|更新日 2020.12.22|公開日 2017.08.04

32年間の出題傾向32年間でわずかに3問。平成19年(2007)に出題されて以後、13年間出題なしです。
民法改正に伴い、条文は従来の3条から1条(536条)だけに整理されるなど、大きく改正されたテーマです。
選択肢として出題される可能性も捨てきれないので、確認はしておきたいところです。
得点のカギ次の基本的なポイントを押さえておきましょう。
1 危険負担の具体例
2 履行拒絶権
れいちゃん02

危険負担って、なんだかむつかしそうね。試験に出るの?

たくちゃん01

近年は全然出てないね。
でも大改正があったテーマだから、念のため注意しておこうね。

1|危険負担の意味

危険負担というと、なんだか難しいイメージがしますね。ふだんの生活でもほとんど使うことのない用語ですし。

 意 味

意 味

危険負担というのは、契約成立後に、目的物を「引き渡す前」に、台風・地震などの自然災害とか類焼・放火などといった当事者双方の責めに帰することができない事由によって目的物が滅失したために「履行不能」となった場合に、一方の債務、たとえば「代金の支払債務」はどうなるのか、という問題なのです。

※「当事者双方の責めに帰することができない事由」というのは、不可抗力あるいは第三者に帰責事由がある場合をいいます。

建物の売買でいえば、「A所有の建物について、A・B間で売買契約が成立し、登記も移転した後に、建物の引渡し前に、台風によってその建物が滅失してしまった。はたして、買主Bは代金を払わなければならないのか」という形で問題となります。

危険負担

 債務者主義と債権者主義

解決方法としては、次の2つが考えられます。要するに、他方債務は「消滅する」か「存続する」か、のどちらかなんです。

一方の債務が、履行不能によって消滅した場合、
 他方債務も消滅するという立場
売主の建物引渡債務は消滅するが、買主の「代金債務も消滅する」というわけで、売主は代金を請求することはできません。

こうすると、履行不能による損失を負担するのは、履行不能となった債務についての売主=債務者ということになるので、これを「債務者主義」といいます。

 他方債務は存続するという立場
売主の建物引渡債務は消滅するが、買主の「代金債務は存続する」ので、売主は代金を請求することができ、買主は代金を払わなければなりません。

損失は、履行不能となった債務についての買主=債権者が負担することになるので、これを「債権者主義」といいます。

だと、買主は建物は得られないが、代金も払わなくてよいこととなり、売主は建物を失い、代金も得られない。
だと、買主は建物は得られないのに、代金は払わなくてはならず、売主は建物を失ったが、代金は得られる。

つまり、災害等による不動産滅失のリスク(危険)は、では売主が、では買主が背負い込むことになり、そのためこれを危険負担と呼ぶわけです。

※ 危険負担では、債権者・債務者の区別は「履行不能となった債務」を基準に判断されます。
建物の売買でいうと、「履行不能となった建物の引渡債務」については「売主」が債務者、「買主」が建物引渡の債権者となりますので、くれぐれも注意してください。

2|民法は債務者主義

 買主の履行拒絶権

|買主は履行拒絶できる|
以上のように、不可抗力など当事者双方の責めに帰することができない事由によって、売主の債務が「履行不能」となった場合には、買主は、代金債務の履行を拒むことができます(履行拒絶権)

売主の建物引渡債務が履行不能により消滅したからといって、当然に買主の代金債務も消滅する、というわけではありません。

売主は、代金を請求しても「拒絶」されますから、結局、履行不能のリスク(危険)は、引渡しの債務者である「売主が負担する」ことになります(債務者主義)

ステップUP

|契約の解除との関係|
売主の引渡債務が「不可抗力」であれ、売主の「帰責事由」のよるものであれ、履行不能となった以上は、買主としては「履行不能」を理由に契約を解除(542条1項1号)すれば、売買代金の支払いを免れることができるわけで、何もわざわざ「履行を拒むことができる」(536条1項)などという危険負担の規定を置く必要はないように思われますね。

確かに、解除権を行使できるときには、危険負担の規定の意義は乏しいものですが、民法としては、解除権を行使すべき相手方の所在が不明のときや、解除権の不可分性(544条)のために解除権を行使できないときなどを考慮して、解除がなされるまでは債務の履行拒絶ができるとして、買主=債権者の利益を保護したわけです。

 注意すべき点

1|売主の帰責事由によるとき
履行不能が、売主=債務者の帰責事由によるときは、売主は「債務不履行責任」を負うことになります。
売主は、本来の債務の履行に代わる「填補賠償債務」を負担することになるわけで、これは、危険負担の問題ではなく「債務不履行の問題」です。

2|買主の帰責事由によるとき
履行不能が、買主=債権者の帰責事由によるときは、買主は、自己の代金債務の履行を拒絶することはできません

3|特約があるとき
危険負担の規定は任意規定なので、当事者がこれと異なる特約をすることは問題ありません。
たとえば「目的物引渡しまでは売主が負担する」という特約があれば、自然災害により目的物が滅失すれば、買主の代金支払債務も同時に消滅することになります。

ステップUP

|利益償還義務|
履行不能が、買主の帰責事由によるときは、買主は代金債務の履行を拒絶することはできず、売主は代金請求権を行使できるわけですが、この場合、売主は、自己の債務(引渡債務)を免れたことによって利益を受けることがあります。

たとえば、建物の保管費用などの支出を免れるなど、債務を免れることによって、利得を得たような場合です。
このときは、この利得を買主に償還しなければなりません。

|代償請求権|
履行不能を生じたのと同一の原因によって、売主=債務者が、債務に代わる代償的利益、たとえば、類焼によって建物の焼失に基づく保険金請求権を得たときは、買主=債権者は、この請求権に「代償請求権」を行使することができます(422条の2)
※ くわしくは[講義33|債務不履行と損害賠償]をご参照ください。

ポイントまとめ

 危険負担は、契約成立後に、目的物の引渡し前に、当事者双方の責めに帰することができない事由により履行不能となったときの問題である。
 この場合、建物の売買であれば、買主は、代金債務の履行を拒むことができる(履行拒絶権)。
 履行不能が「債務者」の帰責事由によるときは、危険負担ではなく「債務不履行」の問題である。
 履行不能が「債権者」の帰責事由によるときは、債権者は、自己の債務の履行を拒むことはできない
 この場合、債務者は「自己の債務を免れたことによって利益を得たとき」は、これを債権者に償還しなければならない。
 当事者が、特約で危険負担の規定と異なる内容を定めたときは、特約に従う。

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