|更新日 2021.02.14
|公開日 2019.11.26

32年間の出題傾向|手付の出題は3問。頻出テーマではありません。選択肢の1つとして出題されていることもあるので、やはり基本はおさえておきましょう。
得点のカギこの基本ポイントをおさえましょう。
・相手方の履行の着手
れいちゃん02

手付ってむつかしいの?

たくちゃん01

すごくやさしいよ。
履行の着手をシッカリとね。

1|売主の基本的義務

 対抗要件を具備させる義務

売買契約は、売主が目的物の所有権を買主に移転すること「約し」、買主がこれに対して代金を支払うことを「約する」ことによって成立し、効力を生じます。

売買契約により、売主は、買主に「権利を移転する義務」を負うほか、この権利の移転を第三者に対抗するための要件、つまり「対抗要件を備えさせる義務」を負わなければなりません(560条)

土地・建物の売買であれば登記、債権の売買(譲渡)であれば譲渡の通知をする必要があります。
この義務を負わないとする場合には、その旨の特約が必要です。

 他人の権利の移転義務

他人物売買でも契約は有効
購入した土地の一部が他人の所有に属していたというように、他人の権利を売買した場合でも、売買契約は、目的である権利が売主に属していることを要件にしていない(555条)ので、契約自体は有効です(最判昭25.10.26)

「他人の権利」を目的とする他人物売買では、売主は、その権利を「取得して」買主に移転する契約上の義務を負うことになります。
移転できない場合は、債務不履行責任が生じ、買主は契約を解除し、売主に帰責事由があれば、損害賠償を請求することができます(最判昭41.9.8)

「権利の全部」が他人に属する場合だけでなく、「一部」の場合でも、これを取得して買主に移転する義務があります。

2|手 付

不動産売買では、契約時から移転登記・残金決済・物件引渡しまで時間がかかり、その間、法律関係がやや安定しないため、通常、契約の時に、買主が売主に一定の金銭を「手付」として支払うのが慣行です。

手付には、①証約手付、②違約手付、③解約手付の3つの性格がありますが、特約がない場合は、民法は「解約手付」としています。

 解約手付

意 味

解約手付というのは、交付した手付を放棄して、あるいは、受け取った手付の倍額を返還して「契約を解除できる」という手付をいいます。

解除だけを目的とした手付であって、債務不履行を理由とする解除ではありません。

解約手付が交付された場合には、手付交付者は手付を放棄して、手付受領者は倍額を現実に提供して、契約を解除できます。

解約手付とすることで、相手方の承諾を得ず、かつ、損害賠償をすることなく契約を解消することが可能になるわけです。

宅建業法における手付
宅建業法は、不動産の売主である宅建業者に交付される手付について、売主は「代金の2割を超える手付」を受領してはならないとし、また、どのような意図で交付された手付であっても、それを「解約手付」として扱うとされています(業法39条)
これは、不動産取引に不慣れな買主を保護するためです。

 解約手付による解除の要件

履行の着手
解除しようとする者は、自ら履行に着手していても、相手方が履行に着手していなければ契約を解除できます。
相手方が「履行に着手した後」は、もはや解除はできません。
これは「履行に着手」して準備を開始した相手方が不測の損害を受けないよう保護する趣旨なのです(最判昭40.11.24)

たとえば「売主が履行に着手する前」であれば、買主は、中間金(代金の一部)を支払って「自ら」履行に着手しても、手付を放棄して契約を解除し、すでに支払った中間金の返還を求めることができます。
履行に着手した者からは、履行に着手していない者に対して解除することができるのです(同上最判)

現実の提供
手付交付者が契約を解除するには、解除の意思表示だけで足りますが、手付受領者が解除するには、手付の倍額を現実に提供しなければなりません。
単に「口頭」で手付の倍額を償還することを告げて「受領を催告する」だけでは足らないのです。

この点に関して民法は、「売主はその倍額を現実に提供して」契約の解除をすることができると定めています(557条1項)
ただ「実際の払渡し」までは不要であり、「現実の提供で足りる」というのが判例です(最判平6.3.22)

損害賠償請求はできない
解約手付の趣旨は、手付だけの損失を覚悟すれば契約を解除できるというものであって、債務不履行による解除ではないので、解約手付を理由に損害賠償の請求はできません。

Topics

契約が解除されないで履行されたときは、解約手付はその目的を達成せず、不当利得として返還すべきですが、実際上は代金の一部に充当されるのが一般の例となっています。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 手付の交付があった場合、自分が履行に着手していても、相手方の履行着手前であれば、契約を解除することができる。
しかし、相手方である「買主が履行に着手」してしまえば、売主はたとえ「手付金の倍額」を支払っても解除することはできないのである。
記述は誤りです。

ポイントまとめ

 売主は買主に対し、権利の移転について、登記など対抗要件を備えさせる義務を負う。
 他人の権利を売買した場合、売主はその権利を取得して買主に移転する義務を負う。
 解約手付は、交付した手付を放棄して、あるいは、受け取った手付の倍額を返還して契約を解除できる手付をいう。
 自ら履行に着手していても、相手方の履行着手前であれば、解除できる。
 手付受領者が解除するには、「手付の倍額」を現実に提供しなければならない。
 解約手付により解除しても、これを理由に損害賠償請求はできない。

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