|更新日 2021.02.17
|公開日 2020.02.03

得点のカギ次のポイントを押さえましょう。
1 敷金の充当
2 敷金の承継
3 賃貸借の終了事由

1|敷 金

過去に出題された「敷金4問」はすべて建物の賃貸借ですから、ここでも建物賃貸借を例に確認しておきましょう。

 敷金の意味と性質

意 味

建物の賃貸借では、通常、賃借人から賃貸人に対して敷金が交付されます。
たとえば「家賃の2カ月分」の敷金というようにです。

敷金は「一種の保証金」で、賃借人が家賃を払えなくなったときや建物を壊したときの損害などに備えて、あらかじめ賃貸人に支払っておいて、契約が終了して、建物を明け渡す時に清算されます。

賃貸借は継続的な契約なので、途中で賃料が支払えなくなったり、うっかり壁に大きな傷をつけてしまったなどの事態も予想されますので、賃借人の賃料債務などの担保として、賃貸人が不利益を受けないようにしているわけです。

性 質

敷金の性質については、すでに判例が確立しています。
 敷金が担保する範囲は、契約存続中の債務に限定されない。
 敷金返還請求権は建物明渡しが完了した時に発生する。
 契約終了後は、建物の明渡しを先に履行しなければならない。
 敷金を弁済に充てる旨の意思表示は不要である。

以下、少しくわしくみておきましょう。

敷金が担保する債務の範囲
敷金により担保される債務の範囲は、
 契約期間中の賃料債務のほかに、
 契約終了後、建物明渡しまでに生じる損害金、そのほか賃貸借により賃貸人が取得する一切の債権です。

「損害金」というのは、契約が終了してから賃借人がすぐに建物を明け渡さないで、ぐずぐずしていると、その間の賃料相当額を明渡義務不履行による損害賠償(あるいは不当利得)として請求されますが、これも敷金によって担保されるわけです。

なお、契約終了における原状回復に伴う費用も担保されますが、通常損耗や経年変化による損傷については担保されません。

敷金返還請求権の発生時期

建物を明け渡してから発生
敷金はいつ返してもらえるのでしょうか。
敷金返還請求権は、賃貸借が終了し、かつ、建物の返還を受けたときに発生します。建物の明渡しをしないと発生しないのです。

判例(最判昭48.2.2)は次のようにいっています。
「賃貸借終了後であっても明渡し前においては、敷金返還請求権は、発生および金額の不確定な権利である」

なお、賃借人が適法に賃借権を譲渡したときは、賃貸人と旧賃借人との間に別段の合意がない限り、「賃借権譲渡の時点」で旧賃借人に敷金返還請求権が生じます(最判昭53.12.22)

同時履行の関係にはない
敷金返還請求権は、契約が終了して建物明渡し完了後に発生するために、賃借人が敷金返還請求権を行使するには、先に建物を明け渡す必要があります。
賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、特約のない限り、同時履行の関係にはないのです(最判昭49.9.2)

敷金返還の発生事由と額
賃貸人は、次に掲げるときには敷金を返還しなければなりません。
 賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたとき、または、
 賃借人が適法に賃借権を譲渡したとき

契約終了時に、賃借人に賃料不払い等の債務があれば、当然に敷金から控除され、残りが返還されます。
また、明渡しまでぐずぐずして居座っていると、その間の賃料相当額も損害金として敷金から控除されます。
要するに、敷金から賃借人の一切の債務を控除して残額が返還されるわけです。

ステップアップ

差押えがあったとき
「賃借人」の債権者が敷金返還請求権を差し押さえた場合、差押債権者は、目的物の返還時において未払賃料等を敷金から控除した残額について、敷金返還請求権を行使することができます(最判昭48.2.2)。また、
「賃貸人」の債権者が賃料債権を差し押さえた場合でも、契約が終了して目的物が明け渡されたときは、未払賃料債権は、敷金からの充当によりその限度で消滅することとなり、差押えの効力は、敷金によって充当された部分(未払賃料債権)には及びません(最判平14.3.28)

 契約期間中の敷金の充当

賃貸人は敷金から充当できる
賃貸人は、契約期間中かどうかに関係なく、賃借人が賃料債務等を履行しないときは、自由に敷金をその債務の弁済に充てることができます。
しかし賃貸人にその義務はないので、未払賃料の全額を請求することができます。

賃借人は充当請求できない
反対に、賃借人は、契約存続中も、契約終了後明渡し前でも、敷金を未払賃料などの債務の弁済に充てるよう請求することはできません。
これを認めると、賃借人は賃料の支払いを怠るおそれもあり、賃貸人が担保を失うこととなってしまうからです。
また、敷金を交付しているからといって、賃料支払いを拒絶することもできません。

「保証人」も、敷金額の控除を主張することはできません(大判昭5.3.10)

2|敷金の承継

敷金はどのように「引き継がれる」のでしょうか。
 建物が譲渡された場合
 賃借権が譲渡された場合
に分けて考えましょう。

 建物が譲渡された場合

賃貸人の地位の「移転」
賃貸人がその賃貸建物を譲渡するというのは「賃貸人の地位が移転」することで、対抗力ある賃借権が設定された建物の譲渡や、賃貸人の地位を移転する合意に基づいた場合をいいます。

賃貸建物の譲渡と敷金の承継

敷金は承継される
賃貸建物が譲渡されたときは、敷金返還債務は「賃借人の承諾」がなくとも、当然に未払賃料等を控除した残額について、譲受人に承継されます(最判昭44.7.17)

新賃貸人に承継されないとすると、賃借人は、自ら関知できない賃貸人の変更によって、旧賃貸人が無資力のときには敷金の返還を受けられず、新賃貸人には新たに敷金を交付しなければならないという、大きなリスクを負わされることになるからです。

 賃借権が譲渡された場合

賃借人の地位の「変更」
建物の「賃借人」が、賃貸人の承諾を得て適法にその賃借権を譲渡した場合です。

建物賃借権が譲渡されても敷金は承継されない

敷金は承継されない
賃借権が譲渡されて、賃借人の地位の「変更」があったときは、敷金に関する権利義務は、原則として新賃借人に承継されません(最判昭53.12.22)
賃貸人は、賃借人の未払賃料等を敷金から控除した残額を賃借人に返還することとなります。
賃貸借関係から離脱した旧賃借人が、新賃借人の債務についてまで、その敷金を担保とすることは、旧賃借人に不利益を与えるもので相当ではないからです。
ただし、新賃借人に対して敷金返還請求権を譲渡するとか、敷金をもって新賃借人の債務不履行の担保とするとかの別段の合意があれば、それに従います。

パトモス先生講義中

賃貸建物が譲渡されたら敷金関係も承継されるけれど、賃借権が譲渡されても敷金関係は承継されないよ。残額は賃借人に返還だよ。

ステップアップ

敷金と賃料債務との相殺
たとえば、コロナ禍の影響で賃貸人の事業が倒産しそうになり、敷金の返済能力に不安が生じた場合、賃借人は、これから支払う家賃と敷金とを相殺できるでしょうか。

賃借人としては、敷金で家賃の代わりにしたいところでしょう。
しかし、敷金返還請求権は、建物の明渡し時に発生し返還額が確定するので、敷金返還請求権が発生もせず、額も確定していない「契約期間中」は、相殺できません。

実際上も、相殺を許してしまうと、建物明渡しまでに生じる一切の債務を担保するという敷金の担保的機能が失われることとなり、敷金を交付した意味がなくなります。

3|賃貸借の終了

賃貸借は、主に以下の事由によって終了します。

  • 契約期間の満了
  • 契約解除
  • 賃借物の全部滅失

 契約期間の満了

賃貸借の存続期間
賃貸借の存続期間は、50年を超えることができません。契約でこれより長い期間を定めても、50年とされます。
存続期間は「更新」できますが、更新の時から、やはり50年を超えることはできません。最長で50年ですから相当長いですね。改正前は20年でしたからね。

これは、太陽光パネル設置のための土地の賃借権に配慮して存続期間の長期化が図られたり、耐震・防火など建築技術が発達して建物の耐用年数が飛躍的に伸びたからです。

※ 民法は「最短期間」を定めていませんが、借地借家法では、期間について特別に規定されています。

期間の定めがある場合
契約で10年・20年など存続期間を定めた賃貸借は、更新がない限り、その期間満了により終了します。

期間の定めがない場合
賃貸借の期間を定めなかったときは、当事者はいつでも「解約の申入れ」をすることができ、解約申入れから一定期間(土地1年、建物3か月)経過後に賃貸借は終了します。

 契約解除による終了

契約の解除原因(債務不履行や義務違反など)が生じた場合には、契約解除により賃貸借は終了します。
賃貸借を解除した効果は、通常の解除のように契約のはじめにさかのぼる遡及的効果はなく、将来に向かって契約関係が解消されます。

また、前回[50|賃貸借2]で述べたように、無断譲渡・無断転貸を理由とする解除権の制限は「債務不履行・義務違反」においても適用され、賃貸人と賃借人との信頼関係を破壊したとは認められない、つまり背信性がない場合には、解除権は認められません。
背信性があれば、催告なく解除が可能です(最判昭27.4.25)

 賃借物の全部滅失等

賃借物が全部滅失その他の事由により使用収益することができなくなった場合、賃貸借は当然に終了します。
賃借人に使用収益させるという契約目的を達することができないからです。

 賃貸借終了の効果

賃貸借が終了すれば、賃借人には、賃借物返還義務、付属物の収去義務、原状回復義務が生じます。

賃借物返還義務
賃貸借が終了したときは、賃借物が滅失していない限り、賃借人は賃借物を賃貸人に返還する義務を負います。

付属物の収去義務
賃貸借が終了したときは、賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに付属させた物(借りた店舗に設置した設備等)を収去する義務を負います。
収去義務は、原状回復義務の一態様ですが、損傷に関する原状回復義務と違って、帰責事由がない場合でも、賃貸人の収去請求に応じなければなりません。

原状回復義務
詳細は[49|賃貸借1]をご覧ください。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説][問題1] 賃貸建物が譲渡されたときは、敷金返還債務は、賃借人Bの承諾がなくとも「敷金が存在する限度において」、つまり未払賃料を控除した残額について、当然に新賃貸人Cに承継される。
正しい記述です。

[問題2] 建物の賃貸借が期間満了によって終了するときは、賃貸人は、転借人に「その旨の通知」をしなければ、その終了を転借人に対抗することができない。通知を要するのは、転借人を保護するためである。
正しい記述です。

ポイントまとめ

 敷金返還請求権は、契約終了後、かつ、建物返還時に発生する。
 敷金の担保範囲
① 契約期間中の賃料債務のほかに、
② 契約終了後、建物明渡しまでに生じる損害金のほか、賃貸借により賃貸人が取得する一切の債権を担保する。
 建物明渡しと敷金返還とは同時履行の関係にはない。建物明渡しが先
 契約終了後・建物明渡し完了時に、賃借人の債務は敷金の範囲内で当然に消滅し、敷金返還請求権は、その残額について発生する。
 賃借人が賃料債務を履行しないときは、賃貸人は、敷金からその弁済に充てることができる。しかし賃借人が、未払賃料について敷金からの充当を主張することはできない。
…………………………
 賃貸建物が譲渡された場合、敷金は、原則として「未払賃料を控除した残額」について、新賃貸人に承継される。
 適法に賃借権が譲渡された場合、敷金に関する権利義務関係は、原則として新賃借人には承継されない。
 契約期間中は、賃料債権と敷金返還請求権との相殺はできない
 賃貸借の存続期間は50年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めても50年とされ、更新しても、更新の時から50年を超えられない。
10 賃貸借の期間を定めなかったときは、当事者はいつでも「解約の申入れ」をすることができる。
…………………………
11 賃借物が全部滅失その他の事由により使用収益することができなくなった場合、賃貸借は当然に終了する。
12 賃貸借が終了すれば、賃借人には、賃借物返還義務、付属物の収去義務、原状回復義務が生じる。

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