|更新日 2021.1.07
|公開日 2017.7.24

32年間の出題傾向|32年間で9問出題されています。Cランクといっても、Bランクに近い出題数です。
直近では、平成30年(2018)に「譲渡禁止特約」について基本的な問題が出題されました。
頻出テーマではありませんが、やはり基本だけはおさえておきましょう。
[改 正] 大幅に改正されました。
れいちゃん02

債権譲渡ってむつかしそう。
とくに気をつけるテーマは何?

たくちゃん01

あまりなじみがないからね。
譲渡制限特約(旧民法の譲渡禁止特約)がポイントだね。

1|債権譲渡の意味

 債権譲渡の意味と必要性

代金の支払いを求める金銭債権などの債権は、財産として独立の価値をもっているので、土地や建物を譲渡するのと同様に、民法は、原則として債権に譲渡性を認めています。

わかりやすい例をみてみましょう。
たとえば、AはBに1000万円を貸していますが(金銭債権)、支払期日(履行期)は6月末日となっています。
ところがAは、4月25日に従業員に給料を支払わなければならず、履行期前に現金を必要としています。
Aがとりうる簡単な手段は、1000万円の金銭債権をCに950万円で売る=譲渡することによって現金を手にすることです。

債権譲渡

債権譲渡はこうした「資金調達」のほかにも、Aの債権者が、Aの金銭債権を弁済として譲り受けたり(債権回収手段)、Aが、Dから800万円の借金をしたいときに、その1000万円の金銭債権を担保に入れる(債権の担保化)など、取引界で広く利用されています。

 債権の同一性

債権は、契約によって譲渡されることが多く、譲渡契約は、旧債権者(譲渡人)と新債権者(譲受人)との合意=意思表示だけで効力が生じます。

ただ次回で解説するように、「債権を別人に譲渡した」ということを債務者や第三者に対して主張するには、対抗要件を備えることが必要です。
とくに債務者は、債権者が変更したという債権譲渡の事実を知らないときは、二重弁済をするおそれもあるため、事態は深刻になります。

債権譲渡では、「同一の債権」が譲渡人(旧債権者)から譲受人(新債権者)に移転するので、債務者は、譲渡人に対して主張できた抗弁権(同時履行の抗弁権とか期限の猶予など)を、同じように譲受人に対しても主張することができます。

また、債権を担保している抵当権保証債務も、別段の特約がない限り、当然に譲受人に移転します。

 譲渡の方法

債権は、債権譲渡契約によって譲渡されますが、この契約の当事者は、債権者と譲受人です。債務者は関与しません。債権の内容は変更しないので債務者に不利益にはならないからです。

債権証書(借用書、郵便貯金通帳、銀行預金通帳など債権の存在を証明する書類等が作成されていても、債権証書の交付は譲渡契約の要件ではなく、契約はあくまでも「当事者の合意」だけで効力を生じます。

要するに、債権という財貨の譲渡であり、この点は所有権の譲渡(土地・建物の売買)と何ら変わらないのです。
したがって、譲渡された債権がすでに消滅していたり、債務者が無資力になり債権が経済的に無価値になったときの譲渡人の責任も、売買における売主の責任と同様に扱われることとなります。

 将来債権の譲渡性

判例は、債権の譲渡は、現に存在する債権だけでなく、将来発生するであろう「将来債権」の譲渡も有効であると認めてきました。
この見解は「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」と明文化されました(466条の6)

将来債権の譲渡があった場合には、その債権が発生したときは、譲受人が、発生した債権を当然に取得します。

なお、すでに発生している既発生債権と将来の債権を一括して譲渡するという「集合債権」の譲渡やその予約も、債権が特定されていれば有効とするのが判例です(最判平13.11.22)

2|債権の譲渡制限

債権は原則として自由に譲渡できますが、次のような制限があります。

 債権の性質による制限

債権の性質上、譲渡が許されない場合があります。
たとえば、有名な音楽家にバイオリンを教えてもらう債権とか、著名なアスリートにテニスを教えてもらう債権などです。

債権の性質上、教えてもらう債権者が変わると、債権の内容もまったく変わってしまうため、譲渡は認められません。

 譲渡制限特約による制限

1 譲渡制限特約に反する譲渡
債権者・債務者の当事者が、債権の譲渡を禁止したり、または制限する旨の「譲渡制限の意思表示」=譲渡制限特約をすることがあります。

これは、債務者としては、予期しない過酷な取立てをする債権者へ債権が譲渡されることを極力避けたい事情があるからです。判例によると、譲渡制限の特約は、債務者の利益を保護するために付されるものなのです(最判平21.3.27)

しかし一方では、債権譲渡による資金調達や債権回収、債権の担保化という債権(とくに金銭債権)の流動性を失わせることはできません。

そこで新民法は、債権の「譲渡制限特約」があって、これに違反した譲渡でも、債権譲渡は有効であるとしました。
譲渡制限特約に違反した債権譲渡でも無効となることはないのです。
したがって、譲受人が「新債権者」となり、債務者は譲受人に弁済等をすることになります。

2 譲受人が悪意・重過失のとき
ただし、譲受人が善意ではなく、「譲渡制限特約」を知り、または重過失によって知らなかった、つまり悪意または重過失の場合には、例外的に、債務者は、
 債務の「履行を拒む」ことができ、かつ、
 譲渡人に対する「弁済・相殺その他の債務消滅事由を対抗」できる
とされます(466条3項)

「履行拒絶」+「弁済・相殺等債務消滅事由の対抗」ができるわけです。

3 譲受人の催告権
さて、債務者に履行拒絶権を認めた場合、新債権者となった「譲受人」が債務者に履行を求めても拒絶され、しかも、債務者は「譲渡人」(債権者ではなくなっている)に対しても履行しないという状態が生じるおそれがあります。

そこで、これを解消するために、履行を拒まれた譲受人には、債務者に対して「譲渡人を履行の相手方として履行せよ」と催告する権限が与えられ、債務者が「相当の期間」に譲渡人への履行をしないときは、債務者は履行拒絶することができず、譲受人に履行しなければなりません(同4項)

譲受人は「悪意・重過失」でも、催告の権限を行使することができます。

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[正解&解説] 譲渡制限の特約を「重大な過失」によって知らなかった善意の第三者に対しては、債務者は譲渡制限の特約を主張して、債務の履行を拒むことができる
重大な過失悪意と同様に扱うべきとしてきた判例の見解が、新民法で明文化された。正しい記述です。

ポイントまとめ

 債権譲渡は、債権者(譲渡人)と譲受人との合意=意思表示だけで効力が生じる。
 債権が譲渡されると、債務者が有していた譲渡人に対する抗弁権やその債権を担保している抵当権保証債務も、別段の特約がない限り、譲受人に対して移転する。
 譲渡される債権は、将来発生する将来債権でもよい。
 債権は原則として譲渡できるが、債権の性質上、譲渡できないものもある。
 債権には、当事者間で譲渡制限特約を付けることができる。
 譲渡制限特約のある債権を譲渡しても、有効である。
…………………………
 債権の譲受人が、悪意または重過失のときは、債務者は、①履行拒絶することができ、かつ、②弁済・相殺等債務消滅事由をもって対抗することができる。
 悪意または重過失の譲受人は、債務を履行しない債務者に対して、相当の期間を定めて、譲渡人へ履行するよう催告することができる。
 債務者が譲渡人に履行しないときは、債務者は履行拒絶することができず、譲受人に履行しなければならない。

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