|更新日 2020.12.22|公開日 2017.9.26

32年間の出題傾向|32年間で5問の出題。頻出テーマではありません。
[平成18年]の出題以後、13年間出題されていませんでしたが、令和2年(2020)法改正部分が出題されました。
得点のカギ次のポイントを押さえましょう。
1 受任者の義務
2 報酬支払の2タイプ
3 費用償還義務
4 委任の終了
れいちゃん02

試験によく出るの?
委任はむつかしいの?

たくちゃん01

32年間で5問だからねえ。
でも委任はやさしいから、ミスすると痛いよね。
13年間も出題されなかったけれど、令和2年(2020)に出題されたね。

1|意味と成立

1|意 味

委任というのは、委任者が受任者に対して「契約すること」を依頼し、受任者がこれを承諾することにより成立する契約です。
要するに「契約を締結する」ように受任者に依頼することです。

たとえば、不動産業者に土地・建物の「売却や購入」を依頼したり、マンションの賃貸を依頼するような場合、前者は「売買契約の締結」を委任しており、後者はマンションの「賃貸借契約の締結」を委任しているわけです。
委任の事務処理は、このように「法律行為をすること」です。

2|成 立

委任は、委任者と受任者の合意だけで成立する「諾成契約」です。
委任が締結される際には「委任状」が交付されるのが通常ですが、委任状は、第三者に対して受任者の権限を証明する手段であって、委任の成立要件ではありません。
合意さえあれば「委任状を交付」しなくても委任は成立します。

委任と委託の違い
他人に事務処理を依頼する契約には、委任と「委託」があります。

委託の内容は「マンションを維持・管理する」というように、「契約の締結」(法律行為)ではない事実的行為です。
宅建業法で学習する「媒介」(売主と買主を仲介する業務)は、この委託に該当します。

  • 委任=事務の内容は契約の締結
  • 委託=事務の内容は事実的行為

「委託」には、委任の規定が準用されます(656条)ので、結局、委任は、法律行為であるかどうかを問わず「事務の委託をする契約」ということになります。

委任は「契約を締結する」ことが内容になっていますので、通常、受任者には「契約締結の代理権」が与えられており、ほとんどが「代理人」となります。

2|受任者の義務

1 善管注意義務

受任者は、報酬の有無に関係なく、委任の本旨に従い善良な管理者の注意(善管注意義務)をもって、委任事務を処理する義務を負います。
「自己の財産におけると同一の注意」では足りません。

委任は、当事者双方の人間的な信頼関係を基礎として成立してきており、「対価の関係」で成立してきたものではないという歴史的背景があるのです。
したがって、委任も委託も、たとえ報酬がなくても、善管注意義務を欠けば「過失あり」として債務不履行となります。
無報酬だからといって、注意義務の程度が軽くなることはありません。

2 自己執行義務

1 事務処理義務の一身専属性
委任は、当事者間の信頼関係を基礎にしているという性質上、受任者は自ら事務を処理しなければならず、原則として他人に事務処理を代行させることはできません。

2 復受任者の選任
ただし、例外的に
① 委任者の許諾を得たとき、または、
② やむをえない事由があるときは、
受任者は、復受任者を選任することができます。

なお、受任者が「代理権を有する復受任者」を選任したときは、復受任者は「委任者に対して」その権限の範囲内において、受任者と同一の権利(費用償還請求権など)を有し、義務(善管注意義務など)を負うこととなります。

3 その他の義務

1 報告義務
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも事務処理の状況を報告しなければなりません。ただ、請求があるときに報告すればよく、必ずしも「定期的に」報告する義務はありません。
「委任終了後」は、遅滞なく事務の経過および結果を報告しなければなりません。

2 受取物の引渡義務
受任者は、事務処理にあたって受領した金銭、収取した果実を委任者に引き渡さなければならず、また、自己名義で取得した権利も委任者に移転しなければなりません。

3 金銭消費の責任
委任者に引き渡すべき金銭を「自分のために消費」したときは、受任者は消費した日以後の利息を支払う義務を負います。
この金銭の消費は、受任者の背信的行為であるため、金銭の引渡時期以前であっても、消費した金銭に利息を払う必要があります。
損害があれば、その賠償責任も負います。

3|委任者の義務

1 報酬の支払い

委任は無報酬が原則であるため特約がなければ、受任者は報酬を請求できません。
また、報酬は、原則として委任事務の履行後でなければ請求することができず、後払いが原則です。

さて、委任はその内容に応じて「履行割合型」と「成果完成型」の2タイプがあり、報酬支払もこれに対応しています。

1 履行割合型の報酬支払
「履行割合型」の委任は、従来からの委任のタイプで、たとえば高齢者の介護に対して支払われる報酬のように、事務処理をしたことに対して報酬が支払われる場合をいいます。

そして受任者は、次の場合には既にした履行の割合に応じて報酬を請求できます。
① 委任者の帰責事由によらずに、委任事務の履行ができなくなったとき
② 委任が履行の中途で終了したとき

①の場合は、委任者・受任者双方の帰責事由によらずに委任が中途終了する場合と、受任者の帰責事由によって委任が中途終了する場合です。

注意しなければならないのは、受任者の帰責事由によって委任が中途終了した場合であっても、既に履行した割合に応じた報酬を請求できるという点で、これは新民法で明文化されました。
受任者の自己都合で委任事務が途中からできなくなったとしても、割合的報酬が認められたわけです。

ちなみに、委任者の帰責事由によって委任が中途で終了した場合には、受任者は「全額の報酬」を請求できます(536条2項前段|危険負担)

②は、委任が履行の中途で「解除」されたり、当事者の死亡などの終了原因によって「終了」した場合で、この場合も、既に履行された部分の報酬請求ができます。

2 成果完成型の報酬支払
「成果完成型」の委任は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約する委任で、新民法で明文化されました。
たとえば、土地・建物などの不動産媒介に対して報酬が支払われるような場合で「請負契約」に似ています。

報酬支払時期
成果完成型の委任では、報酬は、成果の引渡しと同時に支払わなければなりません。
成果が完成しても、それが引き渡されていないにもかかわらず、委任者が報酬を支払うものとすると、委任者にとっては不公平だからです。
新民法は、請負と同様の趣旨から、「成果の引渡し」と「報酬の支払い」は同時履行の関係にあることを明確にしたのです。

なお、成果完成型の委任であっても「引渡しが不要」な場合には、受任者は「成果の完成後」に報酬の請求ができます。

未完成時の報酬
以上のように、成果完成型の委任では「成果が完成」しなければ報酬を請求できないのが原則です。

では「成果が完成していない」段階で、受任者が委任事務を継続できなくなったり、委任が解除されたりした場合には、報酬はどうなるのでしょうか。
完成していない以上、全く報酬は請求できないのでしょうか。

この場合、成果完成型の委任が請負と類似していることから、「委任者が受ける利益の割合に応じた報酬」を請求できるとされ、受任者の利益保護が図られています。

2 費用前払い|費用償還義務

委任者には「報酬の有無に関係なく」費用等に関して次の義務があります。

1 費用の前払い義務
事務処理の費用を要するときは、受任者の請求があれば、委任者は、費用の前払いをしなければなりません。

2 費用償還義務
受任者が、事務処理に必要な費用を支出したときは、①費用全額と、②支出日以後の利息を償還しなければなりません。
受任者に経済的損失を与えないようにするためです。

3 損害賠償義務
受任者が事務処理のために「過失なく」損害を受けたときは、その賠償をしなければならず、この損害賠償は、委任者の「無過失責任」です。

4|委任の終了

1 双方からいつでも解除できる
委任は「報酬の有無に関係なく」双方からいつでも解除することができます。
委任は相互の信頼関係を基礎としているので、相手方を信頼できなくなったときは、いつでも解消できるようにしているわけです。

なお、解除をした者は、次の場合には(やむを得ない事由があったときを除いて)相手方の損害を賠償しなければなりません。
① 相手方に不利な時期に委任を解除したとき
② 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く)をも目的とする委任を解除したとき

②の「受任者の利益」は、報酬があるというだけでは足りず、受任者にとって「報酬が得られること以上の利益」が必要です。

2 その他の終了事由
解除以外の終了事由は、次の3つです(任意代理権の消滅事由と同じ)

① 委任者または受任者の死亡
受任者が死亡すれば、有償・無償に関係なく、委任契約は終了します。
受任者の「相続人」が、受任者としての地位を承継することはありません。
委任者・受任者双方の個人的な信頼関係で成立している委任は、相続には適さないのです(一身専属性)

② 委任者または受任者が破産手続開始の決定を受けた

③ 「受任者」が後見開始の審判を受けた
「委任者」が後見開始の審判を受けても委任は終了しません。
「後見開始の審判」については受任者だけです。現実に事務処理を行うのは受任者なので判断能力を欠く常況となった受任者にそのまま処理させるのは、適切ではないのです。

3 委任終了後の特別措置
委任の終了に際して、2つの「特別措置」がおかれています。

緊急処分
委任者の死亡等により委任契約は終了しますが、急迫の事情があるときは、受任者は、引き続き事務処理を行うなど、委任者の相続人等が事務処理できる状態になるまで、必要な処分をしなければなりません(緊急処分義務)
事務処理が放置されて、委任者側に不測の損害が生じないようにするためです。

委任終了の対抗要件
委任の終了は、
① これを相手方に通知したときか、
② 相手方がこれを知っていたとき
でなければ、相手方に対抗することができません。
したがって、そのときまで当事者は委任契約上の義務を負うこととなります。

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[正解&解説] 新民法で改正されたところ。受任者「Bの責めに帰すべき事由」によって履行の途中で委任が終了した場合でも、受任者Bは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できる。記述は誤りです。

ポイントまとめ

1 受任者の善管注意義務
受任者は、報酬の有無に関係なく、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う。
2 受任者の報酬請求権
委任は無償が原則。特約がなければ、報酬を請求できない。
3 履行割合型の報酬支払
「履行割合型」の委任では、委任事務の履行後でなければ報酬を請求できない(後払いが原則)
また受任者は、次の場合には既にした履行の割合に応じて報酬を請求できる。
 委任者の帰責事由なく、委任事務の履行が不能となった
 解除等により履行が中途で終了した
4 成果完成型の報酬支払
「成果完成型」の委任では、委任者は、
「引渡しを要する」ときは、引渡しと同時に、
「引渡しを要しない」ときは、成果の完成後に、報酬を支払わなければならない。
5 未完成時における報酬割合
成果の未完成時に委任事務を継続できなくなったり、委任が解除された場合でも、受任者は「委任者が受ける利益の割合に応じた報酬」を請求できる。
……………………
6 復受任者の選任
受任者は、①委任者の許諾を得たとき、または、②やむをえない事由があるときでなければ、復受任者を選任できない。
7 費用前払い・費用償還義務
・費用前払義務──事務処理の費用を要するときは、受任者の請求があれば、委任者は、費用の前払いをしなければならない。
・費用償還義務──受任者が、事務処理に必要な費用を支出したときは、委任者は、①費用全額と、②支出日以後の利息を償還しなければならない。
8 委任の解除
・委任は、報酬の有無に関係なく、双方からいつでも解除できる。
・解除した者は、次の場合には(やむを得ない事由があったときを除いて)相手方の損害を賠償しなければならない。
 相手方に不利な時期に解除した
 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く)をも目的とする委任を解除した
9 委任の終了事由・対抗要件
・委任は、有償・無償に関係なく、次の事由によって終了する。
 どちらかが死亡、または、破産手続開始の決定を受けた
 受任者が後見開始の審判を受けた
・委任の終了は、①相手方に通知したときか、②相手方が終了を知っていたときでなければ、相手方に対抗できない。
10 委託終了後の緊急処分義務
委任終了時に、急迫の事情があるときは、受任者は、委任者等が委任事務を処理することができるに至るまで、引き続き管理業務を行うなど必要な処分をしなければならない。

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