|更新日 2020.12.20|公開日 2017.07.10

32年間の出題傾向無権代理の出題は6問。選択肢出題は10肢です。
表見代理にくらべて圧倒的に無権代理が出題されています。ちなみに、令和1年(2019)には、無権代理行為と相続に関する「判決文問題」が出題されています。
得点のカギ次のポイントを理解することが得点のカギです。
1 無権代理の本人の権限は?
2 無権代理の相手方の権限は?
3 無権代理人の責任は?
れいちゃん02

無権代理って、むつかしい?

たくちゃん01

そんなことないよ。基本さえ押さえておけば大丈夫。

1|無権代理

1|意 味

無権代理というのは、まったく代理権のない者が代理行為をする場合をいいます。
本人の知らないところで、代理人と称する者が勝手に代理行為をしたわけで、さすがに本人にそのまま責任を負わせることはできません。

表見代理とはならない「無権代理」では、何の責任もない本人を犠牲にしてまで相手方の利益を優先させることは適切ではないので、当然には本人に対してどのような効果も生じません。

ところで、無権代理行為は、いまだ効果を生じない状態、つまり有効とも無効とも確定しない状態にあります。
この未確定状態を「確定」できるのは、本人と相手方です。
そのため、双方には次のような権限が認められています。

・本人には、追認権および追認拒絶権
・相手方には、催告権および取消権

本人が追認すれば有効なものとして確定し、追認を拒絶すれば無効に確定します。
相手方が取り消せば、無効に確定します。

 本人の追認権・追認拒絶権

本人は、当然には無権代理行為によってどのような法律効果も受けませんが、これを追認して、代理権があったと同様の効果を生じさせることもできます。
無権代理行為を「有効なものとして確定」させる権利を追認権といいます。

無権代理行為といっても、全部が全部、本人に不利益なものとは限りません。
息子が親の代理人と称して、勝手に親の土地を売却したところ、意外と高く売れたので、親がこの無権代理行為(売買契約)を追認したいような場合もあるわけです。

1|追認はだれにする?
追認をする相手方は、無権代理人でも、相手方でもかまいません。

2|追認の効果
本人が追認すると、無権代理行為は「契約の時」にさかのぼって、つまり、はじめから有効な代理行為として確定します。
「追認した時」から有効となるのではありません。

なお、追認によって第三者の権利を害することはできません。

3|追認を拒絶したら?
勝手に代理行為をされた本人としては、追認を拒絶して、無権代理行為の効果が自分に及ばないようにすることができます。
追認を拒絶すると、無権代理行為は無効なものとして確定します。

 相手方の催告権・取消権

相手方は、本人の「追認」があれば、無権代理行為は本人に対して効力を生じ、「追認が拒絶」されれば、効力を生じないという不安定な状態におかれて、非常に不利益です。
そこで、こうした相手方を救済するため、相手方には催告権取消権が与えられています。

1|催告権

本人に対して、相当の期間を定めて、その期間内に「無権代理行為を追認するかどうか」を確答するよう、催告することができます。
この催告に対し、本人が確答しないときは追認を拒絶したものとみなされ、無権代理行為は無効なものとして確定します。

催告権は、無権代理人に代理権がないことを知っていた悪意の相手方にもあります。
催告は、無権代理行為を早期に確定させることを促すにすぎないからです。

2|取消権

善意の相手方は、無権代理行為を取り消すことができます。
取消しは、無権代理行為を「確定的に無効にする」行為であるため、取消しがあると、本人はもう追認できなくなります。

ただし、相手方が無権代理であることを知っていた悪意のときは、取消権はありません。代理権がないと知りながら契約しているのだから、取消権を認める必要はないのです。

なお、本人が追認すると、無権代理行為は有効な代理行為として確定するため、取消しは、本人が「追認しない間」にする必要があります。

相手方が無権代理行為を取り消すと、無権代理人の責任(117条の責任)も追及できなくなります。
取消しは、無権代理行為を確定的に無効とするものであり、本人の追認の可能性を奪うと同時に、無権代理人の責任を追及しないという意味をもつのです。

 無権代理人の責任

無権代理人には重い責任が課せられています。
これは、代理制度に対する社会的信用の維持と取引の安全を図るために認められた特別の責任です。

1|原 則

|履行責任または損害賠償責任|
無権代理人は、相手方の選択に従い、契約の履行責任または損害賠償責任を負うこととなります。
つまり、自分自身が本人として契約した場合と同様に、その「契約を履行」するか、それに代わる「履行利益の損害賠償」をしなければなりません(最判昭32.12.5)

この責任は、無権代理人に過失があるかどうかに関係なくみとめられる無過失責任です(最判昭62.7.7)

2|例 外

ただし、以下の場合にはこの責任はありません。
① 本人が追認したとき。
② 無権代理人が代理権を証明したとき。
③ 相手方が、代理人と称する者に代理権がないことを知っていた悪意のとき、または過失によって知らなかったとき。
相手方は、善意・無過失であることが必要なのです。
ただし、相手方に過失があっても、「無権代理人が自己に代理権がないことを知っていた」ときは、責任を免れません。
④ 無権代理人が制限行為能力者のとき
これらの者に重い責任を負わせるのは適当ではないからです。

 表見代理との関係

表見代理も「無権代理の一種」ですから、善意・無過失の相手方は、表見代理の主張をしないで、直ちに無権代理人の責任を追及することができます(最判昭62.7.7)

つまり「表見代理が成立する」場合でも、相手方は自由に、
① 本人に表見代理の主張をすることもできますし、これを主張せずに、
② 無権代理人に責任を追及することができます。

2|無権代理と相続

相続によって、無権代理人の地位と本人の地位が同一人に帰属した場合の問題です。
※ 令和1年(2019)に判決文問題が出題されましたので、当分の間スルーでかまいません。

 無権代理人が本人を相続

無権代理人相続型

|本人死亡|
たとえば、本人Aの子Bが無権代理人としてAの財産を処分した後に、「Aの死亡」によって本人を相続したような場合です。

無権代理|本人を相続

1|単独相続の場合
無権代理行為は、当然に有効となります(最判昭40.6.18)

無権代理人には、①相続による本人としての資格と、②無権代理人としての資格が併存しているわけですが、追認を拒絶できる本人の地位を承継したとしても、追認の拒絶はできません。

というのも、そもそも「本人に効果が帰属する」として行為をしながら、その地位を相続したら追認を拒絶するということは、信義則上許されないからです。

そこまでして無権代理人を保護する理由はなく、むしろ善意・無過失の相手方を保護すべきだからです。

2|共同相続の場合
他の相続人と共同相続した場合には、相続人全員の「共同の追認」がない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然には有効とはなりません。

判例(最判平5.1.21)は「無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属するものであって、全員が共同して行使する必要がある」としています。
無権代理行為とは関係のない他の相続人の利益を保護するためです。

 本人が無権代理人を相続

本人相続型

|無権代理人死亡|
Aの子Bが無権代理人としてAの財産を処分した後に、「Bが死亡」し、本人AがBを相続したような場合です。

無権代理人を相続

無権代理人を相続した本人は、追認を拒絶できる地位にあっても、相続により無権代理人の責任も承継するので、相手方は、善意・無過失であれば、本人に対して、①履行請求か、②損害賠償請求をすることができます(最判昭48.7.3)
本人は「追認を拒絶できる地位」にあることを理由に、この責任を免れることはできないのです。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説][問題1] 無権代理行為としてなされた売買契約は、本人Bがこれを追認しない間は、相手方Cが取り消すことができる。
しかしこの取消権も、相手方Cが、Aに「代理権がないことを知っていた」悪意のときには、認められない。代理権がないと知りながら契約をしているのだから、取消権を認める必要はないのである。
本問は正しい記述です。

[問題2] 無権代理行為の追認には遡及効があり、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生じる。
「追認をした時から将来に向かって生ずる」のではないので、誤りです。

ポイントまとめ

 無権代理行為は、当然には本人に対してどのような効果も生じない。
 無権代理行為について、①本人には、追認権・追認拒絶権、②相手方には、催告権・取消権が与えられている。
 無権代理行為は、本人が追認すると「契約の時」にさかのぼって、はじめから「有効な代理行為」として確定する。
追認を拒絶すると、無効なものとして確定する。
 相手方の催告に対して、本人が確答しないときは追認を拒絶したものとみなされ、無権代理行為は無効なものとして確定する。
 善意の相手方は、本人が追認をしない間であれば、無権代理行為を取り消すことができる。悪意の相手方に、取消権はない。

 無権代理人は、①自己の代理権を証明したとき、または、②本人の追認があるときを除いて、相手方の選択に従い、履行または損害賠償の責任を負う。
 相手方が、悪意または過失があるときは、無権代理人の責任を追及することはできない。
 善意・無過失の相手方は、本人に表見代理の主張をすることもできるし、これを主張せずに、無権代理人に履行責任または損害賠償責任を追及することができる。
 本人が死亡して、無権代理人が単独相続した場合、無権代理人は追認を拒絶できない。
10 無権代理人が死亡して、本人が相続した場合、善意・無過失の相手方は、本人に対して、①履行請求か、②損害賠償請求ができる。

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