|更新日 2020.12.20
|公開日 2017.07.12

32年間の出題傾向|出題数は13問。やや頻出のテーマといえます。内訳は、取得時効6問、消滅時効7問です。
時効は、数年おきにコンスタントに出題されていましたが、直近では、平成30年・令和1年・2年(2018~20)と連続3年で出題されました。
いずれも、サービス問題と思えるような初歩的・基本的な問題です。

令和2年は新民法施行の年で、時効は大きな改正があったにもかかわらず、この時の出題は、改正とは何の関係もない取得時効に関する占有承継の問題でした。過去に何度も出されたテーマです。
なお、判決文問題は1度も出されていません。そろそろ出てもいいような。

れいちゃん01

時効って、大改正があったよね。

たくちゃん01

今回は、時効制度の趣旨を確認するだけだから、やさしいよ。
1度目を通すだけで大丈夫。

1|時効の意味

時効のユニークさ
権利の発生・変更・消滅、つまり「権利変動」は、主に契約によって生じます。
売買契約や賃貸借契約、あるいは抵当権設定契約など、「当事者の合意」によって生じるわけです。
ところが、時効は「時間の経過」によって権利変動が生じます。
「一定の時間が経過すれば、自動的に権利が変動する」
この点がユニークなんですね。

借金の返済期限がきているのに、涼しい顔をして返さず、貸した方も請求しないままに5年過ぎると、借金は時効によって消滅します。どんなに請求されても返す必要はありません。

他人の土地に家を建てて自分の土地のように堂々と使っていれば、10年か20年経つと、時効によって土地の所有権を取得することになります。真の所有者から立退きを請求されても、その必要はありません。
裁判を起こされても、この点に関して敗訴することはありません。

なんだか悪者が得をするような、そんな気がしますね。

時効は、ある人が所有者であるような事実状態とか、借金をしていないなどのような事実状態が継続した場合に、この事実状態が「真実の権利関係と一致しているかどうか」を問わずに、つまり真実の所有者であるかどうか、実際には借金をしているのではないかということに関係なく、「一定期間継続した事実状態」を「そのまま権利関係」と認めて、真の所有者や債権があっても、もはやその主張を許さないという制度です。

時効には2つのタイプがあります。
取得時効
「権利者であるかのような状態」を継続する者にその権利を取得させる
消滅時効
「権利不行使の状態」を継続する者の権利を消滅させる

2|制度の存在意義

時効は「真実の権利関係」よりも、「継続した事実状態」を優先させる制度です。
なぜこんな制度があるのでしょうか?
「真実の権利関係」を無視していいのでしょうか?

時効制度が認められる理由は、主に3つあります。

 法律関係の安定を図る

取得時効
長期間継続した事実状態をもとの真実の権利関係に引き戻すことは、その事実状態の上に築き上げられた今までの法律関係をすべてくつがえすことになり、法律関係の安定を妨げることになります。
むしろ、そのまま尊重した方が正当だと考えられる場合があるのです。

 立証の困難を除去する

消滅時効
借金は10年前に返済したということを、後日になって証明するのは非常に困難です。立証の困難を救済するために時効によって新たな法律関係を認め、これを法定証拠として裁判をするのが適切な場合があるのです。

 権利の上に眠る者は保護に値せず

主に消滅時効
消滅時効は、権利を有する者がその権利を一定期間行使しないときは「権利の上に眠っている者」として、法の保護を受けるに値しないものとされ、その権利を消滅させます。

たとえば、Aが、Bに100万円を貸している、つまり100万円の貸金債権(金銭債権)を有している場合に、Aが何もせずに10年が経過すると、この貸金債権は時効消滅して、もはやBに対して100万円を請求することはできなくなります。
時効消滅させないためには、AはBに「裁判上の請求」や「支払督促」などをして、権利を行使しなければなりません。
「権利の上に眠っている者」ではないことを示さなければならないわけです。

悪用もやむをえず?
時効制度を悪用して、他人の土地を自分のものにしてやろうとか、多額の借金をすべて帳消しにしてやろうとする人が出てくるのは、やむをえないことです。
どのような制度も悪用する人を根絶することはできません。
悪用による弊害よりも、時効による意義がより大きければ、やはり制度として定着させておくことが望ましいのです。

時効制度は、遠い昔のローマ時代から今日まで2000年以上にわたって存在してきました。やはり、合理的な存在理由があって時効制度を認めないと困るからなのです。

3|時効の遡及効

起算日にさかのぼる
時効が完成すると、その効果として権利を取得したり、権利が消滅しますが、この効果は時効期間の最初の時に、つまり起算日にさかのぼります
この効力を遡及効(そきゅうこう)といいます。

時効は、長期間継続した事実状態をそのまま権利として保護する制度ですから、遡及効を認めなければ論理が一貫しませんね。

たとえば、10年間所有者として占有してきた土地を時効取得する者は、「10年前の最初から所有者となる」のであって、10年後に所有者となるのではありません。

時効の起算点と遡及効

B時点で「時効が完成」すれば、占有を開始したA時点=起算日から所有者になります。「時効が完成」したB時点から所有者になるのではありません。
これが、時効の効力が起算日にさかのぼるという意味です。

したがって、時効取得した権利を時効期間中に侵害した者は、旧権利者に対してではなく、時効取得者に対して不法行為責任を負うことになります。

遡及効

遡及効は、法律効果を起算点にさかのぼって生じさせることなので、現在まで築きあげられた権利関係をすべてひっくり返すことになります。
これは、法体系の基本理念である法的安定性を害するため、遡及効は原則として認められません。

民法が遡及効を認めたのは、それぞれに理由があります。
主なものは下記のとおりです。

無権代理行為の追認/116条
無権代理を追認すれば、別段の意思表示がない限り、契約の時にさかのぼってその効力を生じます。
取消しの効果/121条
取り消された行為は、はじめから無効であったものとみなされます。
時効の効力/144条
時効の効力は、その起算日にさかのぼります
相 殺/506条2項
相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生じます。

ポイントまとめ

 時効は時間の経過によって権利変動が生じる制度である。
 時効の効力は、その起算日にさかのぼる

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