|更新日 2020.02.01
|公開日 2017.07.15


れいちゃん01

今回のテーマは?

たくちゃん03

物権変動と登記の関係についての代表的な論点だよ。
令和元年(2019)には、何と2問も出題されたんだよ。
しばらくは出ないのかな?

1|取消しによる物権変動と登記

 取消し前の第三者

|取消しの効果の問題|
取消し前」の第三者に対しては、登記ではなく、取消しの効果の問題です。

取消前の第三者

たとえば、Aが制限行為能力強迫などを理由に売買を取り消した場合、「登記」が第三者Cに移転していても、Aは「登記なし」に、取消しの効果をCに主張することができます。

この場合は、そもそも取消しによって生じる物権変動をあらかじめ登記させることは不可能ですし、また「登記がないと対抗できない」とすると、制限行為能力や強迫を理由とする取消しは、ほとんど意味がなくなってしまうからです。

|錯誤・詐欺による取消しの場合|
ただし、Aが自分の錯誤やBの詐欺を理由に取り消した場合には、その取消しは善意かつ無過失の第三者に対抗できないため、Cが善意・無過失であれば、Cには取消しの効果を対抗できません。
これは「対抗要件の問題」ではなく、取消しの効果、つまりは善意・無過失の「第三者保護の問題」なのです。

 取消し後の第三者

|対抗要件の問題で、登記で決まる|
取消し後」の第三者に対しては、対抗要件の問題で、権利取得の優劣は、登記の先後で決まります。

つまり、契約が取り消された場合は、
① 取消しによるB→Aの所有権復帰
② 取消し後のB→Cへの所有権移転は、
二重譲渡と同様の関係が成立し、その優劣は登記によって決まるため、「先に登記を備えた方が優先」します。

取消後の第三者

Aが、AB間の売買を取り消した後は、Aは登記がなければ「取消し後」に権利を取得した第三者Cに対抗できないのです。

|第三者の意味|
「詐欺・強迫」で学習したように、「第三者」というのは、取消しの原因(詐欺や錯誤など)となる意思表示を前提として新たな利害関係に立った者をいいます。
つまり、取り消される前に取引関係に立った者です。

取消し後」に第三者が登場しても、権利関係は取り消されてすでに終わっており、これを前提として取引関係に立ったわけではないので、取消しによる保護の対象となる第三者には該当しないのです。

2|時効と登記

 所有者との関係

原権利者Aの所有地を占有しているBが、時効取得の要件を満たせば、Bは「登記がなくても」、Aに対して、所有権取得を主張して移転登記の請求ができます。
A・Bは物権変動の「当事者」であって、Aは第三者ではないからです。

 時効完成前の第三者

|これも当事者間の問題|
Bの取得時効の完成前に、土地がA→Cに譲渡され移転登記もなされた後に、Bの時効が完成したという場合です。

時効完成前の第三者

この場合にも、Bは登記がなくとも、Cに時効完成を対抗できます。
C・Bは、時効による物権変動の当事者であって、新所有権者Cは第三者ではないからです。両者は「当事者の交代」にすぎないため、Cに登記があってもなくても関係ありません。
時効取得者と時効完成前の第三者とは、当事者間の問題なのです。

 時効完成後の第三者

|対抗要件の問題で、登記で決まる|
時効完成後に第三者がその権利を取得した場合は対抗問題で、登記で決まります。

時効完成後の第三者

Bの「取得時効完成後」に、A→Cの譲渡があった場合には、
① 時効取得者Bと
② 時効完成後の第三者Cとは、
二重譲渡と同様の関係が成立し、その優劣は登記によって決まるため、「先に登記を備えた方が優先」し、完全な所有者となります。

Bは「所有権を時効取得」しても、その登記をしなければ、時効完成後に登記を備えたCに所有権を対抗できません。

3|契約の解除と登記

契約を解除した場合にも「取消し」と類似した問題が生じます。

 解除前の第三者

|解除の遡及効の問題|
契約を「解除する前」に、すでに第三者が権利を取得していた場合は「解除の遡及効の問題」です。

解除と登記

Aが、Bの「債務不履行」を理由にAB間の売買契約を解除しても、解除前にすでに第三者Cが権利を取得していれば、Aは、解除による所有権復帰をCに対抗することはできません。

たとえば、買主Bの代金不払いを理由に契約が解除されると、解除の効果として、契約は「はじめにさかのぼって」消滅しますので(解除の遡及効)、契約は最初から存在しなかったのと同じ状態に戻ります。

そうすると、「解除される前に」権利を取得した第三者Cも、はじめから権利を取得しなかったこととなって、まったく責任がないのに(他人の責任が原因で)権利を失うことになってしまいます。

そこで民法は、この第三者を保護するために、解除をしても「第三者の権利を害することはできない」と定めて解除の遡及効を制限したのです(545条1項但書)

なお判例(最判昭58.7.5)は、この第三者には「対抗要件として登記が必要」としており、これは確定した判例です。
第三者は自らに権利移動があったのであれば、これを公示して権利者としてなすべきことをしておくべき(対抗要件を備えておくべき)であるということなのです。

 解除後の第三者

|対抗要件の問題で、登記で決まる|
契約を「解除した後」に、第三者がその権利を取得した場合は、これはもう177条の対抗要件の問題で、権利取得の優劣は登記の先後で決まります(最判昭35.11.29)

Aの「契約解除後」に、第三者Cが現れた場合には、
① 解除によるB→Aの所有権復帰
② 解除後のB→Cへの所有権移転とは、
二重譲渡と同様に、権利取得の優劣は登記で決定されます。

Aは契約を解除しても、自己への所有権復帰を登記しない間に、解除後にCが「先に登記」を備えてしまえば、Cに所有権を対抗することはできません。

4|相続による物権変動と登記

A・Bが、共有持分各1/2で共同相続したときに、Aが「単独相続」の登記をし、これを第三者Cに譲渡して移転登記もすませたという場合、はたしてBは、自分の1/2の持分をCに対抗するために登記が必要でしょうか。

判例(最判昭38.2.22)は、共同相続により物権を取得したBは、自己の相続分を「登記なくして」第三者に対抗できるとしています。
Aが勝手に単独名義で登記しても、その登記は、Bの持分に関する限り無権利の登記であるため、第三者Cも、Bの持分については、その権利を取得することはできないからです。

一方で、Aからその「共有持分」を譲り受けたCは、その譲渡について登記がなければ、他の共有者Bに対して共有持分の取得を対抗できません(したがって、共有物の分割請求ができません)
Aが、自己の「共有持分」をCに譲渡した場合、共有者Bは、177条の「第三者」にあたるのです。

※ なお遺産分割による持分を対抗するにも、登記を必要とします。

5|物権変動の無効と登記

 公序良俗違反で無効の場合

このような場合は、はじめから物権変動は生じないので、無効の行為を通じて第三者Cが登記を備えても、真の権利者Aは「登記なし」にCに対抗できます。

 虚偽表示による無効の場合

A・B間の売買契約が虚偽表示によって行われた場合、仮装の所有権者Bから譲り受けた善意の第三者Cに対しては、Aは、虚偽表示による無効を対抗できない結果、Cは完全に所有権を取得するため、Cに登記は不要です。

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次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説]
時効完成前の第三者と登記の問題です。
Aの甲地を時効取得したBは、その「時効完成前」にAから甲地を購入し移転登記を備えたCに対しては、登記がなくても、時効による所有権取得を主張することができます。
時効取得者Bと新所有者Cとは、物権変動の当事者であって、そもそも対抗関係にはありません。Bは登記がなくても、あたかも、旧所有者Aに時効取得を主張できるのと同じように、Cに所有権取得を対抗できるのです。
「所有権の取得を主張することができない」との記述は、誤りです。

ポイントまとめ

1 取消しと登記
① 制限行為能力や強迫を理由に取り消した場合
取消前の第三者には登記なくして対抗できる。取消後の第三者とは、登記で決まる。
② 詐欺や錯誤による取消しの場合
取消前の善意・無過失の第三者とは、登記の問題ではない。取消後は、対抗問題で登記により決まる。
2 時効と登記
① 時効完成前の第三者
時効取得者は、登記なくして、時効完成前に権利者となった第三者に対抗できる。第三者の登記の有無は関係ない。
② 時効完成後の第三者とは対抗問題で、登記により決まる。
3 解除と登記
① 解除前の第三者
登記を備えた第三者に対しては、解除による物権復帰を対抗できない。
第三者が登記を備えなくても、解除権者は、物権復帰の登記を必要とする。
② 解除後の第三者
登記で決まる。
4 相続と登記
① 共同相続により物権を取得した者は、自己の相続分を登記なくして第三者に対抗できる。
② 遺産分割による持分を対抗するには、登記を必要とする。
5 無効と登記
① 「公序良俗違反」により無効の場合
無効の行為を通じて第三者が登記を備えたとしても、権利者は登記なくしてその第三者に対抗できる。
② 「虚偽表示」により無効の場合
虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗できない結果、第三者は登記なくして完全に所有権を取得する。

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