|更新日 2020.01.25
|公開日 2017.06.07

31年間の出題傾向意外なことに、過去に「1問」として出題されたことは1度もありません。意思表示の総合問題の「1選択肢」として出題されたことが、わずか3肢。
ほとんど出題されないテーマですが、一読の価値はあります。時間のない人は後回しでもかまいませんよ。
この講座で基本をシッカリ理解して、念のため過去問で確認する程度です。
[改 正] 旧法では規定がなかったのですが、「善意の第三者」に対する関係が新設されました。

れいちゃん02

心裡留保って、何て読むの?

たくちゃん01

「しんりりゅうほ」だよ。

れいちゃん02

なんだかむつかしそうね。

たくちゃん01

内容は、意外と簡単だよ。試験にはあまり出ないけれど……。


1|心裡留保って何?

 心裡留保の意味

「心裡留保」という用語自体は条文には存在しません。心裡留保を定めた93条1項には、こう書いてあります。

「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない」
これが心裡留保の意味です。
何のことか、サッパリわかりませんね。
心裡留保は、用語からは難しそうな印象を受けますが、内容はいたって簡単です。

|心裡留保の意味|
心裡留保というのは、表意者自身が「この意思表示は、自分の真意でないと知りながら」する意思表示をいいます。
「自分の真意と違う表示をする」、つまり「真意を心の裡(うち)に留保する」という意味で、要するに、「ウソと知りながら意思表示をする」ことです。

たとえば、売る気もないのに、持っている新品の20万円の富士通エスプリモPCを5万円で売ってやろう、と言ったとします。
「売るよ」という意思表示を受けた相手方が、「これは安い、じゃあ買うよ」と約束をした後になって、「いや実は5万円で売るつもりで言ったんじゃない、あれはうそだから、君が承諾しても契約は成立しないからね」

はたしてこういう主張が許されるのかどうか、これが心裡留保の問題なのです。
富士通PCでも紛糾するのに、不動産取引となると事態は深刻ですよね。

|心裡留保の構造|

心裡留保

※ 宅建試験では「心裡留保」という用語は使われずに、条文の表記にあわせて「その意思表示は真意ではない」とか、「売る意思がないのに売買契約をした」とか、「自分の真意ではないと認識しながら売却の意思表示を行った」というように出題されています。
こうした記述があれば、ズバリ「心裡留保」ですからね。

2|心裡留保による契約は有効か

 原 則

|原則は有効|
表意者が、自分の真意ではないと知って行った心裡留保による意思表示は有効とされます。つまり「表示したとおりの効果」が生じるのです。

心裡留保では「表示」に対応する「意思」が存在しない(意思と表示が一致していない)のですから、意思表示としては無効のはずですね。
民法がこれを有効としたのは、「表示」を信頼して取引した相手方を保護して取引の安全を図ったからなのです。

表意者自身も意思と表示の不一致を知っているわけですから、「表示」どおりの効果を与えても、表意者が害されることはないのです。

つまり、心裡留保による「売ろう」という表示は有効ですから、この表示に対して「買う」と承諾して結んだ売買契約は有効となるわけです。
「冗談だから、あの話はなかったことにしよう」とは言えません。
学者はこれを「嘘つきを保護する必要なし」といいます。まっ、自業自得ということですね。

※ 表示を信頼した「相手方や第三者を保護して取引の安全を図る」という考え方は、民法では非常に重要な理論です。

 例 外

|例外的に無効とされるが|
心裡留保による意思表示や契約は原則有効ですが、例外があります。
「相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、または知ることができたとき」は、その意思表示は無効とされます。

1|相手方が悪意のとき
相手方が、表意者の「真意ではないことを知っているとき」は、無効です。
真意ではないことを知っている相手方を保護する必要はないのです。
したがって「意思なきところに効力を与えない」という意思表示の原則どおりにしたのです。
なお「真意ではない」ことを知っていればよく、「真意を知る」必要はありません。

2|相手方に過失があるとき
たとえ相手方が、表意者の真意ではないことを知らなくても、つまり善意だったとしても、真意ではないことを「知ることができた」ときも、無効とされます。

取引上、一般人がする程度の注意をすれば「知ることができた」にもかかわらず、それを怠ったために知ることができなかった不注意=過失がある場合です。
不注意な相手方は保護する必要がないというわけです。

結局、心裡留保は「相手方が善意・無過失のときに限り」有効となります。

3|善意の第三者との関係

旧法は「第三者」に関する規定がありませんでしたが、改正法で新設されました。
これは判例・学説の従来からの主張が明文化されたもので、内容的に目新しいものではありません。

相手方Bが悪意または善意・有過失であれば心裡留保は無効ですが、善意の第三者が登場した場合、表意者Aはその無効を善意の第三者に対抗できるでしょうか。

心裡留保

この場合「意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することはできない」とされます(93条2項)
Aは、AB間の契約が心裡留保により無効であることを善意の第三者に対抗することはできないわけです。善意の第三者を保護して取引の安全を図るためですね。

第三者は「善意」であればよく、「無過失」であることを要しません。
ここはシッカリおさえておきましょう。

|善意・悪意|
非常に重要な用語です。日常用語でいう善良な心とか道徳心のことではありません。
善意は「事情を知らなかったこと」、悪意は「事情を知っていたこと」をいいます。

|過失|
そして「知らなかったけれども、それは不注意だった。もう少し注意すれば知ることができた」という場合を「善意だが過失があった=善意・有過失」といいます。
また「知らなかったけれども、不注意はなかった。相当の注意をしても知ることはできなかった」という場合を「善意だが過失はなかった=善意・無過失」といいます。

民法は、こうした「主観的な事情」に応じて、異なった扱いをしますので要注意。
善意または善意・無過失は保護して、悪意または有過失は保護しないというのが、民法の基本的な態度です。

ポイントまとめ

|当事者間|
 原則 心裡留保による意思表示は有効である。
 例外 相手方が悪意のとき、または有過失のときは、無効
|第三者関係|
心裡留保が無効であっても、その無効は善意の第三者に対抗できない

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