|更新日 2020.02.02
|公開日 2017.09.29


れいちゃん02

使用者責任ってむつかしいの?

たくちゃん01

でもないよ。出題は基本的な事項が多いからね。

れいちゃん01

どんな点に注意したらいいの?

たくちゃん02

『宅建民法基礎』に書いてあることは、必ずマスターしておかないとね。


1|使用者責任の意味

使用者責任というのは、事業のために被用者を使用する者は、被用者がその事業の執行について、第三者に加えた損害の賠償責任を負わなければならない、というものです。

民法は次のように定めています。
「ある事業のために他人(被用者)を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」(715条1項)
要するに「他人の不法行為」について責任を負うということです。
これは「他人の行為の結果については責任を負わない」という自己責任の原則の重大な例外です。

どうして他人の不法行為について責任を負わなければならないのでしょうか。
これは、利益を上げる過程で他人に損害を与えた者は、「利益の存するところに損失をも帰せしめる」という見地から、その利益の中から賠償するのが公平であるとするもので、無過失責任の一種である「報償責任主義」を採用したものです。

使用者が、被用者の活動によって利益をあげる関係に着目した考え方なんですね。

 事業執行の範囲

|外形理論|
使用者は、被用者がその事業の執行について、第三者に加えた損害の賠償責任を負わなければなりません。

「事業の執行について」というのは、判例によれば、被用者の職務行為そのものには属さなくても、「行為の外形から判断して広く被用者の職務の範囲内に属する」ものと認められる場合を含み、必ずしも担当業務を適正に執行する場合だけを指すものではありません(最判昭40.11.30)

被用者が、使用者に無断で運転していたときでも「事業の執行について」生じたものと解され、使用者に損害賠償責任が発生することになります。

 被用者の不法行為

使用者責任が成立するためには、その前提として、被用者自身について 709条に基づく不法行為が成立することが要件です。

使用者は、被用者の起こした不法行為について使用者としての責任を負うものですから、被用者の不法行為責任が成立しない場合は、そもそも使用者の使用者責任は成立しないわけです。

 使用者責任の免責

使用者は、被用者の不法行為について、常に責任を負うわけではありません。
使用者について、次のどちらかの事由があるときは免責されます。

 被用者の選任およびその事業の監督について相当の注意をしたとき
 相当の注意をしても損害が生じたこと
これらを証明すれば、責任を負わなくてもいいのです。

 被害者に悪意・重過失があるときは?

外形理論の趣旨は、取引行為の外形に対する相手方の信頼を保護することにありますので、相手方が、
 被用者の権限濫用を知っていた悪意の場合(最判昭42.4.20)や、
 知らなかったことについて重過失がある場合(最判昭42.11.2)には、
使用者は責任を負いません。

 被用者に対する求償権

被用者が、業務遂行中に第三者に不法行為による損害を与えた場合、使用者は、その損害を賠償しなければなりませんが、被用者に対して求償することができます。

使用者が使用者責任を負うとしても、本来の不法行為責任は、加害者である被用者自身にあり、その責任が免除されるわけではないからです。
ただし、損害賠償の全額を求償することはできません。
この点について判例は、損害の公平な分担という見地から、信義側上相当と認められる限度で求償できる、として使用者の求償権を制限しています(最判昭51.7.8)

|被用者は重過失を要するか|
ところで、被用者に求償するためには、被用者は重過失であることを要するでしょうか。

使用者責任は、被用者の不法行為を基礎として成立しているのですから、被用者に不法行為の成立要件としての故意・過失があればよく、その過失は必ずしも重過失である必要はありません。
被用者に故意または重大な過失がなくても、過失(軽過失)があれば、使用者は、被用者に求償することができます。


  すぐやる過去問基礎チェック! 
次の問題は○か×か(問題文クリック)

[正解&解説] 使用者Aに使用者責任が発生する場合は、その前提として、被用者Bについて不法行為責任が成立していなければなりません。
Aの使用者責任が成立しているからといって、被害者に対するBの不法行為責任が免責されるわけではないのです。
「Bには被害者に対する不法行為に基づく損害賠償責任は発生しない」という記述は、誤りです。

ポイントまとめ

 使用者責任が成立するには、被用者が事業の執行について損害を加えた場合でなければならない。
 「事業の執行について」とは、被用者の職務行為そのものには属さないが、その行為の外形から判断して、あたかも被用者の職務の範囲内に属するものと認められる場合を含む。
 使用者は、被用者の選任・監督について相当の注意をしたこと、または、相当の注意をしても損害が生じたことを証明すれば、責任を免れる。
 使用者が被用者に求償するためには、被用者に故意または過失があればよく、重過失である必要はない。
 被用者に対する求償権の範囲は、信義則上相当と認められる限度に制限される。
 被用者の行為が職務権限外であることを、被害者が知っているか、または、重過失によって知らなかったときは、使用者責任を負わない。

宅建民法基礎|テーマ一覧