|更新日 2021.01.19
|公開日 2017.06.07

32年間の出題傾向過去に「1問」として出題されたことは1度もありません。意思表示の総合問題の「1選択肢」として出題されたことが、わずかに3肢です。
ほとんど出題されないテーマですが、一読の価値はあります。
得点のカギ次の3点をおさえましょう。
1 心裡留保の効力
2 無効とされる要件
3 第三者との関係
れいちゃん02

心裡留保(しんりりゅうほ)って、むつかしそうね。

たくちゃん01

内容は、意外と簡単だよ。試験にはほとんど出ないけれど、意思表示の考え方を理解するにはいいテーマだよ。

1|心裡留保って何?

 心裡留保の意味

「心裡留保」という用語は条文の本文には書いてありません。心裡留保を定めた93条1項には、こう書いてあります。

「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない」

これが心裡留保の意味です。何のことか、サッパリわかりませんね。
用語からは難しそうな印象を受けますが、内容はいたって簡単です。

意 味

心裡留保というのは、表意者自身が「この意思表示は、自分の真意でない」と知りながらする意思表示をいいます。
要するに「ウソと知りながら意思表示をする」ことです。

「自分の真意と違う表示をする」、つまり「真意を心の裡(うち)に留保する」という意味です。

たとえば、売る気もないのに、20万円もする新品の富士通パソコンを5万円で売ってあげる、と言ったとします。
「売るよ」という意思表示を受けた相手方が、「これは安い、じゃあ買うよ」と約束をしたのに、あとになって「いや実は5万円で売るつもりで言ったんじゃない、あれはうそ・冗談だから、君が承諾しても契約は成立しないからね」

はたしてこういう主張が許されるのかどうか、これが心裡留保の問題です。
富士通PCでも紛糾するのに、不動産取引となると事態は深刻ですよね。

|心裡留保の構造|

心裡留保

宅建試験では「心裡留保」という用語は使われずに、条文本体の表記にあわせて「売る意思がないのに売買契約をした」とか、「自分の真意ではないと認識しながら売却の意思表示を行った」というように出題されています。
こうした記述があれば、ズバリ「心裡留保」ですからね。

2|心裡留保による契約の効力

原 則

心裡留保による意思表示は、原則として有効です。
表意者が「自分の真意ではない(ウソ)と知りながら」行った意思表示は有効、つまり「表示どおりの効果」が生じます。

心裡留保では、表示に対応する意思が存在しないので、意思表示としては無効のはずです。「売る」と言いながら、「売る気はない」わけですから。
しかし、民法がこれを有効としているのは、「売る」という表示を信頼して取引した相手方を保護して取引の安全を図ったからなのです。

表意者(売主)も「意思と表示の不一致」を認識しているので、「売る」という表示どおりの効果を与えても、表意者が害されることはないのです。

結局、心裡留保による「売ろう」という意思表示は有効ですから、これに対して「買う」と承諾して結んだ売買契約は有効となるわけです。
「冗談だから、あの話はなかったことにしよう」とは言えません。
学者は、これを「嘘つきを保護する必要なし」といいます。まっ、自業自得ということですね。

Topics

取引の安全  「表示」を信頼した「相手方や第三者を保護する」ことを、民法では「取引の安全を図る」といい、非常に重要な理論です。
表見代理や弁済など、今後いろいろな場面で登場してきます。

例 外

原則では有効な心裡留保も、無効とされる例外があります。

相手方が悪意のとき
その表示が表意者の「真意ではないこと」を、相手方が知っているときは無効です。
表意者がウソを言っている、冗談なんだということを相手方が知っていれば、有効とする理由はありません。

真意ではない(売るつもりはない)ことを知っている相手方を保護する必要はないのです。
なお、「真意ではない」ことを知っていればよく「真意を知る」必要はありません。

相手方に過失があるとき
「取引上一般人がする程度の注意」をすれば知ることができたのに、それを怠ったために知ることができなかったときは、過失ありとされ、意思表示は無効です。

注意すれば、ウソだ・冗談なんだということがわかるのに、不注意だった相手方は保護する必要がないというわけです。

結局、心裡留保は「相手方が善意・無過失のときに限り」有効となります。

パトモス先生講義中

表示が、表意者の真意でないことを、相手方が知っていたり、知らなくても過失があるときは、心裡留保は無効だよ。

3|善意の第三者との関係

善意の第三者には対抗できない
「相手方」Bが悪意または善意・有過失のときは、心裡留保は無効ですが、このあと「善意の第三者」が登場した場合、表意者Aはその無効を善意の第三者に対抗することはできません。
つまり、善意の第三者は有効に権利を取得できることになるわけです。
心裡留保の第三者
善意の第三者を保護して取引の安全を図るためですね。

なお、第三者は善意であればよく、無過失であることを要しません。
ウソの意思表示をしたAに同情の余地はないので、善意の第三者は過失があっても保護すべきとされたのですね。ここはシッカリおさえておきましょう。

Topics

善意・悪意  非常に重要な用語で、至るところに登場します。日常用語でいう善良な心とか道徳心のことではありません。
善意は「事情を知らなかったこと」、悪意は「事情を知っていたこと」をいいます。

過失・重過失  そして「知らなかったけれども、それは不注意だった。もう少し注意すれば知ることができた」という場合を「善意だが過失があった=善意・有過失」といいます。
また「知らなかったけれども、不注意はなかった。相当の注意をしても知ることはできなかった」という場合を「善意だが過失はなかった=善意・無過失」といいます。

重過失は、ほんのわずか注意すれば知ることができたのに、それさえもしなかった重い過失をいいます。

民法は、こうした「主観的な事情」に応じて、異なった扱いをします。
善意または善意・無過失は保護して、悪意または重過失は保護しないというのが、民法の基本的な態度です。

ポイントまとめ

1 当事者間
(原則)心裡留保による意思表示は有効である。
(例外)相手方が悪意のとき、または有過失のときは、無効
2 第三者関係
心裡留保が無効であっても、その無効は善意の第三者には対抗できない

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