|更新日 2020.12.22|公開日 2017.08.05

32年間の出題傾向|32年間で11問出題。やや頻出テーマといえます。多くは、売買契約や債務不履行に関連して出題されています。平成22年(2010)の判決文問題(難問)以来、10年間出題されていませんでしたが、令和2年(2020)に、同じく判決文問題(基本)として出題されました。
ほかのテーマとも関連が深いので、必ずマスターする必要があります。
得点のカギ次の基本的なポイントを押さえておきましょう。
1 催告解除の要件
2 無催告解除の要件
3 解除の効果と第三者
れいちゃん01

ここの得点ポイントは?

たくちゃん02

やはり、解除できる要件とその効果だね。
売買契約や債務不履行と関連付けて理解しようね。

1|解除の意味と趣旨

しっかりと契約をしたはずなのに、それが守られない。何度催促しても、ウンともスンとも言ってこない。
こんなことは、私たちのふだんの生活でもけっこうありますよね。
しかし、土地・建物の売買となると、事態は深刻です。

解除の意味

契約の解除というのは、契約の効力を一方的に消滅させる意思表示をいいます。
一方的な意思表示によって、すでに成立している契約を解消させて、その契約がはじめから存在しなかったことにするのです。

たとえば、不動産の売買契約で、とっくに期限が過ぎているのに売主がその不動産を引き渡さない。そんなとき、買主としてはその引渡しを請求するとともに、履行遅滞=債務不履行を理由に損害賠償を請求したり、あるいは裁判所に訴えて履行を強制することも可能です。
しかしこれらの場合には、買主も自分の代金債務を履行しなければなりません。
ただ今後も、このような売主とやっていくのは相当やっかいなものです。

買主としては、「不誠実な相手方」との契約を解消して、むしろ新たに売主を探したほうがいいのではないでしょうか。

後述するように、解除すれば自分の債務は消滅するうえに、相手方に責任があれば損害賠償を請求することもできますので、解除する者(解除権者)にとっては肩の荷が下りるというわけです。

解除の趣旨

契約が有効に成立すると、当事者は互いに契約に拘束されます。
しかし、履行されない契約にいつまでも拘束されるのは相当ではありません

当事者の一方がその債務を履行しないときに、相手方を救済するための手段として解除を認めることにより、契約の効力を消滅させて、自己の負担していた債務を免れることができます。
解除の趣旨はこの点にあります。

2|催告を必要とする解除

解除を定めた民法の規定は「債務不履行」を理由とする解除です。
債務不履行のタイプには、履行遅滞、履行不能、不完全履行がありますが、催告を必要とする解除は、履行遅滞および不完全履行を理由とするものです。

 催告による解除

1 履行の催告
当事者の一方がその「債務を履行しない場合」には、相手方は相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときに解除権が発生し、契約を解除することができます(541条)

解除する前に「催告」を必要とするのは、債務者にもう1度履行の機会を与えようとする趣旨で、いったん有効に成立した契約ですからなるべく存続させることが適切だと考えられたからです。

「債務を履行しない場合」というのは、履行遅滞のほか、不完全履行を含みます。
不完全履行は、一応の履行はなされたが、その履行が「債務の本旨」に従ったものとはいえない、たとえば、売主が引き渡した建物に数カ所雨漏りがするなど、契約内容に適合しない場合をいいます。

履行が遅滞している場合には、相手方が「履行遅滞」にあることが必要です。

ここで、同時履行の抗弁権が思い浮かびましたか。
売買のような双務契約の場合には、双方に「同時履行の抗弁権」がありますから、相手方が履行期に履行しないからといって、必ずしも「履行遅滞」にあるわけではありませんでしたね。
「同時履行の抗弁権」があるからこそ、相手方は「履行遅滞」とはならないのですから、「履行遅滞」にするには、この抗弁権を消滅させることが必要でした。

そのためには、みずから「履行の提供」をして、「履行遅滞」となった相手方に対して「催告」し、それでも履行がないときに解除できるわけです。
「履行の提供」もせずに、「催告」するだけで解除することはできません。

参考[講義41|同時履行の抗弁権

2 軽微な不履行は解除できない
ただし、催告期間を経過した時における債務不履行が「その契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」は、解除することはできません(541条ただし書)

たとえば、土地・建物の売買であれば、その契約や不動産取引に通用している社会通念などから判断して、契約目的の達成に必須的でない「付随的義務」や「僅少部分」の不履行にすぎない場合には、契約を解除することはできないのです。

※ ここは、令和2年(2020)に、判決文問題(問3)として出題されました。

3 解除の意思表示は撤回できない
なお、いったんなされた解除の意思表示は、撤回することができません。
相手方の立場を不安定にするからです。

ステップアップ
1 不相当に短い催告期間
催告期間が不相当に短いときは、その催告は有効でしょうか。
それとも、改めて相当の期間を定めて「再度の催告」をすべきでしょうか。

判例は、催告期間が「不相当に短いとき」であっても、その催告は有効であり、催告の時から起算して客観的に相当期間を経過すれば、改めて催告しなくても解除できるとしています(最判昭44.4.15)相手方はすでに履行遅滞にあるのですから、催告した以上、再度の催告は不要とされるのです。

2 解除権に条件をつけられるか
解除の意思表示に条件をつけることは、相手方の立場を不安定にするため、原則として許されません。
しかし、たとえば「1週間以内に履行がないときは、改めて解除の意思表示をしなくても、契約は解除されたものとする」というような条件であれば、すでに履行遅滞にある相手方をとくに不利益にするものではないので、有効とされます。

要注意
債務者の帰責事由は不要
解除は、債務者に帰責事由がなくてもすることができます。
解除は、損害賠償請求とは異なり、債権者を契約の拘束から解放する制度であるため、たとえ「債務者に帰責事由がない」場合でも、履行されない契約に拘束されるのは相当とはいえないからです。

3|催告を必要としない解除

1 催告せずに直ちに解除できる
履行不能の場合です。
次の1~4の場合には、債権者は「催告をすることなく」直ちに契約を解除することができます(542条)履行期前であっても、契約全部を解除できます。
「債務者の帰責事由が不要」である点は、「催告を必要とする解除」と同じです。

 債務の全部の履行が不能であるとき
たとえば、売主の不注意により、あるいは自然災害等により、売買の目的物が滅失した場合のように、およそ債務の履行が不可能な場合を指します。

 債務者が全部の履行を拒絶する明確な意思表示があるとき
「履行を拒絶する趣旨の言葉を発した」だけでは不十分で、「履行を拒絶する意思を明確に表示した」ことが必要です。

 残存部分のみでは契約目的を達成できないとき
債務の一部の履行が不能である場合に、または債務の一部の履行を拒絶する債務者の「明確な意思表示」がある場合に、残存部分のみでは契約目的を達成できないときです。

 債務の履行がなく、催告をしても契約目的を達するのに足りる履行の見込みがないことが明らかであるとき

2 一部が履行不能の場合
次の5~6の場合にも、債権者は「催告せずに」直ちに契約の一部を解除することができます。

 一部の履行が不能であるとき
 債務者が一部の履行を拒絶する明確な意思表示があるとき

3 債権者の責めに帰すべき事由の場合
なお、債務不履行が「債権者」の責めに帰すべき事由(帰責事由)によるものであるときは、債権者は、契約を解除することができません(543条)

たとえば「売主」が建物を引き渡す債務を負っている場合に、建物の滅失について「買主」に帰責事由があるときは、債権者である買主は契約を解除できないのです。

解除は、債権者が契約の拘束力から解放されることを認める救済手段であり、帰責事由のある債権者にこのような救済を認める必要はないからです。

4|解除の効果

契約が解除された効果として、「当事者間の関係」と「第三者との関係」を確認しておきましょう。

 当事者間の関係

1 原状回復義務
契約が解除されると、債権・債務は、はじめにさかのぼって消滅するため、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務、つまり原状回復義務を負うこととなります。
互いに、相手方を「契約がなかった状態に戻す」わけです。

まだ履行されていない「未履行債務」は履行する必要はなくなり、すでに履行された「履行済み債務」であれば、受けとっていた物や使用利益を互いに返還することとなります。

金銭を返還する場合は、受領時からの利息をつけなければなりません。
※ 「解除の時点」からの利息ではないことに注意。

2 使用利益の償還義務
当事者は、解除されるまでに受けていた使用上の利益も償還する必要があります。
原状回復義務の内容として、たとえば買主の使用利益の償還義務について、判例は次のようにいっています。

 最判昭34.9.22
「特定物の売買により買主に移転した所有権は、解除によって当然遡及的に売主に復帰すると解すべきであるから、その間、買主が所有者としてその物を使用収益した利益は、これを売主に償還すべきものであること疑いない」

 最判昭51.2.13
「売買契約が解除された場合に、目的物の引渡しを受けていた買主は、原状回復の内容として、解除までの間に目的物を使用したことによる利益を売主に返還すべき義務を負う」

3 損害賠償義務
解除によって契約が消滅しても、すでに生じた損害は消滅しないので、これを賠償させる必要があります。

結局、買主が解除すると、売主に対して、①代金返還請求、②受領時からの利息支払請求、③損害賠償請求の各請求をすることになります。

4 原状回復義務と同時履行
双方の原状回復義務は、売買のような双務契約では同時履行の関係に立ちます。
売主の代金返還債務と、買主の目的物返還債務は、同時に履行する必要があります。

 第三者との関係

第三者に対しては、解除前と解除後に分けて考える必要があります。

1 解除前の第三者
上述したように、契約が解除されると、その効果として、契約上の債権・債務ははじめにさかのぼって消滅し、当事者は契約を結ばなかった状態に戻ります解除の遡及効
つまり、はじめから当事者に権利移転がなかったこととなるので、解除される前に権利を取得していた第三者も同様に、はじめからその権利を取得しなかったこととなって、権利を失ってしまいます。

しかし、民法は、他人の債務不履行によって第三者が権利を失うのは行きすぎと考えて、「第三者の権利を害することはできない」と定め、解除の遡及効を制限して第三者の利益を保護しているのです。

ただし、保護されるためには、「登記をする」などの対抗要件を備えておく必要があります(最判昭33.6.14)
保護に値する第三者となるには、権利者としてなすべきことを全部終えていなければならない、という理由なのです。

要注意
第三者の善意・悪意は問題とならない
錯誤や詐欺などのように契約成立時の瑕疵による「取消し」とは違って、解除は有効に成立した契約後の事情による契約の解消ですから、第三者の善意・悪意は問題になりません。
第三者が、債務者(前権利者)の不履行状態を知っていたとしても、不履行は解消されることも十分にあり、それだけで悪意の第三者が責任を問われる理由にはならないのです。
新民法も、旧民法と同様に「第三者の権利を害することはできない」としているだけで、特には第三者の善意・悪意を問題とはしていません。

2 解除後の第三者
「解除された後」に第三者となった者との関係は、177条の対抗関係となります。

Aが、Bとの契約を解除した後に、第三者が現れた場合には、
① 解除によるB→Aの所有権復帰
② 解除後のB→第三者への所有権移転とは、二重譲渡と同様に対抗関係となり、その優劣は対抗要件(登記)で決まります。

Aが解除しても、その所有権復帰の登記をしないうちに、「解除後」の第三者が先に登記を備えてしまえば、Aは第三者に所有権を対抗できません。
177条の原則どおり、先に登記をしたほうが権利を取得できるのです。

5|その他の注意点

1 解除権の不可分性
当事者の一方が数人あるときは、契約の解除は、その全員から、または全員に対してのみ、することが必要です。これを解除権の不可分性といいます。
一部の者とだけ解除の効果を認めると、法律関係が複雑になるからです。

2 解除権の消滅
解除権が生じたというだけで、当然に解除の効果が生じるものではないので、解除権発生後も、債権者は債務者に対し、引き続き履行の請求をすることができます。
実際に解除するかどうかは債権者の意思に委ねられているわけです。

したがって、これによって生じる債務者の地位の不安定さを解消するために、解除するかどうかの催告権が債務者に認められています(547条)

解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、もし、催告期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は消滅し、もはや解除できなくなります。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説][問題1] 買主の代金不払=債務不履行を理由とする解除によって契約が消滅しても、すでに生じた損害は消滅しないので、これを賠償させる必要がある。
「損害賠償請求はできない」との記述は、誤りです。

[問題2] 解除前の第三者(抵当権者)の問題。
売主Aが解除する前に、すでに対抗要件である抵当権設定登記を備えていた抵当権者Cに対しては、Aは、抵当権の消滅を主張できない。
契約を解除しても、その解除前に「対抗要件」を備えた第三者の権利を害することはできない。正しい記述です。

ポイントまとめ

 催告による解除
(原則)当事者の一方が債務を履行しない場合、相手方は相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときは契約を解除できる。
(例外)ただし、催告期間の経過時における債務の不履行が軽微であるときは、解除できない。
 催告を必要としない解除
履行不能(①~④)の場合には、債権者は催告することなく直ちに解除できる。
① 全部の履行が不能のとき
② 債務者が全部の履行を拒絶する明確な意思表示があるとき
③ 残存部分のみでは契約目的を達成できないとき
④ 契約目的の達成に足りる履行の見込みがないことが明らかなとき
 解除は、相手方に帰責事由がなくてもすることができる。
 債務不履行が、債権者の帰責事由によるときは、債権者は、契約を解除できない。
 契約が解除されると、当事者双方は、互いに原状回復義務を負う。双方の義務は同時履行の関係にある。
 原状回復義務の内容には、使用利益の償還義務も含まれる。
 契約を解除しても、その解除前に対抗要件を備えた第三者の権利を害することはできない。第三者の善意・悪意は問題とならない。
 解除前の第三者は解除の遡及効の問題、解除後の第三者は対抗問題である。
 解除権の消滅 解除権の行使に期間の定めがないときは、相手方は解除権者に対し、相当の期間を定めて解除するかどうかの催告をし、期間内に解除の通知を受けないときは、相手方の解除権は消滅する。

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