|更新日 2021.02.16
|公開日 2017.08.10

得点のカギ次の重要ポイントをおさえましょう。
1 賃借権の譲渡・転貸の制限
2 転貸の効果
3 賃貸借の終了と転貸借の終了
4 建物の賃貸・譲渡と承諾
5 信頼関係破壊の法理

1|適法な転貸借関係

まずは、適法な賃借権の譲渡賃借物の転貸の法律関係をみていきましょう。

 賃借権の譲渡・転貸の制限

賃貸人の承諾
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲渡したり、賃借物を転貸することができず、これに違反して、無断で第三者に賃借物の使用収益をさせたときは、賃貸人は契約を解除できます。
これが「民法の原則」です(612条)

というのも、賃貸借は、賃貸人が賃借人その人を信頼して賃借物を貸す契約なので、「賃借人が変わる」ことは、契約の中核である賃料の支払い能力など、賃貸人の利害に重大な影響を与えるからです。
ただ、後述するように、この原則は判例により大きく緩和され、すでに確立した判例が形成されています。

承諾は誰にする?
賃貸人による承諾は、賃借人、転借人のいずれに対して行ってもよいとされます(最判昭31.10.5)
ただし、1度なされた承諾は、賃借権の譲渡または転貸の「契約締結前」でも撤回することはできません(最判昭30.5.13)

 転貸の効果

直接履行義務
賃貸人の承諾を得た「適法な転貸借」の場合には、転借人は「転貸借に基づく債務」を賃貸人に対して直接履行する義務を負います。
賃貸人と転借人の間には、賃貸借契約関係はないのですが、転貸借によって不利益を受けることがないよう賃貸人を保護するために特に規定されたのです。
これにより、賃貸人は、賃借人に対する賃料債権を転借人に対しても行使できる、つまり直接「賃料を請求できる」わけです。

転借人の義務の主な内容は、①賃料支払義務や、②賃借物返還等の義務です。

転借人の義務の範囲
転借人の義務の範囲は、
「転貸借」における債務の範囲、かつ
「賃貸借」における賃借人の債務の範囲
によって限定されます。

たとえば、最も重要な賃料債務についてみると──、
・賃借料が15万円、転借料が10万円のときは10万円
賃借料が10万円、転借料が15万円のときも10万円、となるわけです。

賃借人による賃借建物の転貸借

 転貸借の終了

賃貸借の終了と転貸借の終了
転貸借は、賃貸借を前提に成立しているので、転貸借が適法であっても、賃貸借が終了すれば、原則として、転借人は、転貸借を賃貸人に対抗することはできません。

しかし転貸人は、生活や経済活動の基盤として土地・建物を利用しているので、賃貸借が終了したからといって、直ちに退去を強いられるのは、転借人にとってあまりに不利益です。
そこで民法や判例は、次のように転借人保護を図っています。

合意解除と転貸借
「適法な転貸借」がなされた場合に、賃貸人と賃借人が賃貸借を合意解除しても、原則として合意解除を転借人に対抗することはできず、転貸借は終了しません。
そもそも、転貸借に承諾を与えて転貸借関係を認めていながら、後になって賃貸借を合意解除して転借人の権利を消滅させることは許されないからです(613条3項)

ただし、転借人に不信な行為がある(たとえば指定暴力団関係者である)など「合意解除することが、信義誠実の原則に反しない」ような特段の事由がある場合は、合意解除を転借人に対抗することができます。
これは確立した判例です(最判昭38.2.21ほか多数)

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適法な転貸借の場合、賃貸借を合意解除しても、原則としてその合意解除を転借人に対抗できず、転貸借は終了しないからね。

債務不履行と転貸借
「適法な転貸借」がある場合でも、「賃料不払い」など賃借人の債務不履行を理由に賃貸借が解除された場合には、その結果、賃借人は転貸人としての債務が履行不能となるために、賃貸借終了と同時に転貸借も終了します。
転借人は、転借権を賃貸人に対抗できず、賃借物を返還しなければなりません(最判昭36.12.21)

この場合、賃貸人が賃貸借を解除するには、賃借人に対して催告すれば足り、転借人に通知等をして、賃料の代払いにより「債務不履行状態を解消させる機会」を与える必要はありません(最判平6.7.18)

期間満了による転貸借の終了
「建物」の転貸借の場合に、賃貸借が「期間の満了」または「解約申入れ」によって終了するときは、建物の賃貸人は、転借人にその旨の通知をしなければ、賃貸借の終了を転借人に対抗することができません(借地借家34条)
「期間満了」によって賃貸借が終了したからといって、当然に転貸借が終了するわけではなく、かならず通知が必要です。
転借人に退去の期間を与えるためです。

2|土地賃借権の転貸・譲渡

土地賃借人が、その「所有建物」を第三者に賃貸した場合と譲渡した場合ついて確認しておきましょう。

賃借人による所有建物の譲渡と賃貸借

建物の賃貸と承諾
建物の賃貸は「賃借地の使用」を伴う
土地の賃借人が、その「所有建物」を第三者に賃貸する場合は、建物賃借人が賃借地を使用することになります。
この使用について、土地賃貸人の承諾は不要です。

建物所有を目的とする土地賃貸借では、土地賃借人が賃借地上に建物を建てて「自ら居住する」だけでなく、第三者に建物を賃貸して「賃借地を使用させる」ことは、土地賃貸人も当然に予想・容認しているものとみるべきだからです。

土地賃借人が、その「所有建物」を第三者に賃貸することは、建物の使用収益であって、土地の転貸にはあたらないのです。

※ なお「賃借地」を転貸するのは、まさに「転貸」ですから承諾が要ります。

建物の譲渡と承諾
建物の譲渡は「賃借権の譲渡」を伴う
一方、土地の賃借人が、その「所有建物」を第三者に譲渡する場合は、同時に土地賃借権の譲渡を伴うので、特別の事情のない限り、賃借権譲渡について、土地賃貸人の承諾が必要です(最判昭47.3.9)
なにしろ「賃借人が交替」しますからね。

賃貸人の承諾を得て土地賃借権が譲渡されると、旧賃借人の地位は譲受人に移転し、旧賃借人は賃貸借関係から離脱します。
以後、土地の新しい賃貸借関係は、賃貸人と譲受人(新賃借人)間で存続することとなります。

3|無断譲渡・無断転貸したら即解除?

原 則
先述のように、賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲渡したり、賃借物を転貸することはできません。
これに違反した場合、賃貸人は「契約を解除」できるというのが原則です。

 なお、無断譲渡・無断転貸は「賃貸人に対抗できない」ため、賃貸人は、賃借人との契約を解除しなくても、賃借権の譲受人・賃借物の転借人に対して、所有権に基づいて賃借物の返還を請求し、また、不法行為による損害賠償を請求できます。

判例による原則の緩和
しかし判例は、この原則を緩和し、契約の解除権を制限してきました。

信頼関係破壊の法理|解除権の制限
つまり、賃借人が「賃貸人の承諾なく」賃借物を第三者に使用収益させていても、「賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合」には、無断譲渡・無断転貸を理由に契約を解除することはできない、としていわゆる「信頼関係破壊の法理」を確立するに至りました(最判昭39.6.30ほか多数)

賃貸借は、双方の相互信頼が継続する関係なので、こうした「信頼関係を破壊するような悪質な場合にだけ」解除できるとしたのです。
無断譲渡・無断転貸について、形式的な違反か実質的な違反かを判断したのです。

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賃貸人に無断で賃借物を第三者に使用収益させても、「賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合」は、契約解除はできないよ。

ステップアップ

信頼関係破壊の法理
この理論を認めた判例は多数あって、賃貸借においては、無断譲渡・無断転貸による契約解除、および、債務不履行による契約解除において採用されています。
つまり、無断譲渡・無断転貸があったというだけでは解除できず、また、債務不履行があったというだけでは解除できないのです。
相互の信頼関係を破壊したといえる程度の「無断譲渡・無断転貸」「債務不履行」でなければ、解除できないわけです。
たとえば判例は、「債務不履行」の事案について、「賃料不払の一事をもっては、まだ賃貸借の基礎たる相互の信頼関係を破壊するものとはいいがたく、これを理由に賃貸借を解除することは許されない」としています(最判昭43.6.21)

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説][問題1] 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲渡したり、賃借物を転貸することはできず、これに反したときは、賃貸人は契約を解除できるのが原則。
しかし無断転貸であっても、賃貸人に対する「背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるとき」は、契約解除はできない。正しい記述です。

[問題2] 適法な転貸借がある場合でも、賃借人Bの「債務不履行」により賃貸借が解除されれば、Bは転貸人としての債務が履行不能となるため、転貸借は、賃貸借の終了と同時に終了する。したがって、Aは、転借人Cに解除を対抗できるので、「対抗することができない」との記述は誤りです。

ポイントまとめ

 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲渡したり、賃借物を転貸することができず、これに違反したときは、賃貸人は契約を解除できる。
 賃貸人の承諾を得た「適法な転貸借」がある場合、転借人は「転貸借に基づく債務」を賃貸人に対して直接履行する義務を負う。
 適法な転貸借がある場合に、賃貸借が合意解除されても、転借人に不信な行為があるなど「特別の事情がある場合」を除いて、転貸借は終了しない。
 適法な転貸借がある場合でも、賃借人の債務不履行を理由に賃貸借が解除されたときは、賃貸借終了と同時に転貸借も終了する。
 土地賃借人が、その所有建物を第三者に賃貸する場合、土地賃貸人の承諾は必要ない
 土地賃借人が、その所有建物を第三者に譲渡する場合には、賃借権譲渡について、土地賃貸人の承諾が必要である。
 賃借人が、賃貸人の承諾なく、賃借物を第三者に使用収益させていても、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、契約解除はできない(信頼関係破壊の法理)。

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