|更新日 2020.12.22|公開日 2017.08.05

1|危険の移転

1 引渡し後のリスクは買主が負う
目的物(土地・建物)が滅失したり損傷した場合、その損害はだれが負うのか、つまり「危険の移転時期」が最も問題になる「売買」について、新民法は明確な規定を置きました(567条)

土地・建物が、その引渡し以後に「当事者双方の責めに帰することができない事由」によって滅失・損傷したときは、そのリスク(危険)は、買主が負担します。

つまり「引渡し後」に滅失・損傷があったときは、買主は、売主に対して契約不適合責任の追及(追完請求権・代金減額請求権・損害賠償請求権・契約解除権の行使)をすることはできず、代金全額の支払いを拒むこともできません。
「引渡し」を受けた以上、目的物は買主の支配下に入ったのであり、その後のリスクは買主が甘受すべきとされるのです。

「引渡しまで」は、売主(債務者)が負担していた滅失・損傷の危険(危険負担債務者主義の原則)は、「引渡し」により買主(債権者)に移転するわけです。
※ くわしくは[講義42|危険負担

考えてみれば、当然な気もしますよね。
「引渡しを受けて」もう住んでいるわけですから、自然災害で倒壊したからといって、残りの代金は支払わなくていいというのは、あまりに不公平ですね。

2 履行の提供があったときも同じ
目的物の「引渡し」を終えていなくても、履行の提供があった場合も同様の扱いがなされます。

つまり、売主が「履行を提供」したにもかかわらず、①買主がその受領を拒んで受領遅滞であったり、または、②受けることができない場合には、「履行の提供があった時以後」当事者双方の無責の事由によって滅失・損傷した危険は、買主がそのリスクを負い、履行の追完請求、代金の減額請求等は認められません。

2|買主の代金支払拒絶

売買契約が成立すると、買主には代金支払義務が生じます。
ただし、売主が目的物を引き渡さない限りは、同時履行の抗弁権により、買主は代金の支払いを拒絶できます。
そのほか、以下の場合には、買主は代金の支払いを拒絶することができます。

1 抵当権等の登記がある場合
購入した不動産に契約不適合の抵当権、先取特権、不動産質権の登記があるときは、買主は「抵当権等の消滅請求手続」が終わるまで、代金の支払いを拒絶できます。
なお、この手続きが遅れないようにするために、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権等の消滅請求をするよう請求することができます。

2 権利取得できないおそれがある場合
目的物について「権利を主張する者がある」などにより、買い受けた権利の全部あるいは一部を取得することができず、または失うおそれがあるときは、買主は、その「危険の程度に応じて」代金の全部または一部の支払いを拒絶することができます。

3|そのほかの論点

1 抵当権等がある場合の費用償還請求
買い受けた不動産に、契約不適合の「抵当権」や質権等があった場合、買主が費用を支出してその不動産の所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができます。

2 担保責任を負わない旨の特約
契約不適合を理由とする責任(担保責任)に関する民法の規定は任意規定ですから、契約自由の原則により、当事者間で「担保責任を負わない」旨の特約をすることも有効です。

しかし、売主が、
① 権利や目的物の契約不適合を知りながら告げずに、担保責任を免れる特約や、
② 自ら第三者のために設定・譲渡したことにより生じた契約不適合について担保責任を免れるとする特約をしても無効で、担保責任を免れることはできません。

ポイントまとめ

 土地・建物の引渡し後に「当事者双方の責めに帰することができない事由」によって滅失・損傷したときは、買主は、売主に対して契約不適合責任の追及をすることはできず、代金全額の支払いを拒むことができない。
 「引渡し」を終えていなくても、履行の提供があった場合も同様である。
 買い受けた不動産に、契約不適合の抵当権登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、代金支払いを拒むことができる。
 買い受けた不動産に、契約不適合の抵当権等があった場合に、買主の費用でその所有権を保存したときは、売主に費用償還請求ができる。
 担保責任を負わない旨の特約も有効だが、売主は、知りながら告げなかった事実については、責任を免れることができない。

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