|更新日 2020.12.27
|公開日 2017.07.14

得点のカギ次のポイントを押さえましょう。
1 取得時効の要件|占有の承継
2 債権の消滅時効
3 生命等の侵害による場合
4 不法行為による損害賠償請求権

1|取得時効

取得時効の対象となる権利としては、所有権が最も重要です。
ほかに、地上権・地役権・永小作権など、他人の土地を利用する「用益物権」も時効によって取得できます。
なお判例が「債権」である土地賃借権の取得時効を認めている点は、注意を要します(最判昭43.10.8)

以下、所有権の取得時効についてみていきましょう。

 占 有

所有権の取得時効は「一定の要件を備えた占有」が「一定期間継続する」ことによって完成します。

意 味

占有というのは、動産や不動産(土地・建物)を「事実上」支配・管理・所持している状態をいいます。
たとえば、土地・建物について「住んでいる、人に貸している、管理している」状態にあるときは、これらを「占有している」ということです。

「事実上」というのは、支配状態・管理状態が「正当な権利」に基づいていることを必ずしも要しないことを意味します。
「所有権」という正当な権利に基づく占有もありますが、このような権利がなくて占有している場合もあるわけです。

自主占有・他主占有
自主占有というのは、「所有の意思」をもってする占有で、他主占有は、それ以外の占有をいいます。

所有の意思」は、所有者として占有する意思のことで、この意思があるかどうかは、占有の取得原因によって「客観的」に判断されます。
たとえば、買主や窃盗者は、常に所有の意思をもつものとして「自主占有者」とされ、賃借人や質権者などは、常に所有の意思をもたないものとして「他主占有者」とされます。

善意占有・悪意占有
占有すべき権利(本権)がないのにあると誤信する占有が善意占有で、本権がないことを知りながら、または疑いを有している占有が悪意占有です。

さらに善意占有は、その誤信に過失があるかどうかにより、過失ある占有過失なき占有に分けられます。
たとえば、不動産取引で登記簿等の調査を怠ったため、他人の土地の一部を自己所有地と信じて占有した場合は「過失あり」とされ、「過失ある占有」となります。

瑕疵なき占有・瑕疵ある占有
占有が、善意・無過失で、平穏かつ公然になされている場合を「瑕疵なき占有」といい、このうち1つでも欠けている場合を「瑕疵ある占有」といいます。

「平穏・公然・善意・無過失」の占有であれば、10年で所有権を時効取得できますが、「瑕疵ある占有」であれば、所有権の時効取得は20年かかります。

占有の要件

所有権の取得時効に必要な占有は、次のような内容でなければなりません。

自主占有であること
占有は「所有の意思」をもってする自主占有であることを要します。
「所有者として」使用したり、他人に貸して賃料を取っているなどの占有であることが必要です。
「借主」のように、他人の所有権を認めつつ物を支配する他主占有は、いくら長期間継続しても、所有権を時効取得することはできません。

占有が平穏・公然であること
暴力で奪った占有であったり、密かに取得した占有でないことが必要です。

占有が継続すること
占有は、時効期間中継続することが必要です。占有者が任意に占有を中止したり、他人に占有を奪われたときは、占有は中断します。
ただし、他人に奪われても、直ちに「占有回収の訴え」によって占有を回復すれば、占有状態は継続します。

占有の承継(占有の選択)
占有は、売買や贈与、相続などによって承継されるので、「前占有者」の占有と「自己」の占有との関係が問題となります。

民法(187条)によると、占有の承継人は、その選択に従い、①自ら新しく「占有を取得」していることから自己の占有のみを主張してもいいし、②「占有を承継」していることから前占有者の占有をあわせて主張することもできます。
ただし、前占有者の占有をあわせて主張するときは、前主の瑕疵(悪意・過失・強暴・隠秘)をも承継します。

たとえば、善意占有を12年続けた承継人は、悪意占有をしていた前主の占有期間8年をあわせて、20年の悪意占有を主張してもいいし、または自己の12年の善意占有を主張してもいいわけです。

注意点
占有の承継について注意すべき点を確認しておきましょう。

① 占有の選択は「売買、贈与」などのような特定承継だけでなく、「相続」のような包括承継にも認められます。
たとえば、善意の相続人は、被相続人=前占有者の悪意占有と切り離して、自分の瑕疵なき占有だけを主張できます。

② 悪意で占有を始めた者から、売買等によって占有を承継した者が、承継時に善意であれば、その時から善意の占有となります。

③ 占有の承継人が善意・無過失であるかどうかは、前占有者の「占有開始の時点」において判断されます。したがって、前占有者が善意・無過失であれば、悪意の承継人も善意・無過失とされます。

 所有権の取得時効の期間

所有権の取得時効の期間は、次のとおりです。

① 20年間所有の意思をもって、平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得します。
② 10年間所有の意思をもって、平穏かつ公然と他人の物を占有した者は「占有開始の時」に、善意かつ無過失のときは、その所有権を取得します。

善意・無過失は、占有開始時において判断されるので、この時に善意・無過失であれば、のちに悪意に変わっても、10年間で時効取得できます。

 取得時効の効果

取得時効は原始取得である
時効が完成し援用されると、占有者は時効期間の最初、つまり起算点にさかのぼって所有権を取得します。その結果、本来の権利者は、自己の権利を喪失します。
つまり、元の権利者から時効取得者へ「権利が移転する」という承継取得ではないのです。

時効取得者は、前権利者のもとで存在した制限に一切拘束されることなく権利を取得するのであって、これを原始取得といいます。

 所有権の取得時効と登記

物権変動の「対抗要件」として問題となるところです。
くわしくは[23|対抗要件2(登記)]をご参照ください。

2|消滅時効

 消滅時効にかかる権利

物権では、地上権・永小作権・地役権が消滅時効にかかり、また、抵当権は「一定の関係者の範囲」で独自に消滅時効にかかります。
なお、所有権は消滅時効にかかりません。そのため所有権に基づく物権的請求権も消滅時効にかかることがありません。
これは「所有権絶対の思想」の現れです。

 債権等の消滅時効

時効消滅する権利のうち、重要なのは債権です。
代表的な債権といえば、売買契約における代金債権、賃貸借における賃料債権、消費貸借における貸金債権、債務不履行による損害賠償請求権などの一般債権です。

新民法は「債権の種類」により、消滅時効を再構成しています。
① 一般債権(以下、債権)
② 生命等の侵害による損害賠償請求権
③ 不法行為による損害賠償請求権

債権の消滅時効
債権は、次の①または②の場合に「権利を行使しない」ときに時効消滅します。
①は主観的起算点、②は客観的起算点で、どちらか「早い方」の時点で消滅時効が成立します。

① 債権者が「権利を行使することができることを知った時」から5年間
法律関係の早期安定や証拠の喪失などを考えると、従来の10年間では長すぎるので、新民法は、原則として5年間に短縮しました。

② 「権利を行使することができる時」から10年間
消滅時効は「権利を行使できる」にもかかわらず権利を行使しない状態が一定期間継続することにより完成するので、その起算点は、権利を行使できる時からとなり、この時から進行を始めます。

要するに、債権は、債権を行使することができることを「知った時」から5年間行使しなければ時効消滅しますし、たとえ知らなくても、客観的に権利行使が「できる時」から10年間行使しないときにも、時効消滅するわけです。

なお、債権に同時履行の抗弁権が付着している場合にも、消滅時効は進行します。

権利を行使することができる時
「権利を行使することができる時」というのは、履行期限により異なります。

A 確定期限の定めがあるとき
期限到来の時から進行

B 不確定期限の定めがあるとき
期限到来の時から進行
期限の到来を債権者が知らなくても、消滅時効は進行します。
時効における事実状態は客観的なものなので、知・不知という主観によって左右されません。

C 期限の定めがないとき
債権成立の時から進行
期限の定めがないときは、債権者はいつでも履行請求(権利行使)できるので
債権が成立した時から消滅時効が進行するわけです。

D 停止条件が付されているとき
条件成就の時から進行

なお、債務不履行による損害賠償請求権(415条)については、本来の債務の履行を「請求できる時」が消滅時効の起算点となります(最判昭35.11.1)

パトモス先生講義中

債権の消滅時効は、知った時から5年というのが追加されたよ。

生命等の侵害による損害賠償請求権
たとえば、職場における監督者の安全配慮義務違反により「労災事故」が発生したとか、合意どおりに治療しなかったために「医療ミス」が発生した場合など、契約関係にあるときの「債務不履行責任」が問題となるケースです。

債務不履行によって、「生命・身体」に対する侵害により生じた損害賠償請求権は、①か②のどちらか「早い方」の時点で消滅時効が成立します。

① 被害者(またはその法定代理人)が「損害および加害者を知った時」から5年間行使しないとき
② 「権利を行使することができる時」から20年間行使しないとき

不法行為による損害賠償請求権
交通事故などにより「建物」や「自動車」など物品を壊した「不法行為責任」が問題となるケースです。
①か②のどちらか「早い方」の時点で消滅時効が成立します。

① 被害者(またはその法定代理人)が「損害および加害者を知った時」から3年間行使しないとき
② 「不法行為の時」から20年間行使しないとき

不法行為による生命等の侵害の場合
交通事故などによって、生命・身体への侵害により生じた損害賠償請求権は、①か②のどちらか「早い方」の時点で消滅時効が成立します。

① 被害者(またはその法定代理人)が「損害および加害者を知った時」から5年間行使しないとき
② 「不法行為の時」から20年間行使しないとき

結局、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効については、発生原因が「債務不履行」であれ「不法行為」であれ、ともに5年間または20年間とされ、実質的な差異はなくなりました。

パトモス先生講義中

生命・身体の場合は、債務不履行でも不法行為でも、知った時から5年、権利行使できる時・不法行為の時から20年だよ。

確定判決等で確定した権利
確定判決等によって「権利が確定」したときは、時効が更新されます。
この場合には、主観的起算点・客観的起算点の区別なしに、更新の時から一律に時効期間が10年になります。

 その他の財産権の消滅時効

(債権または所有権)以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないとき、時効によって消滅します。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 占有は、相続によっても承継される。この場合、相続人は、自己の占有だけを主張してもいいし、前占有者の占有をあわせて主張することもできる。
被相続人Bは「所有の意思をもって平穏かつ公然に」17年間占有しているから、相続人Cがこの占有を承継すれば、3年間の自己の占有で甲土地の所有権を時効取得することができる。
本問は正しい記述です。
※ 「善意」「無過失」の有無は言及されていないので、「瑕疵ある占有」として解答しなければなりません。

ポイントまとめ

1 所有権の取得時効
① 所有の意思をもってする自主占有でなければ、所有権を時効取得することはできない。
② 所有の意思があるかどうかは、占有の種類によって客観的に定まる。
2 所有権の取得時効の期間
① 瑕疵ある占有は20年
② 瑕疵なき占有は10年
3 占有の承継
① 占有の承継人は、
・ 自己の占有だけを主張してもよく、
・ 前占有者の占有をあわせても主張できる。この場合は、前占有者の瑕疵(悪意や過失)も承継する。
② 占有の承継人が善意・無過失であるかどうかは、前占有者の占有開始時で判断される。前占有者が善意・無過失であれば、承継人が悪意であっても、善意・無過失を承継する。
4 占有者の善意・無過失
占有者の善意・無過失は、占有開始時において判断される。この時に善意・無過失であれば、のちに悪意に変わっても善意占有のままで、悪意占有に変わることはない。
……………………
5 消滅時効の期間
① 債 権
・知った時から5年間
・行使できる時から10年間
② 不法行為による損害賠償請求権
・知った時から3年
・不法行為の時から20年
③ 生命等の侵害の損害賠償請求権
[債務不履行][不法行為]共通
・知った時から5年
・行使できる時または不法行為の時から20年
④ 確定判決等で確定した権利
・時効更新の時から10年
⑤ (債権・所有権)以外の財産権
・行使できる時から20年間

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