、あるいはその双方を与えるのかの審判をすることになっています。

 同意権と代理権

1|同意権
被補助人が「特定の法律行為」をする場合に、補助人の同意を要する旨の審判がなされます。
特定の法律行為は、保佐の場合の「同意を要する行為」の一部に限られます。

同意、または同意に代わる家庭裁判所の許可を得ないでした行為は、取り消すことができます。

2|代理権
代理権も「特定の法律行為」について与えられます。
この場合には、補助人が代理行為をしますから、代理権の対象となる行為に制限はありません。

4|相手方の保護

 催告権

制限行為能力者の行為が「取り消すことができる」というのは、取り消しても取り消さなくてもいいということで、「取り消されるまでは一応有効」「取り消されるとはじめから無効とみなされる」ということです。

相手方は、取り消されるかもしれないという不安定な状態に置かれるため、こういう状態を脱することができるように、催告権が与えられました。
取り消すのか取り消さないのかはっきりしてほしい、と制限行為能力者側を促すわけです。

|催告を無視したら?|
この催告(1か月以上の期間)に対して、制限行為能力者側が確答をしなかった場合には、その契約を「追認」したものとみなされ、有効に確定します。
「追認を拒絶」したものとみなされるのではありませんので、注意してください。

追認は、取り消すことができる行為を確定的に有効とする意思表示で、1か月以上の考慮期間が与えられたにもかかわらず、確答を放置した場合には、契約をそのまま存続させることとして相手方を保護しているのです。

 制限行為能力者による詐術

たとえば、未成年者が身分証明書を偽造するなどして「自分は成年者である」と偽って、あたかも行為能力者であるかのように相手方を誤信させた場合には、もはや契約を取り消すことはできず(取消権の消滅)、契約は有効なものとして確定します。

このような制限行為能力者を保護する必要はなく、むしろ、行為能力者だと信じた相手方を保護する必要があるからです。

 取消権の時効消滅

取り消すことができる契約も、いつまでも取り消せるわけではありません。
この取消権は、次のいずれかのときには時効消滅します。
① 追認できる時から5年間行使しない
② 行為の時から20年間経過した
「時間の経過」によって法律関係を確定させたのです。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説][問題1] 「建物の贈与を受ける契約」であっても、成年被後見人は単独ですることはできない。したがって、成年後見人はこの贈与契約を取り消すことができる。
本問は誤りです。

[問題2] 被保佐人が「不動産を売却する」など重要な取引行為をする場合には、単独ではできず、保佐人の同意が必要である。
また「贈与の申し出を拒絶する」場合も単独ではできず、やはり保佐人の同意が必要。本問は誤りです。

ポイントまとめ

 成年被後見人のした法律行為は、原則、取り消すことができる。
 ただし、日用品の購入など日常生活に関する行為については、単独でできる。
 遺言・婚姻・認知などの身分行為単独でできる。
 被保佐人が、不動産の取引行為など重要な法律行為をするには、保佐人の同意が必要。同意のない行為は、取り消すことができる。
 ただし成年被後見人と同じく、日常生活に関する行為は、単独でできる。
 被補助人が、補助人の同意を得ないでした行為は、取り消すことができる。
 制限行為能力者の相手方には、催告権がある。
 催告に対して、制限行為能力者側が確答をしなかったときは、追認したものとみなされる(有効として確定する)。
 制限行為能力者が詐術を用いた場合は、取消権はない
10 取消権は、追認できる時から5年間行使しないときは時効消滅する。

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