|更新日 2021.01.19
|公開日 2017.06.07

32年間の出題傾向意思能力や意思無能力が「1問」として出題されたことは、過去に1度もありません。
未成年者・成年被後見人など制限行為能力者との複合問題の「1選択肢」として、わずかに出題されただけです。
得点のカギ次の3点が得点のカギです。
1 意思能力の意味
2 意思無能力の効果
3 意思能力と行為能力との関係
れいちゃん01

意思能力ってどんな意味?
行為能力とどう違うの?

たくちゃん04

意思能力って、判断能力ってことなんだけど。
意思能力と行為能力との関連は正確に理解しておこうね。

1|現代は契約社会

今日、私たちが生きていくためには、さまざまな「契約」をしていかなければなりません。
たとえば、会社で働いて給料をもらったり(雇用契約)、通勤のために電車を利用したり(運送契約)、住むためにマンションを借りたり(賃貸借契約)、スーパーで食料品・衣料品を買ったり(売買契約)などなど、実にいろんな「契約」をしていく必要があります。

私たちの社会は、ありとあらゆる「契約」によって運営されており、現代はまさに「契約社会」なのです。私たちは「契約」をしないでは生きていけないのです。

2|意思能力の意味

権利能力だけでは不十分
前回学んだ「権利能力」は、だれでも権利者となり義務の負担者となれるという「権利・義務の帰属主体」を認めるだけであって、これだけでは生きていくことはできません。
生きていくための衣・食・住は、各人それぞれが「具体的な契約によって形成していく」という社会システムになっているのです。

 私的自治の原則

「契約社会」を支える基本理念は、「私的自治の原則」「契約自由の原則」です。
これは要するに「だれでも自由に契約を結ぶことができるよ」ということです。

「人はだれでも、自らの自由意思によって法律関係を形成することができる」わけですが、反面「自らの自由意思で形成した法律関係に拘束される」ことも意味しています。

「自らを拘束する」ことが法律上正当化されるためには、その意思決定が「正常に」なされる必要があります。
たとえば、だまされたり、強迫されたりして結んだ契約が「取り消すことができる」とされているのは、意思決定が「正常に」なされていないからなのです。

「私的自治の原則」のもとでは、正常ではない意思決定に拘束されることは許されないのです。

Topics

私的自治の原則は、①権利能力平等の原則や、②所有権絶対の原則とともに、民法を支配する指導原理です。

 契約には相応の能力が必要

意思能力の意味

意思能力というのは、契約の法的な意味や結果を判断する能力をいいます。
一般には7歳から10歳程度の物事に対する理解力とされています。

たとえば、物を買うと自分のものになって自由に使うことができるけれども、その代わりに代金を支払う義務が生じる。
あるいは、自分の物を売ったら代金がもらえるけれども、その代わりに物の自由な使用ができなくなる、といったことなどを判断できる能力ですね。

民法は、この「意思能力」のことを「事理を弁識する能力(7条、11条、15条)といっています。
宅建試験では「意思能力」も「事理を弁識する能力」も使用されていましたので、注意しておきましょう。

 意思能力がないと、どうなるのだろう?

意思無能力の効果

たとえば、重度の認知症の高齢者が「意思能力を欠いた状態」で別荘の売買契約書にハンコを押してしまった場合、はたして高額の購入代金を支払う義務が生じるのでしょうか。

判例(大判明38.5.11)は古くから、こうした契約を無効としてきました。
意思能力を欠けば、法律行為は無効」ということです。

これは、自分の行為の意味を判断する意思能力が欠けているために「正常でない意思決定」であり、したがって契約に拘束されることが「正当化されない」として、表意者保護のために確立された法理です。

民法は、次のようにいっています。
「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」(3条の2)

法律行為(おもに契約)の時に「意思能力」がなかったことを証明すれば、契約の無効を主張することができるわけです。

パトモス先生講義中

契約の当事者が、意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その契約は無効だからね。

無効の意味

無効というのは、契約が成立しているようにみえても「何の効果も生じない」ということです。法律上の拘束力・強制力はまったくありません。
たとえば、売買契約が無効であるというときは、「売買代金の支払い請求」も「目的物の引渡し請求」も一切生じることはないのです。

Topics

なお、上記の3条の2では、「時」と「とき」が混用されていますが、誤植ではありませんよ。「時」は文字通り「時刻とか時期」の意味、「とき」は「場合」という意味で、使い分けられているのです。

 意思能力と行為能力の関係

意思能力は契約時に判断される
「意思能力」と次回から解説する「行為能力」は、判断能力に問題のある者を保護するという点では同じですが、その仕組みは異なっています。

「意思能力」の有無は、「意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」とあるように、「1つ1つの契約ごと」に、その都度、判断されます。あらかじめ「画一的に定めるものではない」のです。

一方、「行為能力」があるかどうかは、未成年者・知的障害者・高齢者など、年齢や判断能力の程度に応じて、法律および裁判所の審判手続によって「制限行為能力者」として「画一的に定められる」のです。

3|制限行為能力制度の登場

人の意思能力・判断能力にはいろいろな発達レベルがあります。
意思能力がいまだ十分には発達していない幼少者、事故や病気で意思能力が減退したり喪失した知的障害者、認知症の高齢者など「もともと意思能力が不十分な人たち」がいるわけですね。

こうした人たちは、意思能力・判断能力が不十分なことにつけ込まれて、不利な契約を結ばされてしまう危険が多いため、そうした不利益を受けることがないように保護する必要があります。

もちろん、「意思表示の時に意思能力が不十分であった」ことを証明して契約を無効にできます。しかし契約をするたびに、これらの人たちがいちいちそれを証明しなければならないというのでは、あまりにもわずらわしく、日常生活を営んでいくことはきわめて困難です。

そこで民法は、こうした「もともと意思能力が不十分な人たち」を、判断能力の発達レベルに応じて「4タイプ」に分け、これらの人にはそれぞれ保護者をつけてその能力不足を補い、不利な契約に拘束される危険から保護することにしているのです。

① 未成年者
=意思能力の発達途上にある者
② 成年被後見人
=意思能力を欠く常況にある者
③ 被保佐人
=意思能力が著しく不十分である者
④ 被補助人
=意思能力が不十分である者

このように自分1人で契約することが制限されている人たちを、契約能力=法律行為能力が制限されているという意味で「制限行為能力者」といいます。

次回から、それぞれの制限行為能力者の行為能力はどんなものか、みていくことにしましょう。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 意思無能力者のした契約は、はじめから無効
取消しの意思表示をすることによって無効となるのではない。
「取り消せば、当該契約を無効にできる」という記述は誤りです。

ポイントまとめ

 意思能力があるかどうかは、契約ごとに判断される。
 意思能力を欠いた者の契約は、無効である。
 意思能力がもともと不十分な者は、審判手続を経て「制限行為能力者」として保護される。
 制限行為能力者には、①未成年者、②成年被後見人、③被保佐人、④被補助人の4タイプがある。

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