|更新日 2021.02.16
|公開日 2017.07.18

32年間の出題傾向|32年間で16問出題されている頻出テーマです。

内訳は、一般原則2問、転貸借7問、敷金4問、総合3問となっています。平成25年~令和2年(2013~2020)までの8年間で6問も出題。
なお、判決文問題は2問で、転貸借(平27年|2015)と、通常損耗(平30年|2018)でした。
どのテーマも重要ですから広く勉強する必要があります。

得点のカギ次の基本ポイントをおさえましょう。
1 賃貸人の修繕義務
2 一部滅失等による賃料減額等
3 原状回復義務の例外
4 賃貸人の地位の移転
れいちゃん01

賃貸借はどんなのが出るの?

たくちゃん02

転貸借や敷金が多いね。
でも賃借人の義務などの基本項目も無視してはダメだよ。
難しい選択肢が多くあっても、その中の1選択肢の基本項目のおかげで正解できた、なんてことも珍しくないからね。

1|賃貸借の意味

意 味

土地やマンションを借りている人は、イメージしやすいと思います。
賃貸借は、他人の土地や建物を借りて使用および収益し、その対価として賃料(地代や家賃)を支払い、契約が終われば賃借物の返還を約するという契約です。

賃料を支払う、つまり有償契約であるという点が、無償(無料・ただ)で借りる「使用貸借」と根本的に違います。

土地や建物を使用収益するためには、売買によりその所有権を取得する方法もありますが、多額の費用がかかります。

「賃貸借」によれば、所有者が利用しない期間だけ借り受けて使用収益することができ、利用の対価を賃料として、いわば分割的に支払えるので、所有者と利用者の双方にとって大変都合がよくなります。
そのため、賃貸借は不動産をはじめ、動産についても(自動車・パソコン機器などのリース契約)多方面で利用されています。

借地借家法との関係
ところで、土地やマンションを借りる場合には、民法と借地借家法のどちらが適用されるのでしょうか。
両者の関係を確認しておきましょう。

もともと土地・建物の賃貸借を対象とした民法の規定は、基本的には貸主・借主を「対等の立場」にあるものと想定して、契約自由の原則に委ねた内容になっているのですが、どうしても貸す側の立場が強くなり、借主が弱い立場に立たされるというのが現実です。

とくに「土地・建物」の賃貸借となると事態は深刻になります(家賃の値上げがいやなら出て行ってくれ、みたいに生活や経済活動の基盤を失うおそれがある)ので、借主が不当に不利にならないように民法よりももっときめこまかく特別に規定して、安心して他人の不動産を利用できるようにしたのが借地借家法というわけです。

民法は「原則法・一般法」で、借地借家法はその「特別法」という関係なのです。

したがって、とくに「建物」の賃貸借をするとか、建物の所有目的で「土地」の賃貸借をする場合には、まず借地借家法が民法に優先して適用されます(特別法は一般法に優先する)。

借地借家法は借主保護のための特別法であるため借主保護とは関係のない事項については、依然として民法の規定が適用されます。土地・建物の賃貸借だからといって、民法がまったく適用されないというわけではありません。

  • 民法で定める賃貸借 ← 原則規定
  • 借地借家法の賃貸借 ← 借主保護のための特別規定

2|賃貸人の義務

以下、賃貸人と賃借人の主な義務を確認しておきましょう。

 使用収益させる義務

賃貸人は、賃借人に賃借物を使用収益させる義務を負います。これこそが、賃貸人の「基本的な義務」です。

ここから、賃貸人は賃借物を「引き渡すべき義務」を負い、使用収益に必要な「修繕義務」を負い、また第三者が賃借物の使用収益を妨害するときは、その「妨害を排除すべき義務」を負う、というように派生的な義務が生じます。

 修繕義務

賃貸人の義務
賃貸人は、賃借人に賃借物を使用収益させる義務があるので、使用収益に障害が生じれば、必要な修繕をする義務を負います。

したがって、賃貸人が保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができません。

ただし、賃貸人が、賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は契約を解除することができます。

なお、修繕が「賃借人の責めに帰すべき事由」によって必要となったときは、賃貸人に修繕義務は生じません。
賃借人に帰責事由(故意・過失・信義則違反)があるのに、賃貸人に修繕義務を課すのは公平ではないからです。

賃借人の修繕権限
修繕は、本来、賃貸人の義務です。
賃借物は賃貸人の所有物なので、物理的な変更を伴う修繕は、原則として処分権限がある所有者=賃貸人だけができます。
そのため、賃借人が自ら修繕できるのは、次の2つに限られています。

賃貸人が修繕しないとき
修繕が必要である場合に、①その旨を賃貸人に通知し、または、②賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当期間内に修繕をしない場合です。

急迫の事情があるとき
賃貸人の修繕をまっていたのでは、賃借物の損傷が拡大し使用収益ができなくなるおそれがあるからです。

パトモス先生講義中

賃借人も賃借物の修繕ができることが新設されたよ。

 費用償還義務

必要費は直ちに
上記の場合のように、賃借人が支出した修繕費や、故障したトイレの修理費のように、賃貸人が負担すべき必要費を賃借人が支出したときは、「賃貸借の終了前」でも直ちにその償還を請求できます。

有益費は賃貸借終了時に
借家の前の通路をコンクリート舗装するように、賃借人が、賃借物を改良するなどの有益費を支出したときは、賃貸借終了時に、賃借物の価格の増加が現存している限り、賃貸人は、その費用か増加額のどちらかを償還しなければなりません。

なお、賃貸人の請求があれば、裁判所は、償還について相当の期限を猶予することができます。

費用償還請求権の期間制限
賃借人の必要費・有益費償還請求権は、賃借物の返還時から1年以内に行使しなければなりません。

3|賃借人の義務

賃借人の主な義務は下記のとおりです。

 賃料支払い・用法義務ほか

賃料支払義務
賃借人は、使用収益の対価として賃料を支払わなければなりません。
賃料支払義務は、賃借人の義務の核心をなすものです。

一部滅失等による賃料減額・契約解除

賃料の当然減額
「賃借物の一部」が、滅失その他の事由で使用収益ができなくなった場合に、それが「賃借人の責めに帰することができない事由」によるものであるときは、「使用収益ができなくなった部分の割合に応じて」賃料は当然に(請求なしに)減額されます。

賃料は、使用収益の対価として日々発生しているので、一部が使用できなくなっ場合には、賃料も当然にその部分の割合に応じて発生しないと考えられるからです。

契約解除
また、残存部分だけでは賃借目的を達成できないときは、賃借人は契約を解除することができます。
契約目的を達成することができない以上、賃借人に帰責事由があるかどうかに関係なく解除が認められます。

パトモス先生講義中

一部滅失による減額は、賃借人に帰責事由があったら認められないけれど、一部滅失による契約解除は、帰責事由があってもできるからね。

用法・保管義務
賃借人は、契約や賃借物の性質によって定まった用法に従って、賃借物を使用収益しなければなりません(用法遵守義務)。
また、賃借物を返還するまで、善良な管理者の注意(善管注意義務)をもって賃借物を保管する義務を負います。

無断譲渡等をしない義務
詳細は[50|賃貸借2]をご覧ください。

 原状回復義務

賃貸借が終了すれば、賃借人は賃借物を返還しなければならず、また、賃借物に「損傷」が生じた場合には原状回復義務が生じます。

原 則
賃借物を「受け取った後に」これに生じた損傷がある場合には、賃貸借終了時の賃借物の返還に際して、賃借人は、その損傷を原状に復して返還しなければなりません。

2つの例外
ただし、次の2つの場合には原状回復義務はありません。

1 通常損耗や経年変化による損傷
通常の使用収益により生じた損耗や経年変化による損傷は、賃貸借に当然に予定されており、すでに賃料の中に含まれているからです。
したがって、賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負担させるには、「その旨の特約(通常損耗補修特約)が明確に合意されていることが必要」とするのが判例です(最判平17.12.16)

※ ここは判決文問題(平30年|2018)として出題されました。

2 賃借人の帰責事由でない損傷
損傷が「賃借人の責めに帰することができない事由」によるものであるときは、原状回復義務はありません。

4|賃貸人の地位の移転

賃貸不動産が譲渡された場合、賃借権に対抗要件が備わっていれば、賃借人は譲受人=新所有者に対して不動産賃借権を対抗できますが、その際の「賃貸人たる地位の移転」について、新民法は、確立した判例を明文化しました。

 賃貸不動産の譲渡と賃貸人の地位の移転

賃借権の対抗要件がある場合

譲受人に当然に承継される
賃借人が、不動産賃借権の対抗要件を備えている場合には、賃貸人たる所有者が、その賃貸不動産を譲渡したときは、賃貸人の地位も当然に譲受人に移転します。

「賃貸人としての地位」の移転について、とくには譲渡人と譲受人との「合意」は必要ありません。譲受人=新所有者は、賃貸不動産を買い受ければ、当然に旧所有者の賃貸借契約上の地位を承継するのです。

パトモス先生講義中

賃貸不動産が譲渡された場合に、賃借権の対抗要件を備えているときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転する。

賃借人の承諾は不要
また「賃貸人としての地位」の移転について、賃借人の承諾は不要です。

一般に「(債権者としての)契約上の地位の移転」は債務の引受けを伴うので、債務者=賃借人の同意が必要とされます。
しかし、賃貸物を使用収益させる賃貸人の債務は、その所有者であれば誰でも履行できるものであり、賃貸人の変更によって履行方法が異なるものではなく、賃借人が不利益を受けるおそれはないからです。
賃借人としては、従来どおり使用収益できればいいわけです。

「賃貸不動産を譲渡する」ことと「賃貸人たる地位の移転」とは表裏一体の関係にはありますが、異なる事項です。
前者は所有権(物権)の移動で、後者は賃貸人の地位(債権)の移動です。

ステップアップ

賃貸人たる地位の留保
賃貸不動産の譲渡の際に、賃貸人である譲渡人と譲受人との間で、「賃貸人たる地位」を譲渡人に留保する旨の合意をするとともに、譲受人が譲渡人に、その不動産を賃貸する旨の合意をしたときは、「賃貸人たる地位」は譲受人に移転しません。

譲渡人・譲受人は賃貸借の関係、譲渡人・賃借人は転貸借の関係が生じることになります。
賃貸人の地位の留保
そして、譲渡人・譲受人間の賃貸借が終了すれば、譲渡人に留保されていた「賃貸人たる地位」は、譲受人に移転し、そのまま譲受人賃借人間で直接的な賃貸借関係が生じます。

譲渡人は、賃貸不動産の所有権は譲渡するが、なお賃貸人にとどまって、良好な賃貸借を維持しながら引き続き賃料も受領できるメリットがあれば、このような合意も可能なわけです。

 合意による賃貸人の地位の移転

賃借権の対抗要件がない場合
対抗要件を備えていない賃貸不動産が譲渡された場合には、賃貸人の地位は、譲渡人と譲受人との地位譲渡の合意によって譲受人に移転します。
賃貸不動産の所有権を譲渡する契約とは別に、この合意が必要というわけです。
この場合も賃借人の承諾は不要です。

要注意

不動産賃借権の対抗要件
不動産賃借権は、その登記をすれば第三者に対する対抗要件を具備します。
対抗要件としては、さらに借地借家法で、賃借人保護のため登記に代わる簡便な方法が認められています。

賃貸人の地位の移転に関する「対抗要件」は、民法および借地借家法による対抗要件を意味しています。
 借地権の対抗要件
① 借地権の登記 または
② 借地人の登記建物の所有
「登記建物」は自分の所有建物を登記するため、賃借人1人でできるので、この点が保護になっています。
 借家権の対抗要件
① 借家権の登記 または
② 建物の引渡し
「建物の引渡し」だけで対抗要件を具備できる点が、保護になるわけです。

※ 試験の「民法問題」でも、「借地借家法」上の対抗要件を前提とした問題も出されますので、これらの対抗要件も覚えておきましょう。

 譲受人の登記・費用償還等

譲受人は登記が必要
賃貸不動産の譲受人が、賃貸人の地位の移転を受けたことを賃借人に対抗するには、賃貸不動産について所有権移転登記をする必要があります。
登記をしてはじめて、賃借人に対して賃料請求、契約解除などの権利を行使することができます。

賃貸不動産の所有権(物権)が移転した場合には、賃貸人の地位の「当然移転」「合意による地位の移転」「地位の留保」いずれであっても、物権変動の対抗要件としての所有権移転登記が必要なのです。

費用償還・敷金の承継
賃貸人たる地位が譲受人に移転すれば、賃借人に対する費用償還債務、および敷金返還債務は、譲受人が承継します。

5|妨害停止請求等

不動産賃借権の対抗要件を備えている賃借人は、次のような請求ができます。

妨害停止請求権
第三者が、賃借不動産の占有を妨害しているときは、第三者に対して妨害停止請求をすることができます。

返還請求権
第三者が、賃借不動産を不法に占有しているときは、第三者に対してその返還請求をすることができます。

いずれも賃借人を保護するためで、債権である「不動産賃借権」に基づいて行使することができます。ただし、妨害予防請求権までは認められていません。

すぐやる過去問チェック!

次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説][問題1] 賃貸人は賃貸物の使用収益に必要な修繕義務を負うから、「保存に必要な修繕」をする場合に、「修繕工事のため使用収益に支障が生じても」賃借人はこれを拒むことはできない。正しい記述です。

[問題2] 必要費は、借家における畳替えのように、通常の使用に適する状態に保存するための費用のこと。
貸主は、借主に賃借物を使用収益させる義務があるので、借主が「必要費を支出したとき」は、貸主に対しその償還を請求することができる。
正しい記述です。

ポイントまとめ

 賃貸人が保存に必要な行為をするときは、賃借人はこれを拒否できない。
 修繕の必要が、賃借人の帰責事由によるときは、賃貸人に修繕義務はない。
 賃貸人が必要な修繕をしないとき、または急迫の事情があるときは、賃借人に修繕権限が認められる。
 賃借人が必要費を支出したときは、賃貸借の終了前でも直ちにその償還を請求できる。
 「賃借物の一部」が賃借人の帰責事由によらずに滅失した場合には、賃料は「使用収益できなくなった部分の割合に応じて」当然に減額され、また残存部分だけでは賃借目的を達成できないときは、契約解除ができる。
…………………………
 賃借人は、賃借物をその用法に従って使用収益しなければならず(用法遵守義務)、また賃借物返還までは善管注意義務をもって保管しなければならない。
 賃貸借が終了すれば、賃借人は原則として、賃借物の受領後に生じた損傷について原状回復義務を負う。
 通常損耗や経年変化による損傷、および賃借人に帰責事由がない損傷については、原状回復義務はない。
 賃貸不動産が譲渡された場合、賃借人が賃借権の対抗要件を備えているときは、賃貸人たる地位も当然に譲受人に移転する。
10 賃貸不動産の譲渡の際に、譲渡人と譲受人との合意で、賃貸人たる地位を留保することができる。
…………………………
11 対抗要件のない賃貸不動産が譲渡された場合には、賃貸人の地位は、譲渡人と譲受人との合意によって譲受人に移転する。
12 賃貸不動産の譲受人が、賃貸人の地位の移転を受けたことを賃借人に対抗するには、対抗要件(所有権移転登記)を具備しなければならない。
13 第三者が、賃借不動産の占有を妨害したり、不法占有しているときは、対抗要件を備えた賃借人は、妨害停止および返還請求ができる。

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