|更新日 2021.02.27
|公開日 2020.02.27

32年間の出題傾向|32年間で4問。その間、選択肢として5肢ほど出題されてきました。
直近の1問の問題としては、令和1年(2019)に出題されました。
実に16年ぶりです。
遺産分割は多くの規定が新設されています。
得点のカギ次のポイントをおさえましょう。
1 遺産分割協議の効力
2 遺産分割と第三者
れいちゃん01

あまり出題されてないですね。

たくちゃん02

そうだね。でも令和1年(2019)に出題されたからね。
Dクラスのテーマは油断できないよ。

1|遺産分割

 遺産分割の意味

遺産分割は、遺産に属する物または権利の種類・性質、各相続人の年齢・職業・心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮してなされます。

意 味

相続開始の時に相続人が数人いるような共同相続人の場合、相続財産はすべて、ひとまず相続人全員の共有となります。

その後、共同相続人が協議をして、それぞれの相続分に従って取得する財産を個別具体的に決定していきます。これが遺産分割です。

たとえば、配偶者が1/2、子が1/2の法定相続分を有するというのは「遺産全体」について取得する割合であって、遺産の中の「1つ1つの財産」について、これを1/2ずつに分けるということではありません。

配偶者と子は、どの財産を取得してもよく、取得した価額が、遺産全体の価額の1/2になればいいわけです。

預貯金債権は共有
遺産に属する預貯金債権(普通預金債権・定期預金債権)などの金銭債権は、遺産分割協議が成立するまでは、ひとまず相続人の共有に属し、分割協議を経て取得することとなります(最判平28.12.19)
被相続人の財産をできる限り幅広く共有として、共同相続人間の実質的公平を図ったのです。

したがって、相続開始と同時に「当然に相続分に応じて分割される」ことはないため、単独で預貯金債権に関する権利を行使することはできません。

ステップアップ

緊急に葬式費用が必要になったら?
ところで、緊急に被相続人の葬式費用が必要になった場合でも、この預貯金は使えないのでしょうか。
銀行に預けてある預貯金債権は共有(準共有)とされるため、共同相続人の全員の同意によるか、遺産分割されるかしなければ、1円も払戻しができません。
これでは、相続人の当面の必要生計費や葬儀費用の支払い、あるいは被相続人の債権者が弁済を請求してきた場合など、緊急に資金が必要となったときに、対応することができません。

そこで新民法は、遺産分割前であっても、①標準的な当面の必要生計費、②平均的な葬式費用などは「一定の限度」で、各共同相続人が単独で権利行使(払戻し)できるとしました。
他の共同相続人の同意も、家庭裁判所の許可も必要ありません。
遺産分割での公平性を確保しながら、相続人の資金需要に対応したわけです。

なお、権利行使をした預貯金債権については、その共同相続人が遺産の一部分割により取得したものとみなされます。

 遺産分割の自由

共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除いて、いつでも「協議により」遺産の全部または一部の分割をすることができます。

「共有の状態」を早く解消させて、各相続人に単独の権利義務をもたせるためです。

 遺産分割の方法の指定とその禁止

遺言による分割方法の指定
被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定めたり、これを定めることを第三者に委託することができます。

遺言による遺産分割の禁止
また、被相続人は、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁じることができます。
もともと共有物の不分割契約は5年を超えることができないのですが、相続財産の分割禁止も例外ではありません。

 協議分割

上記のように、共同相続人は、被相続人による「分割禁止の遺言」がない限り、いつでも協議分割をすることができます。
1人から遺産分割の請求があれば、他の相続人は分割の協議に応じなければなりません。
分割協議には共同相続人全員の参加が必要で、一部の相続人を除外してなされた分割協議は無効です。

利益相反行為と特別代理人の選任
相続人中に未成年者とその親権者がいる場合、たとえば、被相続人の子と配偶者が相続人となった場合には、遺産分割協議は利益相反行為となるため、親権者は、未成年者のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません(826条)

利益相反行為かどうかは、行為の外形から客観的に判断すべきであって、親権者の意図や動機から判断すべきではないとされています(最判昭48.4.24)

利益相反行為は無効
利益相反行為について、上記判例は次のように判示しています。
「親権者が、共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは、かりに親権者において、数人の子のいずれに対しても公平を欠く意図がなく、代理行為の結果、子の間に利害の対立が現実化されていなかったとしても、利益相反行為にあたるから、親権者が共同相続人である数人の子を代理してした遺産分割の協議は、追認のない限り、無効である」

遺産分割協議の解除
共同相続人は、既に成立している遺産分割協議の全部または一部を「全員の合意により解除」した上で、改めて遺産分割協議を成立させることができます。
全員が、遺産分割協議をやり直したいと希望するのであれば、その合意に基づいて遺産分割協議をいったん解除し、再度協議することに法律上問題はありません(最判平2.9.27)

 遺産分割の効力

分割の遡及効
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼって効力を生じます(遡及効)。
たとえば、相続開始の時から2年経過した後に遺産分割をしたときでも、その効力は、第三者の権利を害しない範囲で、相続開始の時にさかのぼって生じます。

遺産分割によって取得した所有権などの権利は、相続開始の時(被相続人の死亡時)から各相続人に帰属していたこととなり、被相続人から直接、財産を取得したものとして扱われます。

第三者との関係

分割前の第三者
遺産を分割するとその効力は、相続開始の時にさかのぼって生じますが、第三者の権利を害することはできません(909条)
ここでいう「第三者」は、相続開始後「遺産分割前」に生じた第三者をいいます。
つまり、この第三者に対しては「分割の遡及効を制限した」のです。

その趣旨は、相続開始後から遺産分割前までに、相続財産に対して第三者が利害関係を有することになる場合も多く、分割の遡及効によりその権利をくつがえすことは、法律関係の安定を害するためこの第三者を保護する必要があるからです。

ただし、第三者が権利を主張するためには「対抗要件」を備える必要があります。

分割後の第三者
遺産分割後に生じた第三者については、対抗要件(177条)の問題となります。

分割後の第三者に対する関係では、分割により新たな物権変動を生じたものであり、したがって、分割により相続分と異なる権利を取得した「相続人」は、その旨の登記をしなければ、分割後に相続不動産につき権利を取得した「第三者」に対して、自己の権利取得を対抗することはできません(最判昭46.1.26)

取引の安全を確保するためには、登記を怠った「相続人」は、保護に値しないという判断なのです。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 「遺産分割前」に単独の所有権移転登記をした共同相続人の登記は、他の共同相続人の持分に関する限り無権利の登記(虚偽の登記)であるため、そもそも第三者は、他の共同相続人の持分について権利を取得することはできない。
つまり、他の共同相続人は、自己の持分を「登記なくして」対抗できるのである。
たとえ第三者が「虚偽の登記」を真実だと信じても、それだけでは保護されない(登記には公信力がない)のである。本問は正しい記述です。

ポイントまとめ

 預貯金債権は共有に属する。
 遺産分割前でも、①標準的な当面の必要生計費、②平均的な葬式費用などは「一定の限度」で、各共同相続人が単独で権利行使(払戻し)できる。
 共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除いて、いつでも遺産分割の請求ができる。
 被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定めたり、定めることを第三者に委託できる。
 被相続人は、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産分割を禁じることができる。
…………………………
 分割協議には相続人の全員参加が必要で、一部を除外した分割協議は無効である。
 未成年者とその親権者がいる場合は、親権者は、未成年者のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
 親権者が、共同相続人である「子を代理」した遺産分割協議は利益相反行為であり、追認のない限り、無効である。
 遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼって生じる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
10 この第三者が権利を主張するためには、登記を備える必要がある。
11 分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記をしなければ、分割後に相続不動産につき権利を取得した「第三者」に対して、自己の権利取得を対抗できない。

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