|更新日 2020.12.22|公開日 2017.07.22

32年間の出題傾向損害賠償請求権、賠償額の予定などが32年間で4問出題。頻出のテーマではありませんが、基本的な事項は確認しておきましょう。
平成25年(2013)以降、8年間出題なしです。
得点のカギ次の基本的なポイントを押さえておきましょう。
1 損害倍種の範囲
2 賠償額の予定
3 代償請求権
れいちゃん01

今回は、損害賠償請求権ね。
試験にはよく出るの?

たくちゃん01

あんまり出ないね。
ただ、賠償額の予定はしっかりおさえておきたいね。

1|債務不履行と損害賠償

 損害賠償請求

債権者は、債務者の債務不履行があった場合、つまり、債務者が「債務の本旨に従った」履行をしないときは、その不履行によって生じた損害の賠償請求をすることができます。

ただし、債務の不履行が「契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして」債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、損害賠償責任は生じません(415条1項)
いいかえれば、損害賠償責任は、債務不履行が、債務者の「責めに帰すべき事由」によって生じたときに発生するわけです。

「責めに帰すべき事由帰責事由」というのは、債務者の故意・過失、あるいは「信義則上これと同視すべき事由」をいいます。

 履行に代わる損害賠償請求

|填補賠償|
履行不能など、債務者が本来の債務を履行できない場合には、債務の履行に代わる損害賠償、つまり填補(てんぽ)賠償が認められ、次の3つのケースがあります。

 履行不能であるとき
 債務者が、債務の「履行を拒絶する意思」を明確に表示したとき
この表示は、履行期の前後を問いません。
 契約が解除されたり、債務不履行による契約の解除権が発生したとき
これは、契約が合意解除された場合や、履行催告後相当期間が経過したような場合です。

 損害賠償の範囲

次に、債務不履行によって生じた損害を、どの範囲まで、どのように評価して賠償させるかが問題となります。

1|不履行と損害との因果関係
まず、債務不履行と損害との間に因果関係があることが必要です。
因果関係というのは「原因・結果の関係」で、当然のことですが、損害賠償請求が認められるためには「債務不履行が原因で、その結果、損害が生じた」ものでなければなりません。

債務不履行=原因

損害の発生=結果 という関係です。

2|通常生ずべき損害(相当因果関係)
債務不履行と損害発生との間に因果関係があっても、「賠償の範囲」は原則として、その債務不履行から「通常生じる損害」、つまり、相当因果関係にある損害に限られます。

もともと因果関係というのは、さかのぼると際限がありません。
たとえば、建物の引渡しが履行遅滞となっているので、やむなく家賃を払ってマンション住まいをしていたところ、隣家の類焼に巻き込まれて多くの家財道具を焼失したというような場合、履行遅滞(原因)がなければマンション住まい(結果)もなく、マンション住まい(原因)がなければ家財道具の焼失(結果)もなかったわけで、さかのぼればキリがないのです。

はたして、家財道具の焼失という損害(結果)は、建物引渡しの履行遅滞が原因といえるでしょうか。
なかなか難しいところです。

相当因果関係

債務不履行が原因でいろいろな損害が発生しますが、それらをすべて債務者に賠償させるのは、当事者間の公平を図るという損害賠償制度の趣旨から考えて適切ではありません。
そこで民法は、実際上際限のない因果関係を「通常生じる因果関係」という基準で限定することによってこの不都合を回避したわけです。
これを「相当因果関係」といいます。

3|特別の事情によって生じた損害
「特別の事情」によって生じた損害であっても、当事者がその事情を「予見すべきであった」ときは、債権者は賠償請求をすることができます。

タワーマンションの買主が、これを第三者に転売する契約をして巨額の利益を得るはずであったのに、1か月の遅延のために、この利益を失ったばかりか、転売契約が解除されて違約金をとられたというような場合、転売による利益や違約金支払いは、一応「特別の事情によって生じた損害」といえるでしょう。

 物質的損害と精神的損害

引き渡された家屋の一部が損壊し、これが原因で家人が負傷したとしましょう。
この場合、家屋の修繕費や家人の治療費は「物質的損害」です。

また、その負傷のために労働能力が低減したときは、これも「物質的損害」になります(計算は複雑ですが)
相当因果関係が認められる限り、これらは賠償の対象となります。

また、身体の負傷によって歩行が困難になったことから受ける精神的な苦痛は「精神的損害」です。
精神的損害の賠償を慰謝料といい、とくに「不法行為」で問題となりますが、債務不履行の場合でも考慮されます。

 過失相殺

|債権者の過失も考慮する|
「債務の不履行に関して」債権者にも過失がある場合には、債権者の過失によって生じた損害までも、債務者に賠償させることは不公平ですから、その責任を適切に軽減する必要があります。
これを過失相殺といい、不法行為にも認められています。

「不履行」自体に関してだけでなく、損害の発生や拡大に関して過失があった場合にも、これを考慮して損害賠償の責任および損害額が定められます。

債務不履行における過失相殺は、債権者に過失があれば必ず考慮しなければなりません。
当事者が主張しなくても、裁判所が「債権者に過失あり」と認定すれば、必ず過失相殺しなければならないのです(職権主義/最判昭43.12.24)
ちなみに、不法行為における過失相殺は任意的です(運営上はほとんど考慮されます)

2|賠償額の予定

|賠償額を事前に決めておく|
損害賠償の問題は非常に複雑で、事案によっては、裁判で10年も20年もかかってしまいます。
これは当事者には耐え難いものですから、あらかじめ契約で「債務不履行に備えて賠償額を定めておく」というのが通例です。
これを賠償額の予定といい、債権者は「債務不履行の事実」を証明すれば、それだけで約定の賠償額を請求できます。
損害を受けた」ことや「実際の損害額」を証明する必要はありません。

もともと賠償額の予定は、損害があったとかなかったとかの損害の有無や、実際の損害額はいくらであったかについての立証を問題とせずに、一律に解決するという趣旨でなされるのです。
注意すべき点を確認しておきましょう。

1|増額も減額もできない
債権者は、実際の損害額が「予定額より大きい」ことを証明しても増額請求できません。債務者は、実際の損害額が「予定額より少ない」ことを証明しても減額請求はできません。

過失の有無・損害の有無・損害額について一切の紛争を避けるというのが当事者の意思ですから、これを尊重したわけです。

ただし判例は、あまり苛酷な予定額については、公序良俗違反(90条)を理由に、全部または一部を無効とし、あるいは減額できるとしています。

2|証明の範囲
債権者は「債務不履行があった」という客観的な事実の生じたことを証明するだけでよく、それが「債務者の責めに帰すべき事由による」とか、また「損害の発生」や「損害額」を証明しなくても、予定賠償額を請求できます。

3|債務者の免責
賠償額の予定は、債務不履行が成立する場合の問題なので、債務者は、自己の債務不履行について「責任がない=帰責事由がない」ことを立証すれば免責されます。

4|過失相殺できる
債務者が、債権者の過失を立証して、過失相殺の主張をしたときには、裁判所は損害額の算定について、その過失を斟酌=考慮することができます。
賠償額の予定は、過失相殺を排除する趣旨は含まないのです。

5|違約金との関係
違約金というのは、債務不履行があった場合に支払うべきものと約定される一種の制裁金ですが、いろんな内容をもっているため、民法は一律にこれを賠償額の予定と「推定」しています。

3|金銭債務の特則

|お金は特別!|
金銭債務というのは「代金1,000万円支払う」というように、一定額の金銭の支払いを目的とする債務です。

宅建試験で登場する代表例は、売買契約の代金とか、賃貸借契約における賃料、金銭の貸し借りのような金銭消費貸借契約における貸金、不法行為による損害賠償金などです。

金銭債務については、債権の目的が金銭の支払いであることから、次のような特例があります。

1|返済時期
金銭消費貸借の場合に「返済時期」を定めなかったときは、「借主」はいつでも返済することができますが、「貸主」が返済を請求する場合には、相当の期間を定めて催告する必要があります。

2|損害の証明はいらない
金銭債務の不履行があった場合、債権者は現実に発生した損害の証明をしなくても、損害賠償を請求できます。
「損害の証明」は不要で、「債務不履行があった事実」を立証するだけでいいわけです。

3|不可抗力を抗弁できない
金銭債務の不履行については、債務者は不可抗力を理由にして抗弁することができません。
「期日までにお金が払えない」という債務不履行が「不可抗力による」ものであること(集中豪雨で列車が遅延したため銀行に間に合わなかったなど)を証明しても、賠償責任を免れることはできないのです。

4|代償請求権

|火災保険金に請求できる|
家屋滅失による保険金について、代償請求権を明示的に認めていた判例の見解が、明文化されました(最判昭41.12.23|422条の2)

たとえば、賃借人Bが賃貸人Aから賃借していた建物が焼失したため、建物の返還義務が履行不能になったとしましょう。
このとき、Bが保険会社から火災保険金を取得した場合には、Aは代償請求として火災保険金相当額の償還をBに請求することができます。債権者の損害賠償を確実にするためです。

請求額は、債権者の「受けた損害の額」が上限となります。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 過失相殺の問題。
「債権者に過失があったとき」は、債務者から「過失相殺する旨の主張」がなくても、裁判所はその過失を考慮して、損害賠償の責任およびその額が定められる。
債権者に過失があれば、必ず過失相殺されるのである。
債権者の過失によって生じた損害までも、債務者に賠償させることは公平の観点から許されないからである。
本問は誤りです。
※ 新民法は、債権者が「損害の発生や拡大」に関して過失があった場合にも、過失相殺の適用を認めています。

ポイントまとめ

 債権者は、債務不履行によって生じた損害の賠償請求ができる。ただし、債務不履行が、債務者の帰責事由によるものでないときは、債務者は損害賠償責任を負わない。
 賠償の範囲は、原則として債務不履行から通常生ずべき損害に限られる。
 特別の事情で生じた損害は、当事者がその事情を予見すべきであったときは、損害賠償の対象となる。
 慰謝料は、債務不履行の場合でも考慮される。
 金銭債務の不履行については、現実に発生した損害の証明は不要で、不履行の事実を立証するだけで損害賠償を請求できる。
 金銭債務の不履行については、不可抗力を抗弁とすることはできない。
 債権者に過失があれば、当事者が主張しなくても、裁判所は必ず過失相殺しなければならない。
 賠償額の予定があるとき、債権者は不履行の事実を証明するだけで約定の賠償額を請求できる。債務者の帰責事由、損害の発生、損害額を証明する必要はない。
 債権者は、実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても増額請求はできない。債務者は、実際の損害額が予定額より少ないことを証明しても減額請求はできない。
10 賠償額の予定があっても、債務者は、債務不履行について帰責事由がないことを立証すれば免責される。
11 賠償額の予定があっても、過失相殺できる。
12 債権者は、損害の額の限度で代償請求権がある。

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