|更新日 2021.02.04
|公開日 2017.07.22

32年間の出題傾向|損害賠償請求権、賠償額の予定などが32年間で5問出題。頻出のテーマではありませんが、基本的な事項は確認しておきましょう。
平成24年(2012)に出題されてから、8年間出題なしです。
得点のカギ次の基本的なポイントをおさえておきましょう。
1 損害賠償の範囲
2 賠償額の予定
3 金銭債権の特徴
れいちゃん01

今回は、損害賠償請求権ね。
試験にはよく出るの?

たくちゃん01

あんまり出ないね。
ただ、賠償額の予定はしっかりおさえておきたいね。

1|債務不履行と損害賠償

債務不履行があっても損害を生じないときは、賠償請求することはできません。

債務者の債務不履行(履行遅滞や履行不能など)によって損害が生じたときに、債権者は、債務者に対してその損害の賠償を請求することができるわけです。

ただし、債務不履行が「契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして」債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、責任がないものとして損害賠償責任は生じません。

損害賠償責任は、債務不履行が、債務者の「責めに帰すべき事由」によって生じたときに発生するわけです。
「責めに帰すべき事由」は帰責事由ともいい、債務者の故意・過失、あるいは「信義則上これと同視すべき事由」をいいます。

この損害賠償は金銭に見積もってなされるので、債権者にとって簡便で有力な救済手段となります。

 遅延賠償と填補賠償

遅延賠償
債務者の履行遅滞によって損害が生じたときは、債権者は、損害賠償として遅延賠償を請求することができます。
履行遅滞の場合は、まだ本来の債務は履行が可能なので、債権者は、①本来の履行とともに、②遅延賠償を請求することになります。

債務者は、本来の履行と遅延賠償を提供してはじめて「債務の本旨」に従った履行をしたことになるわけです。

填補(てんぽ)賠償
填補賠償というのは、本来の履行に代わる損害賠償のことで、履行遅滞・履行不能ともに認められます。

履行遅滞の場合
履行遅滞があった場合、債権者は、相当の期間を定めて履行を催促し、その期間内に履行がないときは契約を解除できます。
債権者は、契約を解除して「本来の履行に代わる」填補賠償(損害の賠償)を請求することとなります。

履行不能の場合
履行不能の場合には本来の債務が消滅するので、その損害賠償は「本来の履行に代わる」填補賠償が中心となります。

填補賠償は、次の3つの場合に認められます。新民法で明文化されました。

 履行不能であるとき
 債務者が、債務の「履行を拒絶する意思」を明確に表示したとき
この表示は、履行期の前後を問いません。
 契約が解除されたり、債務不履行による契約の解除権が発生したとき
契約が合意解除された場合や、履行催告後相当期間が経過したような場合です。

 損害賠償の範囲

損害は「どの範囲まで賠償すべきなのか」をみておきましょう。

因果関係
当然のことですが、債務不履行と損害との間に因果関係があることが必要です。

因果関係というのは「原因・結果の関係」で、損害賠償請求ができるためには、債務不履行が原因で、その結果、損害が生じたものでなければなりません。

債務不履行=原因

損害の発生=結果 という関係です。

これが大前提です。

通常損害と特別損害
もともと因果関係というのは、さかのぼると際限がありません。

たとえば、建物の引渡しが履行遅滞となっているので、やむなく家賃を払ってマンション住まいをしていたところ、隣室の類焼に巻き込まれて多くの家財道具を焼失したというような場合、履行遅滞という債務不履行(原因)がなければマンション住まい(結果)もなく、マンション住まい(原因)がなければ家財道具の焼失(結果)もなかったわけで、さかのぼればキリがなくなります。

家財道具の焼失という損害(結果)は、建物引渡しの履行遅滞(債務不履行)が原因といえるでしょうか、なかなか難しいところです。

そこで民法は、因果関係によって際限なく拡大する損害については、当事者間の公平を図るという損害賠償制度の趣旨から考えて、次のように「損害賠償の範囲」を定めています(416条)

 通常損害
 特別損害

通常損害
通常損害というのは、債務不履行によって通常生ずべき損害のことで、「通常予見できる」範囲の損害であれば、債権者は、賠償請求することができます。

通常損害は、損害発生を当事者が予見していたものに限られるのではなく、予見がなくても賠償の範囲に含まれます。

相当因果関係

通常損害は、際限のない因果関係を「通常生じる因果関係」という基準で限定することによってこの不都合を回避したもので、「相当因果関係による損害」を意味しています。

特別損害
特別損害というのは、特別の事情によって生じた損害のことで、このような損害であっても、当事者がその事情を「予見すべきであった」ときは、債権者は、賠償請求することができます。

損害発生を当事者が予見していたものに限られるのではなく、「予見可能性」があれば、賠償請求することができます。

タワーマンションの買主が、これを第三者に転売する契約をして巨額の利益を得るはずであったのに、1か月の遅延のために、この利益を失ったばかりか、転売契約が解除されて違約金をとられたというような場合、転売による利益や違約金支払いは、一応「特別の事情によって生じた損害」といえるでしょう。

なお判例は、予見可能性の時期を「債務不履行時」としています(最判昭47.4.20)

ステップアップ

損害賠償請求権の消滅時効
損害賠償請求権の消滅時効は、いつから進行を開始するか。

判例は、債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求できる時(履行期など)から進行するとしています(最判平10.4.24)

損害賠償請求権は、本来の履行請求権の内容の変更であって、両者は法的に同一性を有するからです。

 過失相殺

債権者の過失も考慮する
債務不履行に関して、債権者にも過失がある場合に、その過失によって生じた損害を債務者に賠償させることは不公平なので、債務者の責任を適切に軽減する必要があります。
これを過失相殺といい、不法行為にも認められています。

過失は、「不履行」についてだけでなく、損害の発生や拡大についても考慮されます。

新民法はこのようにいっています。
「債務の不履行、またはこれによる損害の発生あるいは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所はこれを考慮して、損害賠償の責任およびその額を定める」(418条)

債務不履行における過失相殺は、債権者に過失があれば必ず考慮しなければなりません。
当事者が「過失相殺する」旨の主張をしなくても、裁判所が「債権者に過失あり」と認定すれば、必ず過失相殺しなければならないのです(職権主義/最判昭43.12.24)

ちなみに、不法行為における過失相殺は任意的ですが、運営上はほとんど考慮されます。

2|賠償額の予定

賠償額を事前に決めておく
損害賠償の問題は非常に複雑で、事案によっては、裁判で10年も20年もかかってしまいます。
これは当事者には耐え難いものですから、あらかじめ契約で「債務不履行に備えて賠償額を定めておく」というのが通例です。

これを賠償額の予定といい、債権者は「債務不履行の事実」を証明すれば、それだけで約定の賠償額を請求できます。
損害を受けた」ことや「実際の損害額」を証明する必要はありません。

もともと賠償額の予定は、損害があったとかなかったとかの損害の有無や、実際の損害額はいくらであったかについての立証を問題とせずに、一律に解決するという趣旨でなされるのです。

注意すべき点を確認しておきましょう。

証明の範囲
債権者は「債務者に債務不履行があった」という客観的な事実の生じたことを証明するだけでよく、それが「債務者の責めに帰すべき事由による」とか、また「損害の発生」や「損害額」を証明しなくても、予定賠償額を請求できます。

増額も減額もできない
債権者は、実際の損害額が「予定額より大きい」ことを証明しても増額請求できません。債務者は、実際の損害額が「予定額より少ない」ことを証明しても減額請求はできません。

過失の有無・損害の有無・損害額について一切の紛争を避けるというのが当事者の意思なので、これを尊重したわけです。

ただし判例は、あまりに苛酷な予定額については、暴利行為として公序良俗違反(90条)を理由に、全部または一部を無効としたり、または減額できるとしています。

債務者の免責
賠償額の予定は、債務不履行が成立する場合の問題なので、債務者は、自己の債務不履行について「責任がない=帰責事由がない」ことを立証すれば免責されます。

過失相殺できる
債務者が、債権者の過失を立証して、過失相殺の主張をしたときには、裁判所は損害額の算定について、その過失を斟酌=考慮することができます。
賠償額の予定は、過失相殺を排除する趣旨までは含んでいないのです。

違約金との関係
違約金というのは、債務不履行があった場合に支払うべきものと約定される一種の制裁金ですが、いろんな内容をもっているため、民法は一律にこれを賠償額の予定と「推定」しています。

3|金銭債務の特則

お金は特別!
金銭債務というのは「代金1,000万円支払う」というように、一定額の金銭の支払いを目的とする債務です。

宅建士試験で登場する代表例は、売買契約の代金とか、賃貸借契約における賃料、金銭の貸し借りのような金銭消費貸借契約における貸金、不法行為による損害賠償金などです。

金銭債務については、債権の目的が金銭の支払いであることから、次のような特例があります。

返済時期
金銭消費貸借の場合に「返済時期」を定めなかったときは、「借主」はいつでも返済することができますが、「貸主」が返済を請求する場合には、相当の期間を定めて催告する必要があります。

損害の証明はいらない
金銭債務の不履行があった場合、債権者は現実に発生した損害の証明をしなくても、損害賠償を請求できます。
「損害の証明」は不要で、「債務不履行があった事実」を立証するだけでいいわけです。

不可抗力を抗弁にできない
金銭債務の不履行については、債務者は不可抗力を理由にして抗弁することができません。
「期日までにお金が払えない」という債務不履行が「不可抗力による」ものであること(集中豪雨で列車が遅延したために間に合わなかったなど)を証明しても、賠償責任を免れることはできないのです。

すぐやる過去問チェック!

次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 過失相殺の問題。
「債権者に過失があったとき」は、債務者から「過失相殺する旨の主張」がなくても、裁判所はその過失を考慮して、損害賠償の責任およびその額が定められる。
債権者に過失があれば、必ず過失相殺されるのである。
債権者の過失によって生じた損害までも、債務者に賠償させることは公平の観点から許されないからである。
本問は誤りです。
※ 新民法は、債権者が「損害の発生や拡大」に関して過失があった場合にも、過失相殺の適用を認めています。

ポイントまとめ

 債権者は、債務不履行によって生じた損害の賠償請求ができる。ただし、債務不履行が、債務者の帰責事由によるものでないときは、債務者は損害賠償責任を負わない。
 賠償の範囲は、原則として債務不履行から通常生ずべき損害に限られる。
 特別の事情で生じた損害は、当事者がその事情を予見すべきであったときは、損害賠償の対象となる。
 債権者に過失があれば、当事者が主張しなくても、裁判所は必ず過失相殺しなければならない。
 賠償額の予定があるとき、債権者は不履行の事実を証明するだけで約定の賠償額を請求できる。債務者の帰責事由、損害の発生、損害額の証明は不要。
……………
 債権者は、実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても増額請求はできない。債務者は、実際の損害額が予定額より少ないことを証明しても減額請求はできない。
 賠償額の予定があっても、債務者は、債務不履行について帰責事由がないことを立証すれば免責される。
 賠償額の予定があっても、過失相殺できる。
 金銭債務の不履行については、現実に発生した損害の証明は不要で、不履行の事実を立証するだけで損害賠償を請求できる。
10 金銭債務の不履行については、不可抗力を抗弁とすることはできない。

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