|更新日 2020.12.20|公開日 2017.07.08

32年間の出題傾向意外にも、表見代理が1問(全4選択肢)として出題されたのはわずかに1問(平11年問7)です。ほとんどは選択肢として、過去に10肢が出題されています。
得点のカギ次のポイントを理解することが得点のカギです。
1 表見代理の3タイプは?
2 3タイプの要件と効果は?
3 相手方の要件は?
4 表見代理が競合するときは?

1|表見代理と無権代理

 無権代理の2つの類型

「表見代理」の解説の前に、広く「無権代理」について確認しておきましょう。

無権代理というのは、代理権がないのに代理行為として行われた行為をいいます。

代理権がないため、「本人」に対して効果が生じることはなく、また「代理意思」をもってなされた行為なので、「代理人」に対しても効果を生じません。
要するに、無権代理行為は代理行為とはならずに「無効となるべき性質」のものなのです。

したがって、相手方としては、無権代理人に対して「不法行為責任」を追及するほかないのですが、しかし、無権代理行為をすべて「不法行為」として処理することは、取引した相手方の保護としては十分ではありません

そこで民法は、無権代理を次の「2つの類型」に分けて対応しています。

 本人と無権代理人との間に「代理権の存在を推測させるような特別な事情がある」場合は、有効な代理行為として「本人」に責任を負わせる。
 そうでない場合は、無効として扱い「無権代理人」に責任を負わせる。

を表見代理、を狭義の無権代理(次回解説)といいます。

両者の関係は下図のようになっています。
表見代理と無権代理の関係

「表見代理」も「広い意味では無権代理」の1種です。
そして、「狭義の無権代理」が次回で解説する、いわゆる無権代理です。
試験では「狭義」という用語は使用されておらず、単に無権代理といっていますが、意味は狭義の無権代理のことです。

2|表見代理の根拠

表見代理は、代理権の存在を推測させるような事情(代理権があるかのような外観)があるために、相手方がこれを信頼して「代理権があると思って」取引関係に入った場合に、相手方の信頼・取引の安全を保護するために、その無権代理行為を有効な代理行為として扱い、その効果を「本人」に帰属させる制度です。

このような責任を「本人」に負わせるのは、一方で、責任を負わされてもやむをえないといえるような本人側の帰責性が存在し、他方で、善意・無過失で代理権の存在を信頼したという相手方の信頼が存在しているからです。

3|表見代理の3タイプ

|表見代理の3タイプ|

表見代理には、代理権が存在するかのような「外観を生じさせた事情」に応じて、次の3タイプがあります。

 代理権授与の表示による表見代理
代理権の存在を推測させる事情
 権限外の行為による表見代理
一定の代理権があるという事情
 代理権消滅後の表見代理
かつて代理権があったという事情

以下、それぞれの表見代理をみていきましょう。

 代理権授与の表示がある表見代理

1|意 味

実際には代理権を与えていないのに、本人が「ある人に代理権を与えた」かのような表示をしたために、この表示を信頼した相手方を保護する表見代理です(109条)

この表見代理が成立するには、それぞれ次のような要件が必要です。

2|要 件

[本 人]
代理権授与の表示をしたこと|
実際には代理権を与えていないのに、本人が、相手方や第三者に対して、「ある人に代理権を与えた旨を表示した」ことが必要です。
このような「表示」をしたことに、本人の帰責性があるわけです。

表示の相手方は、特定人でも不特定人でもよく、その方法は、口頭でも文書でもかまいません。
たとえば、本人Aが、Bを代理人とする旨の「新聞広告を出す」ことは、「代理権を与えた旨を表示」したことになります。

典型例を2つみておきましょう。

1 名義貸し
Bが本人Aの名前で取引することを、Aが承諾・黙認していた場合です。

判例には、次のような例があります。
① 請負人Aが、下請負人Bに「Aの名義を使って」工事することを許容した場合には、Bを工事材料購入などの「代理人とした旨を表示した」ことになります(大判昭5.5.6)

② 官庁が、その一部局とみられるような「名称(たとえば、A裁判所厚生部)を使用させて」庁舎の一部で第三者と取引することを許可した場合には、その官庁の「代理人とする旨を表示」したことになります(最判昭35.10.21)

2 白紙委任状の交付
「代理権を与えた」旨の委任状には、通常は代理人の氏名・代理権の内容などが記載されますが、これらを記載しない「白紙委任状」が作成されることもあります。

「白紙委任状を交付」することは、その所持者に「代理権を与えた旨を表示」することになります。白紙部分をどのように補充してもよいという権限を与えているような「表示」があると考えられるからです。

なお、白紙委任状を「直接」交付された者が、それを呈示した相手方ばかりでなく、白紙委任状の「転得者」がそれを呈示した相手方も、本条(109条)の適用があります(最判昭45.7.28)

[表見代理人]
表見代理人が「代理権の範囲内」で代理行為をすること。
範囲を越えて代理行為をした場合は、「権限外の行為の表見代理」と重複適用されることとなります。

[相手方]
代理権の存在について善意・無過失であること(3つの表見代理に共通の要件

相手方が、代理人に代理権がないことを知っていたり(悪意のとき)、あるいは過失によって知らなかった(善意だが過失がある)ときには、表見代理を成立させて相手方を保護する必要はないからです。

3|効 果

|3つの表見代理に共通
表見代理が成立すると、あたかも代理権が存在したかのように、本人は、通常の代理行為と同様の責任を負うこととなります。
これは、3つの表見代理共通の効果です。

 権限外の行為の表見代理

1|意 味

代理権のある者が、その権限を越えた行為をすることです。
いわゆる「越権行為」ですね。権限外の部分が無権代理となるわけです。

たとえば、100万円を借りる代理権を有する者が、1,000万円を借りるとか、家屋賃貸の代理権を有する者が、その家屋を売却したとか、抵当権設定の代理権を有する者が、その範囲を越えて売買契約を締結したような場合が、これにあたります。

この表見代理が成立するには、それぞれ次のような要件が必要です。

2|要 件

[本 人]
基本代理権の存在|
代理人に「何らかの代理権」、つまり基本代理権を与えていたことが必要です。
代理人に「基本代理権」を与えたことによって越権代理行為の原因を与えており、この点に本人の帰責性があるわけです。

[表見代理人]
表見代理人が権限外の行為をすること。
権限外の行為については代理権はないが、ほかに基本代理権をもっていることが必要です。

判例は、Aから移転登記申請を委任されたBが、印鑑と印鑑証明書を濫用して、Aを自分の債務の保証人にした事例について、登記申請についての権限は「基本代理権にあたる」としています(最判昭46.6.3)

[相手方]
権限外の行為を「権限内の行為」であると信じ、しかも、そう信じることについて正当な理由があることが必要です。
つまり、善意・無過失でなければなりません。

たとえば、本人から実印・印鑑証明書・委任状など(代理権を象徴するような物)を託された代理人が、権限外の行為をした場合には、正当な理由があるとされます。

なお判例は、妻が、夫の実印を保管・所持しているというだけでは、土地建物を売却する代理権があると信ずべき正当な理由があるとはいえない、としています(最判昭27.1.29)
家族は、権利証や実印を持ち出しやすい立場にあるからです。

 代理権消滅後の表見代理

1|意 味

代理人が、本人から代理権を与えられていたところ、その代理権が消滅した後に、なお代理人として法律行為をし、相手方が、この者の代理権の存在を信頼して法律関係に入ったという場合です。

ちなみに、代理権の消滅原因には、代理人が、①「後見開始の審判」を受けたこと、②「破産手続開始の決定」を受けたことなどがあります。

この表見代理が成立するには、次のような要件が必要です。

2|要 件

[代理人]
代理権の消滅後に、その「代理権の範囲内」において行為をすること。
はじめから」代理権を有していなかった場合には、この表見代理は成立せず、狭義の無権代理(次回解説)となります。

[相手方]
代理権の消滅について、善意・無過失であること。
相手方が、代理権消滅の事実を知っていたり(悪意)、過失によってその事実を知らなかったときは、保護する必要はなく、この表見代理は成立しません。

 競合した場合は?

|代理権授与の表示と権限外の行為|
「代理権授与の表示」(109条)のある表見代理人が、表示された「代理権の範囲を越えて」(110条)範囲外の代理行為をした場合です。

この場合には、あわせて適用され、いずれの要件も満たされる場合、つまり、①代理権授与の表示があること(109条)、②代理権があると信ずべき正当な理由があること(110条)により、表見代理が成立します。

|代理権消滅後と権限外の行為|
「代理権消滅後」(112条)に、以前の「代理権の範囲を越えて」(110条)範囲外の代理行為をした場合です。

この場合もあわせて適用され、いずれの要件も満たされる場合、つまり、①代理権消滅後の代理行為であること(112条)、②代理権があると信ずべき正当な理由があること(110条)によって、表見代理が認められます。

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[正解&解説][問題1] 権限外の行為の表見代理の問題。
代理人Aに、土地への担保権設定と借金(消費貸借契約)の代理権しかないにもかかわらず、相手方Cが、Aに「土地売却の代理権がある」と信じ、それに「正当の事由」があるとき、つまり善意・無過失のときは、権限外の行為による表見代理として売買契約が成立する。
本問は誤った記述です。

[問題2] 代理権消滅後の表見代理の問題。代理権消滅後であっても、相手方Aが、Cの代理権の消滅について「善意無過失」であれば表見代理が成立し、その結果、売買契約によりAは甲地を取得することができる。
正しい記述です。

ポイントまとめ

 表見代理は、権利の外観を信じた者は保護されなければならない、という考え方に基づいている。
 表見代理は、本人と表見代理人との間に「代理権の存在を推測させるような特別な事情」がある場合に成立する。
 表見代理の3タイプは次のとおり。
1 代理権授与の表示による表見代理
2 権限外の行為による表見代理
3 代理権消滅後の表見代理
 表見代理が成立するためには、相手方(第三者)は、代理権の存在について、善意・無過失であること(代理権があると信ずべき正当な理由があること)を要する。
 表見代理が競合した場合は、双方の表見代理が適用される。

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