|更新日 2021.02.07
|公開日 2017.07.25

32年間の出題傾向|AA連帯債務や保証債務・連帯保証など、いわゆる多数当事者の債権債務は、全部で20問、頻出テーマです。
内訳は、連帯債務5問、保証債務6問、連帯保証6問、総合3問です。

平成25年の判決文(保証債務)を除いて、多くは箇条書きの基本問題でしたが、令和2年(2020)に出題された保証債務2問は難しい部類に入ります。
1問は「普通の保証債務」でやや難問、もう1問は「事業に係る債務の保証契約と根保証契約との対比」で予想外の新出問題、これは難問でした。

多数当事者の債権債務では、1人の債務者に生じた事由が他の債務者にどのような影響を与えるかが最もよく出題されています。

れいちゃん02

連帯債務の勉強のポイントは?

たくちゃん01

改正された条文が多く、要注意だね。やはり、1人について生じた事由が、ほかの債務者に影響を与えるかどうかを確実に押さえておこうね。

1|連帯債務の意味と効力

 連帯債務の意味と機能

意 味

連帯債務というのは、たとえば、A・B・Cが共同事業を始めるにあたり、開業資金として 900万円をDから借りようとするときに、その借金の返済について3人が連帯債務者となることを約束する、というように数人が連帯して債務を負担することをいいます。

債権を強くするため
どうしてこんな約束をするのかというと、借金を連帯債務にすれば、債権者は、1人または全員に対して、全額でも一部でも請求できるので、「返済能力のある債務者」に請求すれば目的は達成されることになるわけです。
1人の返済が危うくなっても、別の債務者に請求できるため、債権の効力は強くなるんですね。

 連帯債務の性質

連帯債務は、債権者に対しては、各債務者が全額弁済の義務を負い、だれかが弁済すれば全員の債務が消滅するという関係にあるため、次のような性質があります。

 各債務者は全部の履行をすべき義務を負う。
 債務者の1人または数人が全部の履行をすると、全員の債務が消滅する。
 保証債務と異なって、主たる債務・従たる債務という区別がない。
 連帯債務は、債務者の数に応じた独立の債務から成るので、各債務についても個別に取り扱われる。たとえば──、

 連帯債務者の1人について法律行為の無効や取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は有効に成立します。
つまり、1人が制限行為能力者だったり、詐欺・錯誤による取消しがあっても、他の債務者の債務はその影響を受けません。

 各債務の態様は同一でなくてもよく、利率・期限・条件が異なっていてもかまいません。

 1人の債務についてだけ保証債務を成立させることができます。

 債務者の1人に対する債権だけを分離して譲渡することができます。この場合も、各債務は連帯債務としての性質を失うことはなく、他の債務者が弁済をすれば、譲受人の債権は消滅します。

 連帯債務の成立

連帯債務は、契約(当事者の合意)や法律の規定によって成立します。

 契約によって連帯債務が成立する場合、1個の契約でなくてもよく、順次に別個の契約をして連帯債務者となることができます。
 法律の規定によって連帯債務を成立させるのは、債権を強化するためです。
たとえば民法は、共同不法行為では「各自が連帯して」損害賠償責任を負うと定め、日常家事に関して生じた債務は「夫婦が連帯して」責任を負うと定めています。

 連帯債務の効力

相対的効力の原則

連帯債務は、連帯債務者の1人が弁済すれば債務の目的が実現されるという同じ目的をもって全員が結びついているのですが、もともと債務者1人1人が、主従の別なく対等に債務を負担する性質を有するので、債務者の人数に応じた「数個の独立した債務」が存在するという法律構成になっています。

したがって「1人について生じた事由はその当人だけに効力が生じ、他の債務者には影響を与えない(効力を生じない)」というのが原則なのです。
これを連帯債務の相対的効力といいます。

 相対的効力事由

相対的効力を有する事由は、①無効・取消し、②債務の承認、③期限の猶予、④履行の請求、⑤免除、⑥時効があります。
この図を例にみておきましょう。
連帯債務の法律関係

無効・取消し
連帯債務者Bの錯誤または詐欺を理由に、AB間の契約が取り消されても、AC間、AD間にはその影響が及ばないため、完全に有効な連帯債務が成立します。

債務の承認
Bが債務の承認をしたことにより、Aの代金債権 900万円の消滅時効が完成猶予されても、C・Dの債務はその影響を受けないため、後日、時効によって消滅する可能性があります。

期限の猶予
Aが、Bに対して期限の猶予をしても、CとDの債務は猶予されません。
たとえば、7月1日の支払期日を、Bについてだけ7月末日としても、CとDの支払期限は7月1日のままです。7月1日を過ぎれば、C・Dは履行遅滞になります。

履行の請求
Aが、Bに履行の請求をすれば、Bは履行遅滞となりますが、C・Dは履行請求の影響を受けず、履行遅滞とはなりません。

免 除
Aが、Bの債務を免除すれば、Bは債務を免れますが、C・Dの債務はその影響を受けず、依然として 900万円の連帯債務を負ったままです。

時効の完成
Bの債務について消滅時効が完成しても、C・Dの債務はその影響を受けません。

別段の意思表示があるとき
ただし相対的効力事由も、債権者と連帯債務者の1人が別段の意思表示をした場合には、他の債務者に対する効力もその意思に従うものとされ、絶対的効力とすることができます。

2|4つの絶対的効力事由

意 味

絶対的効力というのは、1人に生じた事由の効力(影響)が、他の連帯債務者にも同じように及ぶことをいいます。

たとえば、だれか1人が 900万円を弁済したとしましょう。
1人が全額弁済したことにより、債権はその目的を達成して債権が消滅したので、当然にほかの債務者の債務も消滅するわけです。

絶対的効力には次の4つの事由がありますが、すべて債権の消滅にかかわっていることに注意しましょう。

  • 弁 済
  • 相 殺
  • 更 改
  • 混 同

以下、確認していきましょう。

パトモス先生講義中

4つの絶対的効力事由さえ覚えていればいいよ。
あとは全部相対的だからね。

 弁 済

債務者の1人による弁済(代物弁済や供託も)は、債権者が満足を受けて債務が消滅するので、当然に、他の債務者の債務も消滅します。

なお、弁済の提供は債権者に満足を与えるわけではないのですが、債務者の1人が弁済の提供をして、債権者がこれを受領すれば、他の債務者も債務を免れることとなるため、弁済の提供の効果、受領遅滞の効果も他の債務者に影響します。

 相 殺

相殺というのは、お互いの貸し借りを差し引いて決済することをいいます。

AがBに 100万円貸していて、BもまたAに 30万円貸しているという場合、Bが 30万円で相殺すれば、Aの貸金は 70万円に減ります。
実際に「現金のやり取り」をしなくても意思表示だけで簡易に決済できるわけです。

援用権者に注意
Bが、Aに対して 600万円の債権(反対債権)を有している場合をみてみましょう。
負担部分は平等(各300万円)とします。
連帯債務と相殺

本人が援用した場合
Bが 600万円の反対債権で相殺すれば、これは弁済そのものなので、当然にCもDも 600万円だけ債務が消滅し、残額 300万円の連帯債務となります。

他の債務者は相殺を援用できない
Bが相殺を援用しない間は、C・Dは、Bの負担部分 300万円の限度で履行を拒むことができます。残り 600万円を弁済すればいいわけです。

改正前は、C・Dは、Bの「相殺を援用」できたのですが、これはBの有する反対債権に対して処分権を与えることであって行き過ぎなので、新民法で改正されました。

結局、Aからの請求に対し、CはBの負担部分 300万円については弁済を拒絶して、600万円を弁済し、Dに対し 300万円を求償することになります。
なお、BのAに対する反対債権は、600万円のままです。

パトモス先生講義中

他の債務者は、Bの負担部分の限度で、履行を拒むことができるんだ。

 更 改

更改という用語は聞き慣れませんが、プロ野球選手の契約更改というニュースはよく耳にしますよね。

更改というのは、これまでの債務を消滅させて新債務を成立させる契約をいいます。債務を消滅させるため、弁済と同じように考えていいのです。

新民法は、更改を絶対的効力事由としました。
つまり、債務者の1人Bと債権者Aとの間に更改契約があったときは、Aの債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅するわけです。

たとえば、Bが、従前の連帯債務 900万円に代えて、B所有の不動産をAに譲渡する旨の新債務を負担した場合には、C・Dの 900万円の債務もまた消滅します。

Bの旧債務を消滅させ、その効果をC・Dにも及ぼすことは、債権者の意思に反しないと考えられるからです。

 混 同

混同というのは「債権と債務が同一人に帰属する」ことにより、債権が消滅することをいいます。自分が自分に請求するというのは法的に意味がありませんからね。

新民法は、混同も絶対的効力事由としました。
債権者と債務者の1人との間で混同が生じると、その債務者は弁済したものとみなされます。

たとえば、債権者Aが死亡し、BがAを相続して代金債権を承継した場合には混同が生じ、Bは「弁済したものとみなされる」ので、C・Dの債務も当然に消滅します。

混同は、相続以外にも、債権譲渡を受けたりした場合にも生じます。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 1人による相殺の効力の問題ですね。
連帯債務者の1人Aが、債権者Dに対して債権を有する場合に、Aが相殺を援用したときは、債権は、B、Cの利益のために消滅します。
つまり、Aが 200万円の反対債権で相殺すれば、BとCの連帯債務も 200万円が消滅することになるわけです。
相殺は、実質的には弁済と等しく、債権を消滅させる効力があるからです。
本問は正しい記述です。

ポイントまとめ

 原則|相対的効力
当人だけに効力が生じる
① 無効  ② 取消し
③ 債務の承認 ④ 期限の猶予
⑤ 履行の請求 ⑥ 免除 ⑥ 時効

 例外|4つの絶対的効力事由
他の債務者にも効力が及ぶ
① 弁済 ② 相殺 ③ 更改 ④ 混同

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