|更新日 2020.02.01
|公開日 2017.07.18


れいちゃん01

今回は、抵当権の処分と抵当権消滅請求ですね。
試験にはよく出るの?

たくちゃん03

頻出テーマではないね。
だからといって、スルーするのは危険だよ。
令和元年(2019)には、ズバリ「抵当権の順位の譲渡」が出たからね。キチンと目を通していた人は正解できたはずだよ。

1|抵当権の処分

抵当権の処分というのは、抵当権を被担保債権と切り離して、1個の財産として「抵当権だけ」を取引の対象とすることです。

抵当権者は、その抵当権を「譲渡・放棄」したり、抵当権の「順位を譲渡・放棄」することができるほか、抵当権を「自分の債務の担保とする」、つまり転抵当することができます。

ここでは、①抵当権の順位の譲渡・放棄、②転抵当について、基本的なことを確認しておきましょう。

 抵当権の順位の譲渡・放棄

事例がわかりやすいでしょう。
「Aは、Bから2,000万円を借りて甲地に一番抵当権を設定した後、さらにCから1,000万円を借りて甲地に二番抵当権を設定した。その後、抵当権の実行によって甲地が競売され、1,500万円の配当がなされた」という例をみてみましょう。

抵当権の順位の譲渡

順位の譲渡や放棄がない場合には、一番抵当権者Bが2,000万円全額について、配当額1,500万円から全額の弁済を受けますので、二番抵当権者Cはここからは弁済を受けられません。
Cが優先弁済を受けるためには、Bから順位の譲渡を受けたり、Bの順位の放棄が必要です。

1|順位の譲渡
順位の譲渡は、先順位の抵当権者が、後順位の抵当権者に対して行います。

たとえば、B→Cへ抵当権の順位が譲渡されると、Cが一番抵当権者、Bが二番抵当権者となります。
したがって、Cは、競売代金1,500万円から優先的に債権全額の1,000万円、Bにはその残額500万円が配当されます。

2|順位の放棄
順位の放棄も、先順位抵当権者が、後順位抵当権者に対して行います。

上例で、B→Cへ抵当権の順位が放棄されると、BとCは同順位になります。
したがって、配当額1,500万円は、B・Cの債権額に比例して(2000:1000=2:1で)分配され、Bに1,000万円、Cに500万円が配当されることになります。

 転抵当

転抵当というのは、抵当権の上に抵当権を設定するものです。
たとえば抵当権者が、第三者から借金をする場合に、第三者の貸金債権のために自己の抵当権を担保とするというように。

転抵当権も物権ですから、第三者にそれを主張するためには登記(付記登記)が必要です。
また、転抵当の設定は、抵当債務者にも利害関係があるので、抵当債務者に通知するかその承諾がないと、転抵当権者は抵当債務者に転抵当権を対抗することができませんし、保証人・物上保証人・抵当不動産の第三取得者にも対抗できません。

転抵当は複雑な法律関係を生じるため、利用は少ないものとなっています。

 抵当権処分の対抗要件

順位の譲渡・順位の放棄は、転抵当と同様に、主たる債務者に通知し、または主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者(物上保証人)、およびこれらの承継人に対抗することができません。

2|抵当権消滅請求

 意 味

抵当権消滅請求というのは、抵当不動産を買い受けた第三取得者が「債務を支払うので抵当権を抹消してほしい」と抵当権者に対して請求することです。

つまり、抵当権消滅請求の制度は、抵当不動産の所有権を取得した第三取得者=買主を保護するための制度なのです。

抵当権消滅請求

|請求権者|
抵当権消滅請求ができるのは、抵当不動産の所有権を取得した第三取得者に限られます。
「主たる債務者」や「保証人」は(たとえ抵当不動産の第三取得者となった場合でも)抵当権消滅請求をすることはできません。
そもそも抵当債務全額の弁済が本来の義務ですから、全額を提供することなく消滅請求を許すべきではないからです。

|代価弁済|
抵当権を消滅させるもう1つの方法に代価弁済があります。
これは抵当権者の方から、相当金額を第三取得者に請求して、支払いがあれば抵当権が消滅するというものです。

 抵当権消滅請求の時期

抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をする必要があります。

 抵当権設定後の短期賃貸借

短期賃貸借(土地5年以内、建物3年以内)は、抵当権設定後に登記しても抵当不動産の競落人に対抗できるとしていた「短期賃貸借の保護制度」は廃止されて、対抗要件の原則どおり、抵当権設定後は、賃借権の登記の有無、期間の長短に関係なく、抵当権者に対抗できなくなりました。

たとえば、抵当権設定登記後の抵当建物の賃借人は、短期賃貸借の登記があっても、抵当建物の競落人に対して賃借権を対抗することはできません。

ただし、抵当権設定後の賃貸借は期間の長短に関係なく、一定要件があるときに保護されます。

つまり「登記をした賃貸借」は、その登記前に登記をした抵当権を有する「すべての者」が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、同意をした抵当権者に対抗することができます。
ただ、抵当権者が同意をする場合には、その同意によって不利益を受けるべき一定の利害関係人の承諾を得なければならないので、事実上、賃貸借を対抗することはきわめて困難になっています。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 主債務者はもちろん、その債務について「連帯保証をした」連帯保証人も、抵当権消滅請求をすることはできません。
これらの者は、もともと債務全額を弁済すべき義務を負っているのですから、これに満たない金額で抵当権を消滅させるべきではないからです。
抵当権消滅請求の制度は、抵当不動産の所有権を取得した第三取得者を保護するための制度ですから、主たる債務者、保証人、連帯保証人は、抵当権消滅請求をすることはできないのです。
本問は誤った記述です。

ポイントまとめ

 抵当権の順位が譲渡されると優先順位が入れ替わり、抵当権の順位が放棄されると同順位となる。
 抵当権の順位の譲渡、順位の放棄は、主たる債務者に通知し、または主たる債務者が承諾しなければ、主たる債務者・保証人・物上保証人・抵当不動産の第三取得者に対抗することができない。
 抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をすることができるが、主たる債務者・保証人・これらの者の承継人はすることができない。
 抵当権消滅請求は、競売による差押えの効力の発生前にする必要がある。
 抵当権設定後の登記ある賃貸借は、登記あるすべての抵当権者の同意同意の登記があれば、それらの抵当権者に対抗できる。

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