|公開日 2017.7.16|最終更新日 2018.6.04

今回のテーマは担保物権の性質・効力です。担保物権って何なのか、付従性とか物上代位性って何なのかを理解します。基本中の基本です。

1 担保物権って何だろう?

1 意 味

「担保」というのは、たとえば、お金を貸している債権者が、その債務者から「確実に弁済を受けられるようにする」ための仕組みをいいます。
この仕組みは民法上2つあって、1つが「担保物権」、もう1つが「保証制度」です。

「担保物権」は物による保証システム、「保証制度」は保証人など、人による保証システムです。


担保物権は、債権者が弁済が受けられないときに、債務者の財産に対して、債権を優先的に行使できる物権の総称をいいます。

担保物権

民法上4種類の担保物権があります。
① 留置権
② 先取特権(さきどりとっけん)
③ 質権
④ 抵当権

担保物権は、債務者または第三者の「特定の財産」で弁済を保証するシステムですから「物的担保」といいます。

ここで「第三者」というのは、債務者の親兄弟であったり知人・旧友であったりします。本来の債務者ではないのですが、債務者に頼まれて自分の土地や建物に担保物権をつけるのです。債務者ではないという点を注意してください。

これらの第三者が物上保証人です。
[第16回]時効の援用|時効利益の放棄 で登場しましたね。忘れた人はそちらで確認してください。→→ コチラ


こうした「物的担保」に対し、保証制度は、本来の債務者が弁済できないときに、特定の第三者が弁済することで「人的担保」といったりします。

人的担保は、物的担保にくらべて債権回収の確実性は低いのですが、物的担保よりも成立が容易なために、比較的低額な金融に多く用いられる手法です。

一方、土地建物などの「不動産」を対象にした担保物権は、債権回収の確実性は高いのですが、成立にコストと手間がかかるため、不動産購入や企業間取引などの高額な契約に対して使われる手法といえます。

2 担保物権の効力

担保物権には、債務者の債務の履行を促す効力、つまり「弁済を促す効力」があります。これには留置的効力と優先弁済的効力の2つがあります。

1 留置的効力
目的物を債権者のもとに置いて(留置して)、債務の弁済があるまでは返還しないようにして間接的に債務の弁済を促す効力です。
留置権、質権にあります。

たとえば、留置権者は、債権の弁済を受けるまで、留置している債務者の物を返さないことができます。
債務者としては、自分の物を返してもらいたければ、債務を弁済するほかありません。こうして債務の弁済を促すわけです。

2 優先弁済的効力
期日までに債務が弁済されないときに、債権者は、担保をつけた担保目的物を競売で換金して、ほかの債権者(担保をつけていない一般債権者)よりも優先的に債務の弁済を受けることができます。
先取特権、質権、抵当権にはあって、留置権にはありません。

たとえば、抵当権者は、期日までに債権の弁済を受けられないときは、抵当物を競売して、その競売代金から他の債権者よりも優先して弁済を受けることができます。
債務者としては、目的物を競売されたくなければ、債務を弁済するほかありませんね。

もともと債権者は、債務者の総財産から債権額に応じて平等に債権の満足を受けるのが原則(債権者平等の原則)なのですが、担保物権では、債権者が担保目的物を競売した代金のうちから、債権額を一般債権者よりも先に取得することができるため、「債権者平等の原則」の例外といえます。

担保物権の効力

3 担保物権の性質(通有性)

担保物権は、債権を担保するという機能をもっていることから、次のような4つの性質を有しています。どれも重要な作用を果たします。

① 付従性
② 随伴性(ずいはんせい)
③ 不可分性
④ 物上代位性

すべての担保物権にこれらすべての性質があるわけではなく、いずれかの性質がないものや、緩和されているものもあります。

1 付従性

債権なきところに存在せず
担保物権は、債権を担保するために設定されますから、債権が存在しなければ、これを担保する担保物権も存在することができません。

たとえば、債権が取消しや無効を理由に成立しないときは担保物権も成立せず、債権が弁済や時効などによって消滅すると、担保物権も当然に(自動的に)消滅します。
「成立や存在が債権に付従している」という意味で、これを担保物権の付従性といいます。

付従性による消滅は、担保物権の本質に基づくものですから、担保物権の登記を抹消しなくても、その消滅を第三者に対抗することができます(登記簿に抵当権の記載があっても、実は消滅しているかもしれないのです)。

 付従性の緩和
質権と根抵当権については金融取引の需要から、債権が現実に成立していなくても、将来発生する債権を担保するためにも、あらかじめ設定することができます。
将来発生する可能性のある債権や条件付債権であってもいいのです。
これを付従性の緩和といいます。

担保物権は特定の債権を担保することが目的ですから、付従性を厳格に適用すると、債権が成立・発生するたびに、1つ1つ担保権を設定しなければならず、多大なコストと時間がかかります。

債権が日々成立・変更・消滅している企業間取引においては、これは耐え難いもので、迅速な取引の必要上、従来から付従性をもっと緩やかにすべきだという要請が根強くあって、その結果、債権が現在発生していなくても、債権額と債権の範囲を特定すれば担保権を設定することが可能となったのです。

その具体例が、根抵当、根保証ですが、付従性を緩和すると過大な権利を債権者に与えることになり濫用の危険があるため、これらの根担保は、その成立に厳格な要件が課せられています。

2 随伴性───ともに移転
担保物権は、特定債権の担保が目的ですから、その債権が譲渡されれば、これを担保する担保物権も一緒に移転します。担保物権の「随伴性」といいます。

3 不可分性
全部の弁済を受けるまで、目的物の全部について権利を行使できるという性質をいいます。

たとえば、貸金債権2000万円のうち半額が弁済されたからといって、担保にしていた土地の半分について自動的に担保物権が消滅するということはありません。
2000万円全額の弁済がない限りは、債権者は全部を競売できます(弁済を受けられるのは債権額の範囲内であることはいうまでもありません)。

これを担保物権の「不可分性」といい、担保物権の効力を強めるためにすべての担保物権に認められています。

4 物上代位性──ほかの価値物に及ぶ
重要な性質で、試験にもちょくちょく出ます。

担保物権は、目的物がもっている交換価値(金銭に換算したときの価値)を支配する権利であって目的物自体を使用する権利ではありません
したがって、何かの原因でその交換価値がほかの価値物に代わった場合には、その価値物に担保物権の効力が及びます。

たとえば、目的物が売却・賃貸されたり、滅失・損傷したときに、債務者が受け取る売買代金や賃料、火災保険金や損害賠償請求権について担保権を行使できるのです。
これを「物上代位性」といい、質権、先取特権、抵当権には認められていますが、留置権にはありません。

2 ポイントまとめ

1 用語の意味

担保物権でよく出てくる用語の意味を理解しておきましょう。

被担保債権
 =担保物権がついた債権
(例)代金債権、貸金債権など

担保目的物
 =債権の担保とされた目的物
 =抵当物
(例)宝石や時計などの動産
土地や建物などの不動産

担保権設定者
 =担保目的物を提供した債務者または第三者(物上保証人)

担保権者
 =被担保債権を有する債権者


■図に書くとこんなイメージです。

担保物権の設定



(この項終わり)