|更新日 2021.02.14
|公開日 2017.08.04

32年間の出題傾向|32年間でわずかに3問。平成19年(2007)に出題されて以後、13年間出題なしです。民法改正に伴い、条文は従来の3条から1条に整理されるなど、大きく改正されたテーマです。
選択肢として出題される可能性も捨てきれず、基本事項だけでも確認を。
得点のカギ次の基本ポイントをおさえましょう。
1 危険負担の具体例
2 履行拒絶権
れいちゃん02

危険負担って、なんだかむつかしそうね。試験に出るの?

たくちゃん01

近年は全然出てないね。
でも大改正があったテーマだから、念のため注意しておこうね。

1|危険負担の意味

 意 味

危険負担というと、なんだか難しいイメージがしますね。ふだんの生活でもほとんど使うことのない用語ですし。

意 味

危険負担というのは、たとえば建物の売買契約成立後に、「引き渡す前」に、建物が台風・地震などの自然災害など当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失したために「履行不能」となった場合、買主の「代金の支払債務」はどうなるのか、建物滅失の損失(危険)をどちらが負担するのか、という問題なのです。

売買契約などの双務契約は、当事者の債務が対価的な関係にあるために、「一方が消滅すれば、他方も消滅するのが公平ではないか」と考えられるからです。

具体的には「A所有の建物について売買契約が成立した後、引渡し前に、その建物が天災によって滅失した場合、売主Aは、買主Bに代金を請求できるか」という形で問題となります。

危険負担

「当事者双方の責めに帰することができない事由」というのは、不可抗力あるいは第三者に帰責事由がある場合をいいます。

 債務者主義と債権者主義

解決方法として2つの立場があります。

他方債務も消滅するという債務者主義
売主の建物引渡債務は消滅するが、買主の「代金債務も消滅する」というわけで、売主は代金を請求できません。

とすると、損失を負担するのは、「履行不能となった引渡債務」についての売主=債務者ということになるので、これを「債務者主義」といいます。

他方債務は存続するという債権者主義
売主の建物引渡債務は消滅するが、買主の「代金債務は存続する」というわけで、買主は代金を払わなければなりません。

損失を負担するのは、「履行不能となった引渡債務」についての買主=債権者ということになるので、これを「債権者主義」といいます。

Topics

危険負担では、債権者・債務者の区別は「履行不能となった債務」を基準に判断されます。建物の売買でいうと──、
「履行不能となった建物の引渡債務」については、「売主」が債務者、「買主」が債権者となります。注意してください。

2|新民法は債務者主義

新民法は、損失は売主が負担する債務者主義を採用し、買主に履行拒絶権を認めました。

 買主の履行拒絶権

買主は履行拒絶できる
不可抗力などによって、売主の引渡債務が「履行不能」となった場合には、買主は、代金債務の履行を拒むことができます(履行拒絶権)。

売主の引渡債務が履行不能により消滅したからといって「当然に買主の代金債務も消滅する」というわけではありません。

売主は、代金を請求しても「拒絶」されますから、結局、履行不能のリスク(危険)は、引渡し債務者である売主が負担することになります。

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不可抗力で売主の債務が履行不能になったときは、買主は代金支払いの履行を拒むことができることになった。

ステップアップ

契約の解除との関係
売主の引渡債務が「不可抗力」であれ、「帰責事由」によるものであれ、履行不能となった以上、買主としては履行不能を理由に契約を解除(542条1項)すれば、売買代金の支払いを免れることができるわけで、何もわざわざ「履行を拒むことができる」(536条1項)などという危険負担の規定を置く必要はないように思われます。

確かに、解除権を行使できるときには、危険負担の規定の意義は乏しいものですが、新民法は、解除権を行使すべき相手方の所在が不明のときや、解除権の不可分性(544条)のために解除権を行使できないときを考慮して、解除がなされるまでは債務の履行拒絶ができるとして、買主=債権者の利益を保護したわけです。

 注意すべき点

売主の帰責事由によるとき
履行不能が、売主=債務者の帰責事由によるときは、売主は「債務不履行責任」を負うことになります。
売主は、本来の債務の履行に代わる「填補賠償債務」を負担することになるわけで、これは、危険負担の問題ではなく「債務不履行の問題」です。

買主の帰責事由によるとき
履行不能が、買主=債権者の帰責事由によるときは、買主は、自己の代金債務の履行を拒絶できません(536条2項)

特約があるとき
危険負担の規定は任意規定なので、当事者がこれと異なる特約をしたときは、特約に従います。
たとえば「自然災害による建物滅失の危険は、建物引渡しまでは売主が負担する」との特約があれば、売主の建物引渡債務も、買主の代金支払債務も共に消滅します。

ステップアップ

利益償還義務
履行不能が、買主の帰責事由によるときは、買主は代金債務の履行を拒絶することはできず、売主は代金請求権を行使できるわけですが、この場合、売主は、自己の債務(引渡債務)を免れたことによって利益を受けることがあります。

たとえば、建物の保管費用などの支出を免れるなど、債務を免れることによって、利得を得たような場合です。
このときは、この利得を買主に償還しなければなりません(536条2項)

代償請求権
履行不能を生じたのと同一の原因によって、売主=債務者が、債務に代わる代償的利益、たとえば、類焼によって建物の焼失に基づく保険金請求権を得たときは、買主=債権者は、この請求権に「代償請求権」を行使することができます(422条の2)
※ 詳細は[32|債務不履行1]をご参照ください。

ポイントまとめ

 危険負担は、契約成立後に、目的物の引渡し前に、当事者双方の責めに帰することができない事由により履行不能となったときの問題である。
 この場合、建物の売買であれば、買主は、代金債務の履行を拒むことができる(履行拒絶権)。
 履行不能が「債務者」の帰責事由によるときは、危険負担ではなく「債務不履行」の問題である。
 履行不能が「債権者」の帰責事由によるときは、債権者は、自己の債務の履行を拒むことはできない
 この場合、「自己の債務を免れたことによって利益を得た」債務者は、これを債権者に償還しなければならない。
 当事者が、危険負担の規定と異なる特約を定めたときは、特約に従う。

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