|更新日 2020.12.22|公開日2017.07.14


1|物権法定主義

物権を勝手に作ってはいけない
民法の基本法理の1つに契約の自由がありますが、だからといって物権を自由に作ることはできません。
物権は、民法その他の特別法で定めるもののほか、創設できないのです(175条)
これを物権法定主義といいます。
要するに「勝手に物権をつくるな」ということです。

物権は直接的・排他的な権利であるため第三者に対する影響が大きく、取引当事者によって勝手にいろいろな種類の物権をつくられたり、内容を変更されたのでは混乱してしまい、正常な取引が困難になります。

したがって、法律であらかじめ物権の種類を限定し、権利内容を定型化しておいて、取引当事者は、この類型の中からどれかを選択できるだけである、という制度にしたのです。物権のメニューがすでに作られていて、ここから選ぶだけなのです。

2|物権の種類と内容

民法が定めた物権は10種類ですが、宅建試験に必要なのは9種類です。
なかでも所有権抵当権が重要です。

1|所有権

所有権とその内容
物資がもっている「一切の価値」を自由に支配する全面的な物権で、物権の中心的存在です。

「一切の価値」には3態様があります。
① 使用 自分で使う
② 収益 他人に利用させて使用料(家賃とか地代)をとる
③ 処分 売却・譲渡したり、抵当権を設定して担保として利用する

自分の家の「所有権」を有していれば、家族で住むのも、人に貸すのも、売り払うのも、借金の抵当に入れるのも自由自在にできます。

2|担保物権

次の物権は、債権を担保する、つまり「債務者から確実に弁済を受けられるようにする」ために利用される物権で、担保物権といいます。

1|留置権の内容

パソコンの修理代金を払ってもらうまでパソコンを返さない、返してほしければ「修理代金」を支払えというように、修理業者である債権者が、債務者の所有物を手元に留置して、債務の弁済があるまで返還しない担保物権です。
所有物を留置することで債務の弁済(修理代金の支払)を確実にするわけです。

2|先取特権の内容

破産した債務者の総財産を処分して、従業員の給料を優先的に支払うというように、債務者の目的物を処分して、その代金から債権の弁済を受ける担保物権です。
社会政策的な要請から、その成立・内容等が法定されています。

3|質権の内容

お金を借りる債務者からその所有物を預かって借金の弁済を促し、期限までに弁済がないときは所有物を処分=競売して、その売却代金から優先的に弁済を受ける担保物権です。
庶民金融の「質屋」(動産質権)がこれに該当します。試験で出題されるのは「不動産質権」です。

4|抵当権の内容

たとえば、債権者が貸金債権の担保として債務者の不動産に抵当権を設定して、期限までに弁済がないときはその不動産を売却して、売却代金から優先的に弁済を受けるという担保物権です。
「根抵当権」は、通常の抵当権の性質を大幅に修正した特殊な抵当権です。

3|用益物権

次の物権は「他人の土地」を使用収益する権利で、用益物権といいます。

1|地上権の内容

土地を借りて、そこにマンションや工場を建てるというように、建物や工作物などを所有する目的で、他人の土地を利用する物権です。
土地所有者と利用者の「地上権設定契約」で発生します(約定地上権)
抵当権のところで「法定地上権」が出てきますので、この程度のことを知っておけば十分です。
地上権そのものの出題は、この32年間ありません。

2|永小作権の内容

時代劇かなんかで、田んぼに苗を植えているお百姓が登場しますね。小作人です。
地主から田んぼを借りて「耕作」しているんですね。
永小作権は、他人の土地を借りて「耕作」とか「牧畜」をする物権です。
同じく土地を借りるのですが、建物や工作物を建てるのが目的ではなく、「耕作」したり「牧畜」をするのが目的なのです。
当事者間の「永小作権設定契約」で発生します。

※ 「他人の土地を利用する」という地上権や永小作権の目的は、現在では、債権である賃借権によって実現できるため、他人の土地利用は、圧倒的に賃借権(賃貸借契約)にとって代わられています。

3|地役権の内容

道路に出るために隣人の土地を通行するというように、隣同士の土地利用を調節するための物権です。
隣人間の土地利用の調節は、所有権の「相隣関係」でも登場しますが、こちらは法律上当然に認められる調整機能ですが、地役権は当事者間の「地役権設定契約」で発生します。
法令上の制限の「土地区画整理法」で、たまに出題されます。

「担保物権」と「用益物権」などの「所有権以外」の物権は、「所有権」の有する部分的な機能・価値についてのみ「限られた範囲」で物を支配するため、制限物権と呼ばれます。

4|占有権

占有権とその内容
占有権は、目的物に対する「事実上の支配状態」があれば、それだけを根拠に成立が認められる物権です。
この「事実上の支配状態」を「占有」といい、目的物を「使っていたり」「保管していたり」「人に貸していたり」、要するに目的物を所持・管理している状態をいいます。

事実上の支配状態=占有がありさえすれば、それが正当な権利、つまり所有権、抵当権、不動産賃借権などの本権に基づくかどうかを「一切問わずに」占有権が生じるわけです。

その最大の趣旨は、事実上の支配状態をそのまま権利=占有権として保護して社会秩序を維持するという点にあります。

現代社会では、正当な権利があっても実力行使による自力救済は原則として禁止されています。
パソコンを盗んだ犯人に対して、権利者である所有者が「実力行使」して取り返す自力救済は認められていません。自力救済を認めると、社会秩序は維持できませんね。
ドロボーに「占有権」が認められるのも、この理由によるのです。
法治国家にあっては、訴訟という平和的な「法的手続」で取り返さないといけないのです。

パソコンが盗まれた場合、盗んだ者は「所有権=本権はない」が占有権を有し、盗まれた者は「所有権=本権はある」のに占有権がない状態に置かれているわけです。

「事実上の支配状態」=「占有」は取得時効で問題となるテーマです。
[講義17|取得時効・消滅時効

物権全体を位置づけるとこのようになります。覚える必要はありません。
イメージできればOKです。

物権の種類

3|物権と債権の対比

物権と債権の対比を簡単に確認しておきましょう。

1 権利の性質

物 権
・物を直接支配する権利
・排他性あり(同一物に対して同一物権は成立しない)
・だれに対しても主張できる絶対的権利

債 権
・特定人=債務者に行為を請求する権利
・排他性なし(同一人に対し複数の権利が存在しうる)
・特定人=債務者に主張できる相対的権利

2 権利の種類

物 権
・所有権、地上権、永小作権、地役権
・留置権、先取特権、質権
・抵当権、法定地上権、根抵当権
・占有権

債 権
・売買における「代金債権、引渡債権」
・賃貸借における「賃借権、賃料債権」
・消費貸借における「貸金債権」
・請負や委任における「報酬債権」
・契約における「費用償還請求権」
・解除における「原状回復請求権」
・債務不履行における「損害賠償請求権」
・不法行為における「損害賠償請求権」


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