|更新日 2020.12.20
|公開日 2017.07.12


れいちゃん01

今回のテーマは大きく改正があったところね。

たくちゃん01

そうだね。「時効の完成猶予」とか「時効の更新」などの新しい用語が登場したから、しっかり確認しておこうね。

得点のカギ次のポイントを押さえましょう。
1 時効の援用権者
2 完成猶予の意味と事由
3 更新の意味と事由

1|時効の援用と援用権者

 時効の援用

意 味

時効の援用というのは、時効によって利益を受ける者が「時効の利益を受ける」という意思を表示して、時効の成立を主張することです。

たとえば、裁判で、借金の返済を求められた債務者が「消滅時効が完成しているので借金は消滅した、債権者の請求棄却を求める」というように、時効を援用することによって、債権の消滅という時効の効果が生じます。

援用するかどうかは自由
時効を援用するかどうかは、時効利益を受ける者の自由意思に任せられています。
時効消滅によって借金が帳消しになったのに、「いや、払います」というように、時効の利益を受けることをいさぎよしとしない人に、時効の効果を押しつけることは適切ではないからです。
その人の道徳心を尊重したのです。

民法(145条)も「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない」と定めています。

 時効の援用権者

「時効は、当事者が援用しなければ」とあるように、時効を援用できる者は当事者です。
「当事者」というのは、「所有権を時効取得した者」や「消滅時効により債務を免れた者」など、時効によって直接利益を受ける者をいいます。
そのほかに、次の者も「当事者」に該当します。

消滅時効の場合
消滅時効では、保証人・物上保証人・抵当不動産の第三取得者などのように、権利の消滅について「正当な利益を有する者」も「当事者」に含まれます。

当事者とは、次の①・②をいうわけです。
① 直接利益を受ける者
② 正当な利益を有する者

少しくわしく確認していきましょう。

保証人および連帯保証人
保証人も連帯保証人も、主たる債務の消滅時効を援用することができます(大判昭7.6.21|同8.10.13)

物上保証人
物上保証人は、債務者の債務(被担保債権)の消滅時効を援用することができます(最判昭43.9.26)

物上保証人というのは、自分の債務ではなく、他人の債務のために自分の不動産に抵当権などを設定する者をいいます。
借金の保証人は「金銭」で他人の債務を保証しますが、物上保証人は「不動産」で保証するのです。

たとえば、親が、子の借金のために、自分の土地に抵当権を設定するような場合です。子が借金を返済できないときは、物上保証人である親は、自分の土地が競売されることを覚悟しなければなりません。

借金があるか消滅しているかは、物上保証人にとって重大な利益を有しているので、借金(金銭債務)の消滅時効について正当な利益を有するといえるのです。

抵当不動産の第三取得者
抵当権のついた不動産を購入した第三取得者は、抵当権によって担保されている債務が時効消滅したことを援用して、抵当権の消滅を主張できます(最判昭48.12.14)

債務が消滅すれば、それを担保する抵当権も当然に消滅します(担保物権の付従性ので、第三取得者は、債務の消滅時効について正当な利益を有するわけです。

取得時効の場合

地上権者、抵当権者
たとえば、Aの所有地を長年占有したことにより時効取得するBと、地上権、抵当権などの設定契約をしたCは、Bの取得時効について援用権があります。

Bが取得時効を援用しない場合は、Bは所有権を取得しませんが、Cは独自に「Bの取得時効」を援用して、Aの所有地上に、地上権、抵当権を有することができます。

建物賃借人
判例は、借地上の建物賃借人は、建物賃貸人が時効取得する敷地所有権について、その取得時効を援用することはできないとしています(最判昭44.7.15)

ステップアップ
ほかの例も確認しておきましょう。

1 詐害行為の受益者
当事者に該当し、援用権がある
債務者が「自分の財産を減少させる詐害行為」をしたときに、詐害行為により財産を譲り受けた受益者は、債権者がその詐害行為を取り消せば、自分の利益を失う立場にあります。
受益者は、債権者の債権が時効消滅すれば、自己の利益を失うことがなくなるので、この点に「正当な利益」有するため、債権の消滅時効を援用することができます(最判平10.6.22)

2 一般債権者
当事者に該当せず、援用権はない
一般債権者には、債務者の財産を責任財産とする債権の消滅時効について固有の援用権は認められません(大審昭12.6.30)

3 後順位抵当権者
当事者に該当せず、援用権はない
先順位抵当権の被担保債権が時効消滅すれば、後順位抵当権者の順位が繰り上がります(順位昇進の原則)が、後順位抵当権者は、これによって権利の喪失を免れるものではなく、順位上昇による配当額の増加という「反射的な利益」を受けるにすぎないからです。

後順位抵当権者は、先順位抵当権者の被担保債権の消滅時効を援用することはできません(最判平11.10.21)

2|時効利益の放棄

あらかじめ放棄はできない
時効の利益は、あらかじめ放棄することはできません。つまり「時効完成前」に放棄することはできないのです。

時効完成前の放棄が無効とされるのは、これを有効とすると、金銭を貸す際に、債権者が債務者を強要して「この債務については時効の利益を放棄します」という特約がなされ、債務者も立場の弱さから承諾してしまうという弊害が生じるからです。

時効利益の放棄は、完成した時効についてだけ認められます。

放棄は本人だけに効力が生じる
「時効の援用」と同じく、時効の利益を受けるか放棄するかは、各当事者の意思に任せられるべきものなので、援用・放棄した本人だけに効力が生じることになります(相対的効果)

したがって、債務者が時効利益を放棄しても、保証人は時効利益を援用して時効消滅を主張できます(大判大5.12.25)し、物上保証人(最判昭42.10.27)抵当不動産の第三取得者(大判大13.12.25)も、時効の利益を援用することができます。

時効完成後の承認
判例は、時効完成後に債務者が債務の承認をした場合には、時効完成の知・不知にかかわらず、債務者は消滅時効の援用権を失うとしています(最判昭41.4.20)
債務者によって債務が承認されると、債権者は弁済に対する期待をもち、債務の存在も明らかになるからです。

3|時効の完成猶予と更新

さて、前回[15|時効制度]で説明しましたが、消滅時効の趣旨は、権利を有する者がその権利を長期間行使しないのは「権利の上に眠っている者」であり、これらの者は法の保護を受けるに値しないとして、その権利を消滅させることにありました。

この趣旨からすると、消滅時効が進行中の権利について、明確な権利の行使があったり、権利の存在が明確になった場合には、もはや時効によって権利を消滅させる理由はなく、消滅時効の完成は猶予されなければなりません。

以上の点を念頭に、時効の完成猶予と更新をみておきましょう。

 時効の完成猶予

意 味

時効の完成猶予は、一定の事由(完成猶予事由)があったときは、時効の完成が猶予されて、「とりあえず」時効によって権利が消滅することはないということです。

たとえば、貸金債権の消滅時効が進行中であっても、その途中で債権者が訴えを起こして「裁判上の請求」をすると、これは明確な権利行使なので、進行中だった消滅時効は、しばらくの間ストップすることになるわけです。

消滅時効の主な完成猶予事由は、以下のとおりです。いずれも明確な権利行使の形態です。

完成猶予事由
① 裁判上の請求
② 支払督促
③ 和解(訴え提起前)・調停
④ 破産手続参加等

完成猶予事由が終了するまでの間
「裁判上の請求」や「支払督促」などの事由が生じたときは「これらの事由が終了するまでの間」、つまり、これらの事由についての手続中は、時効は完成せず、猶予されます(147条1項)
これらの権利行使が、はたして正当なものかどうかが裁判等で争われているわけですから、その手続中は白黒ハッキリしないため、時効の完成を一時ストップさせるわけです。

事由終了後
これらの事由が終了(手続が終了)すると、進む方向は2つしかありません。

権利が確定しなかったとき
確定判決等によって「権利が確定することなく」これらの事由が終了した場合、要するに裁判等に負けた場合は、終了時から6ヵ月を経過するまでは、時効は完成しません。
したがって、「手続終了後の6ヵ月」が過ぎてしまうと、完成猶予されていた消滅時効がそのまま「引き続き進行する」ことになります。
行使したはずの権利が、結局は認められなかったのですから、そのまま時効消滅する運命にあるということになるわけです。

権利が確定したとき|時効の更新
確定判決等が得られて権利が確定した場合は、時効はこれらの事由が「終了した時」から新たに進行を始めます。

訴訟手続の中で権利の存在が明確にされたわけですから、消滅時効は「新たに進行を始める」こととなるのです(147条2項)
時効が、新たに進行を始めることから「時効の更新」といいます。

※ 強制執行や抵当権の実行、競売などがあった場合も、権利行使として、上記と同様の扱いがなされます。

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一時ストップするのは完成猶予、リセットされて新たに再スタートするのは更新

債務者の承認による時効の更新
債務者が、債権者の権利を承認したときは、権利の存在が明確になるため承認の時から、時効は新たに進行を始めます(152条1項)

4|更新なしの完成猶予

以下の事由は、時効の完成を猶予するだけで、更新はありません。更新なしの完成猶予です。

催 告
催告というのは、裁判手続によらない裁判外の請求で、日常用語でいう請求です。
催告があったときは、その時から6ヵ月は時効の完成が猶予され、消滅時効はストップします。
なお、催告の後で、改めて催告しただけでは、完成猶予の効力はありません。
催告をくり返すだけではダメなのです。

催告をした後は、6ヵ月以内に「裁判上の請求等」がなされなければ、完成猶予は認められません。

仮差押え・仮処分
仮差押え・仮処分があったときは、これらは強制執行を保全する手段であることから、その手続終了時から6ヵ月は時効の完成が猶予されます。
あくまでも「仮の」処置ですから、更新はありません。

協議を行う旨の合意
時効消滅しそうな権利について「協議を行う旨の合意」がされたときは、一定期間、時効の完成が猶予されます。

話し合いの余地がありそうな場合にも、消滅時効を阻止するためだけに訴えを提起しなければならないというのでは、円滑な話し合いが困難になってしまうからです。
この合意は書面ですることを要します。

ポイントまとめ

1 時効の援用権者
・保証人、連帯保証人、物上保証人
・抵当不動産の第三取得者
・詐害行為の受益者
・地上権者、抵当権者
2 援用権者でない者
・一般債権者、後順位抵当権者
3 時効利益の放棄
時効完成前に、時効の利益を放棄することはできない。
4 債務の承認
時効完成後に、債務者が債務承認すれば、時効完成の知・不知に関係なく、債務者は消滅時効を援用できない。
5 時効の完成猶予(1)
以下の完成猶予事由が生じたときは、事由が終了するまでの間、時効の完成が猶予される。
① 裁判上の請求  ② 支払督促
③ 和解(訴え提起前)・調停
④ 破産手続参加等
……………………
6 時効の完成猶予(2)
「権利が確定することなく」事由が終了した場合、終了時から6ヵ月は、時効の完成が猶予される。
7 時効の更新
「権利が確定して」事由が終了した場合、時効はその「終了時から」新たに進行を始める
8 債務承認による時効の更新
債務者が債務を承認したときは、時効は「承認の時から」新たに進行を始める
9 催告による完成猶予
催告があったときは、その時から6ヵ月は、時効の完成が猶予される。

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