|更新日 2020.02.27
|公開日 2019.11.26

31年間の出題傾向手付の出題は3問。頻出テーマではありません。選択肢の1つとして出される可能性もありますから、基本はおさえておきましょう。
[改 正] 大きな改正はなく、新規追加された売主の基本的義務も目新しいものではありません。

れいちゃん02

手付ってむつかしいの?

たくちゃん01

すごくやさしいよ。履行の着手に注意しようね。

1|手 付

不動産売買では、契約時から移転登記・残金決済・物件引渡しまで時間がかかり、その間、法律関係がやや安定しないため、通常、契約の時に、買主が売主に一定の金銭を「手付」として支払うのが慣行です。

手付には、①証約手付、②違約手付、③解約手付の3つの性格がありますが、特約がない場合は、民法は「解約手付」としています。

 解約手付

|解約手付の意味|
解約手付というのは、交付した手付を放棄して、あるいは、受け取った手付の倍額を返還して「契約を解除できる」という手付をいいます。
つまり、解除だけを目的とした手付であって、債務不履行を理由とする契約解除ではありません。

解約手付であれば、手付を交付した買主からは、その「手付を放棄」することによって、受け取った売主からは「手付の倍額を返還」することによって、相手方の承諾を得ず、かつ、損害賠償をすることなく契約を解消することが可能になるわけです。

 履行の着手

以下、注意すべき点を確認しましょう。

1|相手方の履行着手という制限
手付の交付があるからといって、いつでも契約を解除できるわけではありません。

「相手方」が、契約の履行に着手してしまえば、一方は、もう手付による解除はできません。これは、履行に着手して準備を開始した相手方に不測の損害を与えないためです履行着手者の保護

したがって「みずから履行に着手」していても、相手方が履行に着手するまでは、手付解除が可能です。
たとえば「売主が履行に着手する前」であれば、買主は、中間金(代金の一部)を支払って自ら履行に着手しても、手付を放棄して契約を解除し、すでに支払った中間金の返還を求めることができます。

2|売主は現実の提供が必要
手付を「交付」した買主が解除するには、解除の意思表示だけで足ります。
しかし、手付を「受領」した売主が解除する場合には、手付の倍額を「現実に提供」しなければなりません。単に口頭で手付の倍額を償還することを告げて「受領を催告する」だけでは足らないのです。

この点に関して、改正民法は「売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる」といっています(557条1項)。ただ「実際の払渡し」までは不要であり、「現実の提供で足りる」というのが判例です(最判平6.3.22)

3|損害賠償請求はできない
解約手付の趣旨は、手付だけの損失を覚悟すれば契約を解除できるというものであって、「債務不履行による解除ではない」ので、損害賠償の問題は生じません。
そもそも解約手付は「契約の解除を目的」とした手付ですからね。

2|売主の基本的義務

 対抗要件を具備させる義務

不動産売買では、売主が不動産の所有権を買主に移転すること、そして買主がこれに対して代金を支払うことを約することによって、効力が生じます。

売主には「権利の移転」が義務づけられているわけですが、改正民法は、権利の移転について、売主には「対抗要件を備えさせる義務がある」ことを明確にしました(560条)

売主は、買主に権利を移転する義務を負うほか、この権利の移転を第三者に対抗するための要件、つまり「対抗要件」を備えさせる義務を負わなければならないのです。
この義務を負わないとする場合には、その旨の特約が必要です。

 他人の権利の移転義務

他人の権利を売買したときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負います。
売主は「自らの権利」だけではなく「他人の権利」を目的とすることもできるわけで、これを「他人物売買」といいます。

他人の物だからといって、売買が「無効」となるわけではなく、売主は、他人の権利を「取得して」買主に移転する契約上の義務を負うことになるのです。

移転できなければ、債務不履行責任が生じ、買主は、契約を解除して損害賠償請求をすることになります(最判昭41.9.8)

権利の「全部」が他人に属する場合だけでなく、「一部」の場合でも、これを取得して買主に移転する義務があります。

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[正解&解説] 手付の交付があった場合、自分が履行に着手していても、相手方の履行着手前であれば、契約を解除することができます。
しかし、相手方である「買主が履行に着手」してしまえば、売主はたとえ「手付金の倍額」を支払っても解除することはできません。
記述は誤りです。

ポイントまとめ

 解約手付は、交付した手付を放棄して、あるいは、受け取った手付の倍額を返還して契約を解除できる手付をいう。
 相手方の履行着手前であれば、みずから履行に着手していても、解除ができる。
 手付を受領した売主が解除するには、手付の倍額を現実に提供しなければならない。単に「口頭」で手付を償還することを告げて受領を催告するだけでは足らない。
 解約手付により解除しても、これを理由に損害賠償請求をすることはできない。
 売主は、買主に対し、権利の移転について、登記などの対抗要件を備えさせる義務を負う。
 他人の権利を売買したときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

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